「初等整数論/多項式」の版間の差分

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<math>a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_1x + a_0</math>
 
のことである。<math>x</math> のことを「変数」、<math>a_k</math> を「係数」という。一般に係数は範囲が明確に示されることが多い。ここでは特に断りが無いとき係数は'''有理数'''であるとする。係数がどの範囲の数なのかに従って、「整数係数多項式」、「有理係数多項式」などという。また <math>a_n \neq 0</math> のとき、この方程式を「<math>n</math> 次多項式」という
係数が属すべき範囲が異なると、多項式の性質も変化する。例えば <math>x^3-2</math> は有理数上ではこれ以上分解することができないが、実数上では <math>(x-\sqrt[3]{2})(x^2+\sqrt[3]{2}x+\sqrt[3]{4})</math> と分解され、複素数上では <math>(x-\sqrt[3]{2})(x-\sqrt[3]{2}\omega)(x-\sqrt[3]{2}\omega^2), \omega=(-1+\sqrt{-3})/2</math> と分解される。
そこで、係数が属すべき範囲を一つ固定して、その上で議論する。そして基本的に係数が属すべき範囲は、体(その範囲内で0以外の数で割り算が可能な集合)とする。有理数や実数、複素数はこれにあたるが、整数全体の集合は、 1/2, 1/3, 3/2 のようなものを含まないので、この項での議論には適さない場合がある。
係数がどの範囲の数なのかに従って、「整数係数多項式」、「有理係数多項式」などという。また <math>a_n \neq 0</math> のとき、この方程式を「<math>n</math> 次多項式」という。
 
さて、式は次の2つに分けることができる。
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特に <math>P(a) = 0</math> のとき、<math>P(x) = (x - a)Q(x)</math> と書ける。つまり、'''<math>P(x)</math> は <math>(x-a)</math> を因数に持つ'''。この定理は剰余の定理の特別な場合だが、重要であるため「因数定理」という名前が付いている。
 
<math>P(a) = 0</math> となる <math>a</math> のことを、多項式 <math>P</math> の零点という。このとき次の定理が簡単に導ける
 
== 係数比較 ==
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<math>\Leftarrow</math> は自明だろう。<math>\Rightarrow</math> を <math>n</math> に関する数学的帰納法で証明する。
 
<math>A(x) = a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_1x + a_0</math> とすまず、0次式の場合は自明である。1次式とき 場合は、<math>A(x) = 0</math>ax は恒等式だから異なる+ <math>n+1b</math> 個の値 <math>x_0,\alpha x_1,\neq \cdots , x_nbeta</math> の2つを代入しても <math>A(x_0) = \cdots = A(x_n) = 0.</math>
 
<math>a\alpha + b = 0, \ a\beta + b = 0</math> したがって <math>a(\alpha - \beta) = 0.</math>
 
ところで <math>\alpha - \beta \neq 0</math> より <math>a = 0</math> よって <math>b = 0.</math>
 
次に、<math>n-1</math> 次式でこの定理が正しいと仮定し、 <math>n</math> 次式でも正しいことを証明する。<math>A(x) = a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_1x + a_0</math> とする。このとき <math>A(x) = 0</math> は恒等式だから異なる <math>n+1</math> 個の値 <math>x_0, x_1, \cdots , x_n</math> を代入しても <math>A(x_0) = \cdots = A(x_n) = 0.</math>
 
因数定理より、<math>A(x) = (x - x_0)Q(x)</math> と書ける。このとき、<math>Q(x)</math> の最高次の係数は <math>a_n</math> であることは簡単に分かる。また、<math>A(x_1) = (x_1 - x_0)Q(x_1) = 0</math> なのだが、<math>x_1 - x_0 \neq 0</math> より <math>Q(x_1) = 0.</math> 再び因数定理より、
 
<math>Q(x) = (x - x_1)Q'Q_1(x)</math> と書ける。このときの <math>Q'Q_1</math> の最高次の係数も <math>a_n</math> であることが簡単に分かる。これを代入して <math>A(x) = (x-x_0)(x-x_1)Q'Q_1(x).</math> これを繰り返せば
 
<math>A(x) = a_n(x-x_0)(x-x_1) \cdots (x-x_{n-1}).</math>
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<math>A(x_n) = a_n(x_n-x_0)(x_n-x_1) \cdots (x_n-x_{n-1}) = 0</math> だが、<math>x_n-x_0 \neq 0, x_n-x_1 \neq 0 \cdots x_n - x_{n-1} \neq 0</math> より
 
<math>a_n = 0</math> となる。したがって <math>A(x) = a_{n-1}x^{n-1} + a_{n-2}x^{n-2} + \cdots + a_1x + a_0</math> となる。つまり、<math>n-1</math> 次式でこの定理が正しければ <math>n</math> 次式でも正しい。数学的帰納法である。
 
さて、0次式の場合は自明である。1次式の場合は、<math>A(x) = ax + b</math> に <math>\alpha \neq \beta</math> の2つを代入して
 
<math>a\alpha + b = 0, \ a\beta + b = 0</math> したがって <math>a(\alpha - \beta) = 0.</math>
 
ところで <math>\alpha - \beta \neq 0</math> より <math>a = 0</math> よって <math>b = 0.</math>
 
以上より数学的帰納法によって証明される。
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====== 定理 A ======
<math>P(x)</math> が <math>x=\alpha</math> を重解に持つための必要十分条件は <math>P(\alpha)=P'(\alpha)=0</math> が成り立つことであるとわかる。
 
 
また、より一般に、一般に<math>P(X)</math> が <math>Q(X)</math> で割り切れるとき <math>P(X)=Q(X)P_1(X)</math> とおくと
:<math>P'(X)=Q(X)P_1'(X)+Q'(X)P_1(X)</math>
であるから <math>Q(X) | P_1(X)</math> ならば <math>Q(X) | P'(X)</math> である。よって次のことがわかる。
 
====== 定理 B ======
<math>P(x)</math> が <math>Q(x)^2</math> を因数に持つならば <math>P(X), P'(X)</math> が共に <math>Q(X)</math> を因数に持つ。
 
 
ここでは逆は必ずしも成り立たない。たとえば <math>X^4, (X^4)'=4X^3</math> は共に <math>X^3</math> で割り切れるが <math>X^4</math> は <math>X^6</math> で割り切れないのは明らかである。
 
 
== 公約多項式・公倍多項式 ==
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なお、定理 4 の帰結として次の定理が成り立つ。
 
====== 定理 BC ======
<math>P(x)</math> が平方因数 <math>Q(x)^2</math> を持つならば <math>Q(x)</math> は <math>\gcd(P, P')</math> の因数である。特に方程式 <math>P(x)=0</math> が重解 <math>x=\alpha</math> を持つならば、 <math>x-\alpha</math> は <math>\gcd(P, P')</math> の因数である。
 
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