「高等学校化学I/化学結合」の版間の差分

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イオン化エネルギー、電子親和力
表を追加。イオンの名称とイオン式の表。
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価電子が1〜3個など、価電子の少ない原子は、電子を失って陽イオンになりやすい。逆に、価電子が6〜7個など、価電子の多い原子は、電子を受け取って陰イオンになりやすい。
 
イオンができる際に、放出したり受け取ったりと、やりとりした電子の数を、そのイオンの'''価数'''(かすう、valencecharge number)という。価数が1のときそのイオンは'''1価'''であるといい、同様に価数が2のときそのイオンは2価であり、価数が3なら3価、・・・と数える。電子の電荷は-eであるが、ここでは、電子一つを基準にしていることに注意。
 
原子記号では、価数は右上に書く。
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<br />
このように、元素記号と、その右上に価数と正負の符号で表記する方法を、'''イオン式'''(ion fomula)という。
イオンの化学式をあらわすには、イオン式を用いる。
 
 
また、塩素Clの価数のように、1価の場合は、数字の1を省略する。
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{{-}}
 
{| class="wikitable"
|+ イオンの名称とイオン式
! 価数 !! 陽イオン !! イオン式 !! 価数 !! 陰イオン !! イオン式
|-
| rowspan="5"| 1価 || 水素イオン || <math>\mathrm{H}^+</math> || rowspan="5"| 1価 || 塩化物イオン || <math>\mathrm{Cl}^-</math>
|-
| ナトリウムイオン || <math>\mathrm{Na}^+</math> || 水酸化物イオン || <math>\mathrm{OH}^-</math>
|-
| カリウムイオン || <math>\mathrm{K}^+</math> || 硝酸イオン || <math>\mathrm{NO_3}^-</math>
|-
| 銀イオン || <math>\mathrm{Ag}^+</math> || 炭酸水素イオン || <math>\mathrm{HCO_3}^-</math>
|-
| アンモニウムイオン || <math>\mathrm{NH_4}^+</math> || ||
|-
 
| rowspan="5"| 2価 || マグネシウムイオン || <math>\mathrm{Mg}^{2+}</math> || rowspan="5"| 2価 || 酸化物イオン || <math>\mathrm{O}^{2-}</math>
=== イオン結合 ===
|-
==== イオン結合の仕組み ====
| カルシウムイオン || <math>\mathrm{Ca}^{2+}</math> || 硫化物イオン || <math>\mathrm{S}^{2-}</math>
[[File:NaCl-Ionengitter.png|thumb|right|150px|塩化ナトリウム型構造]]
|-
 
| 亜鉛イオン || <math>\mathrm{Zn}^{2+}</math> || 炭酸イオン || <math>\mathrm{CO_3}^{2-}</math>
たとえば、塩化ナトリウムNaClでは、ナトリウム原子からは価電子の1個を出して陽イオンのナトリウムイオンNa<sup>+</sup>になっている。塩素原子Clは、ナトリウムから不出された価電子を受取り、陰イオンの塩素イオンCl<sup>-</sup>になっている。
|-
 
:| 鉄イオン || <math> \mathrm{Na} \rightarrow \mathrm{NaFe}^{2+}</math> || +硫化物イオン || <math>\mathrm{eSO_4}^{2- }</math>
|-
| 銅イオン || <math>\mathrm{Cu}^{2+}</math> || ||
|-
 
| rowspan="3"| 3価 || アルミニウムイオン || <math>\mathrm{Al}^{3+}</math> || rowspan="3"| 3価 || リン酸イオン || <math>\mathrm{PO_4}^{3-}</math>
:<math> \mathrm{Cl + e^- \rightarrow Cl^- }</math>
|-
| 鉄イオン || <math>\mathrm{Fe}^{3+}</math>
|-
| クロムイオン || <math>\mathrm{Cr}^{3+}</math>
|-
 
|}
このナトリウムイオンと塩素イオンとの結合によって、塩化ナトリウムになっている。
 
イオン結合しているNaClは、その分子1個では、中性であり、分子中のNaの部分もほぼ中性であり、Clの部分もほぼ中性である。だが、外部から電気的な力が加わると、Naに近い側は正電荷になり、Clに近い側は負電荷になる。
だから、複数のNaCl分子が近くにあつまると、NaCl原子中の正電荷に傾いているNaの近くには、別のNaCl原子の負電荷に傾いてるClが近づく。そうすると、多数のNaClが集まった物質では、Naの隣にはClが隣接し、そのClの隣には、別の分子のNaが隣接し、さらにそのNaの隣にはまた別の分子のClが隣接するという規則的な配列が繰り返される。
このような理由から、イオン結合をしている分子は、おなじ分子式の物質が集まり、結晶になろうとする。そのイオン結合をしている分子からなる結晶を'''イオン結晶'''(ionic crystal)という。イオン結晶では、陽イオン(positive ion)と陰イオン(negative ion)が規則的に配列をしている。
 
結晶の1個ずつの分子どうしは、べつにイオン結合をしているわけでは無いので、イオン結晶はもろい。棒などでつつくなどして外力を加えると、すぐに割れてしまったり壊れたりして、粉末状になってしまうことが多い。外力で割れやすいのは、原子配置が一個でもずれると、同種の電荷のイオンどうしが接近してしまい反発してしまうからである。
 
;イオン結晶の性質
イオン結晶(ionic crystal)は、一部の例外を除けば、イオン結晶は水に溶けやすい。イオン結晶を溶かした水は電気を通す。
水に溶かしていない、固体状の結晶じたいは電気を通さない。ただしイオン結晶を高温にして液体にすると、液体の場合には電気を通す。
 
融点に関しては、イオン結合をしている物質の融点は高い。
 
 
一般の物質は、いくつかの原子が結びついて分子や結晶を作ってたり、イオンが結びついて結晶を作っている。物質中での原子と原子の結びつきを化学結合という。またイオンとイオンの結びつきも化学結合(chemical bond)と見なす。
 
化学結合の結合の力は、粒子間の電子の授受による。その電子の授受の仕方により、結合の種類が以下のように分類される。
 
* イオン結合:
[[Image:NaCl_ionic.png|thumb|イオン結合.]]
 
例えば食塩NaClなどが、単体のNaとClからNaClへと結合する際は、原子どうしが近づくと原子と原子の間で、電子が完全にどちらか一方に移動することで、陽イオンと陰イオンが生じる。その陽イオンと陰イオンとが結びつく結合を'''イオン結合'''(ionic bond)という。原子の種類ごとに、電子を引き寄せて束縛しようとする力は異なり、これを相対的に数値で表示したものを'''電気陰性度'''(electronegativity)という。、一般に、イオン結合は、比較的に電気陰性度の大きい原子と小さい原子の結合で生じる。電気陰性度の大きい物ほど、電子を吸引する力と電子を束縛する力が大きい。
 
=== イオンの生成とエネルギー ===
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F、Cl、Br などのハロゲン原子は電子親和力が非常に大きく、1価の陰イオンになりやすい。
 
=== イオン結合 ===
==== イオン結合とイオン結晶 ====
[[File:NaCl-Ionengitter.png|thumb|right|150px|塩化ナトリウム型構造]]
 
塩化ナトリウムNaClでは、ナトリウム原子からは価電子の1個を出して陽イオンのナトリウムイオンNa<sup>+</sup>になっている。塩素原子Clは、ナトリウムから不出された価電子を受取り、陰イオンの塩素イオンCl<sup>-</sup>になっている。
 
そして、Na<sup>+</sup>とCl<sup>-</sup>が'''静電気的な引力'''('''クーロン力''')で結合している。
 
NaClの結晶の中では、Na原子の数とCl原子の数は同数であり、つまり1:1の割り合いである。
 
 
[[Image:NaCl_ionic.png|thumb|イオン結合]]
 
このように、陽イオンと陰イオンとが静電気的によって結びつく結合のことを'''イオン結合'''(ionic bond)という。
 
一般に、陽性の強い金属元素と(たとえばNaなど)、陰性の強い非金属元素(たとえばClなど)との間に、イオン結合が生じやすい。
 
一般に、イオン結合の強さは、両方のイオンの価数の積が大きいほど、結合も強い。(「価数」とは、たとえばCa<sup>2+</sup>ならば「2+」の部分が価数である。)
 
また,塩化ナトリウムNaClのように、イオン結合でできている結晶のことを'''イオン結晶'''(ionic crystal)という。
 
* 参考
NaCl結晶中の NaClの1単位と、同じ結晶中のべつの NaCl 1単位とは、けっしてイオン結合はしてない。棒などでつつくなどして結晶に外力を加えると、すぐに割れてしまったり壊れたりして、粉末状になってしまうことが多い。外力で割れやすいのは、原子配置が一個でもずれると、同種の電荷のイオンどうしが接近してしまい反発してしまうからである。
 
また、一般に、イオン結晶は水に溶けやすい。イオン結晶を溶かした水は電気を通す。
水に溶かしていない、固体状の結晶じたいは電気を通さない。ただしイオン結晶を高温にして液体にすると、液体の場合には電気を通す。
 
融点に関しては、イオン結合をしている物質の融点は高い。
 
 
==== 組成式 ====
イオンからなる物質を化学式であらわすには、陽イオンと陰イオンの数の比率をもっとも簡単な整数比で表した'''組成式'''(そせいしき、compositional formula)をもちいる。
 
たとえば「MgCl<sub>2</sub>」や「NaCl」のように、あらわす。
 
たとえば塩化マグネシウムの結晶は、Mg<sup>2+</sup>とCl<sup>ー</sup>が 1:2 の比率で存在しているので、組成式はMgCl<sub>2</sub> で表される。
 
また、「NaCl」のように、個数比が1倍の場合は「1」を省略する。
 
一般に、イオン結晶は電気的に中性であるので、次の関係式がなりたつ。
 
: '''陽イオンの価数 × 陽イオンの数 = 陰イオンの数 × 陰イオンの数'''
 
なぜなら、電気的に中性なら、正電荷の総量と負電荷の総量とは等しいので、上式が成りたつのである。