「量子力学」の版間の差分

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→‎双極子のもつエネルギーと力: 参考文献について追記。
量子化学/スピン で行った修正内容をフィードバック。また、図を追加。不均一な磁場での電子スピンの受ける磁力 についての模式図。
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しかし、最外殻よりも内側の電子核なら自由電子にはならないので、この内側の電子のスピンが磁力の原因だと考えても困らないだろう。内側の電子が埋まり終わって閉殻構造になっているとスピンは打ち消しあってしまうので、つまり強磁性体では内側の電子核が埋まり終わる前に外側の電子殻の電子が埋まっている、と考えるべきである。つまり磁性体の磁化とは、短い磁石がいくつもつながって長い磁石になることにより、磁石の吸引力が増えることと大して変わらない(と思う)。
=== 双極子のもつエネルギーと力 ===
 
=== 双極子のもつエネルギーと力 ===
* 双極子の受ける力
[[File:Stern-Gerlach experiment svg.svg|thumb|500px|シュテルン=ゲルラッハの実験]]
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実際に、このような実験をすると、電子は図のように、上向きか下向きかのどちらか片方にだけ移動する。ななめ方向には移動しない。
 
量子力学の入門書では、この事から、電子の「スピン」の状態が、外部磁場に対して「上向き」か「下向き」かの2通りしか取りようのない離散的な事が、説明されるのだが、では、なぜ、あの実験事実で、このような離散性が証明されるのかを、下記にきちんと説明しよう。
 
まず、ポテンシャルU をつくる力F は、
:F=-∂U/∂x
である。
 
[[File:Magnetic-force-of-electron-spin-at-nonuniform-magnetic-field jp.svg|thumb|500px|不均一な磁場での電子スピンの受ける磁力 についての模式図。]]
よって、
まず、かりに、磁場に対して、電子の磁石としての角度が図のように角度θをなすとしたら、電子下部に掛かる力は、
:F= -∂(-m・H)/∂x = -∂(-mHcosθ)/∂x
:<math>F=-m H|_{y=y_0} \cos \theta</math>
となる。
 
いっぽう、電子上部に掛かる力は、
:<math>F=m H|_{y=y_0+ \Delta y} \cos \theta</math>
としよう。
 
電子の上部と下部とで差し引き、電子には、
 
:<math>F=m(H|_{y=y_0+\Delta y} - m H|_{y=y_0} ) \cos \theta</math>
 
の力が掛かる。
 
もし、通常の棒磁石だと、磁場はほぼ均一であるために <math>m(H|_{y=y_0+\Delta y} - H|_{y=y_0} )=0</math>となるので、通常の棒磁石では、シュテルンゲルラッハのような実験結果が起きないわけである。
 
しかし、今回の実験で考えてるのは、図のように急激に磁場の変化する構造の磁石であり、そのため<math>(H|_{y=y_0+h} - m H|_{y=y_0} )</math>がけっして0ではない。
 
よって、m か H か θ の変化率をおおきくすれば、電子は磁石によって、おおきな力を受ける。mは電子固有の値なので、変えようがないので、つまり定数だと思う。
 
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そして、実験事実は明らかに、θが離散化により2通りの状態を取ること示している。θ=0または θ=π を取ることを、実験結果は示している。
 
このようにして、電気磁気学の公式と、シュテルン=ゲルラッハの実験結果にもとづき、スピンの離散化を導出できる。
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やや飛躍があるが、上述のような現象の起きる根本原理として、原子や電子などといった量子スケール的な現象では、エネルギーが量子化されると考えれば、ツジツマが合う。
 
 
磁気双極子モーメントmが磁場Hの中で、双極子のもつエネルギーは、
中学理科でも習うように、力Fを距離yをかけ算すれば、仕事である。
なので、さきほどの式の力Fも、積分すれば、仕事 W になる。
 
:<math>W=F \times y = m H|_{y=y_0} \Delta y \cos \theta</math>
 
この力Fが、実験事実により、上向きと下向きのどちらかに離散化されるのだから、ならば仕事も必然的に離散化されるはずであり、ならばエネルギーも必然的に離散化されるはずである。
 
計算により、確認してみよう。
まず力学の理論により一般にポテンシャルU をつくる力F は、y方向の力をFyとすれば
:<math>F_y = -\frac{\partial U}{\partial y} </math>
 
である。
 
シュテルンゲルラッハの実験結果により、ほぼy方向にしか力が作用してないので、よって、 F=Fy なので、よって、
 
:<math>F=m(H|_{y=y_0+\Delta y} - m H|_{y=y_0} ) \cos \theta = -\frac{\partial U}{\partial y} </math>
 
上式をyで積分すれば、
 
:<math>W=F \Delta y=m H|_{y=y_0} \cos \theta \Delta y = -\frac{\partial U}{\partial y} \Delta y = -\Delta U </math>
 
われわれが興味あるのは、Uが離散化するかどうかなので、上式をUについて、まとめれば、
よって、
:<math>\Delta U = - m H|_{y=y_0} \cos \theta \Delta y </math>
である。
 
cos θが±1に離散化するので、必然的に、ΔUも離散化する。
 
 
なお、磁気双極子モーメントmが磁場Hの中で、双極子のもつエネルギーは、
:U = -m・H = -mHcosθ
:-1≦ cosθ ≦+1 なので、
:Umax = mH 、Umin = -mH
:よって、Umax - Umin = mH-(-mH)= 2mH = 2qd2q<sub>m</sub>d・H
であるので、双極子がめることのできるエネルギーは2mHである。
 
さて、エネルギー U が離散化されるためには、mかHかθのどれかが、離散化されていなければならない。スピンでは、θが±1に離散化されることにより(「上向き」、「下向き」などのように)、エネルギーUが離散化されたものと思える。
 
 
このシュテルン=ゲルラッハの実験の実験結果からも、スピンが2通りの状態量(「上向き」と「下向き」をもつ事が分かる。)しかも、「スピン」の存在さえ認めてしまえば、それらの古典物理の「モーメント」や「ポテンシャル」といった理論からも、上述のように力学的な計算が可能である。
 
さて、エネルギー U が離散化されるためには、mかHかθのどれかが、離散化されていなければならない。スピンでは、θが離散化されることにより(「上向き」、「下向き」などのように)、エネルギーUが離散化されたものと思える。
 
== 量子論の基礎法則:スピンを例にとって ==