「高等学校化学I/化学結合」の版間の差分

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コラム: 「四重結合」は?| 実は、タングステンやクロム、レニウムでは、四重結合や五重結合、六重結合があることが、報告されている。
電気陰性度について、マリケンの電気陰性度について、コラムで紹介。
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Li、Na、K などのアルカリ金属は、イオン化エネルギーが小さいからこそ陽イオンになりやすいのである。
 
いっぽう、陰性の強い元素は、イオン化エネルギーが大きい。
 
また、He、Ne、Ar などの希ガス元素はイオン化エネルギーが非常に大きいので、安定しているのである。
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[[File:Electronegativity illust for beginner jp.svg|thumb|350px|元素の電気陰性度]]
 
元素の陰性を、数値的に決定することができる。元素の陰性の決定方法には、いくつかの方式が提案されているが、そのうち、有名なものを下記に解説する。(※ 入試には出ないので、高校生は暗記しなくてよい。)
 
 
* ポーリングの電気陰性度
ある原子Aの結合からなる二原子分子 AA があったとする。
 
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このようにして、'''電気陰性度'''(でんきいんせいど、electronegativity)の相対値が算出された。電気陰性度はもともと、上記のように2種類の原子からなる二原子分子の分極を説明するために導入された量である。
 
 
現在では、電気陰性度は、共有電子対を引きつける力の強さに よく比例する事が 分かっている。(検定教科書では、こちらを定義にしている。つまり、「元素において、共有結合をしている電子対をひきつける力の大きさを、相対的に表したものを電気陰性度という。」のような定義をしている。)
 
また、こうして電気陰性度を計算した結果、希ガスを除いて周期表の右上にある原子ほど、電気陰性度が高いことが分かった。(検定教科書にも書いてある。)フッ素 F が最大の電気陰性度である。
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また、共有結合は、電気陰性度がある程度高くて、さらに電気陰性度が同じくらいの原子との結合で、共有結合が生じるのが一般的である。
 
 
:※ 検定教科書には、じつは「ポーリングの電気陰性度」という用語は登場する。検定教科書にて、電気陰性度の数値のグラフを掲載する際に、「値は、ポーリングの電気陰性度を示した」などのように紹介される場合がある。しかし、上記の計算法までは紹介されてないし、一般的な参考書でも、計算法までは深入りしてないので、計算法までは暗記の必要は無いだろう。
 
{{コラム|(※ 範囲外:) 「マリケンの電気陰性度」|
「ポーリングの陰性度」の発見後にマリケンなどによって、次の式が発見された。
 
マ原子番号順にすべての元素のイオン化エネルギーと電子親和力を並べたグラフで、イオン化エネルギーと電子親和力と「ポーリングの電気陰性度」を同じグラフにあらわしてみると、
原子 A のイオン化エネルギーを ''I''<sub>A</sub>とし、電子親和力を ''E''<sub>A</sub>とした際に、ポーリングの電気陰性度が
:<math> {1 \over 2} (I_{\rm A} + E_{\rm A}) </math>
と増減が似ていることが、「ポーリングの陰性度」の発見後にマリケンなどによって発見された。(※ 「電子親和力」の単位は(「力」という名に反して)エネルギーが単位である。なので、電子親和力とイオン化エネルギーとは足し算できる。)
 
このことを参考に、「いっそ、電気陰性度を、イオン化エネルギーと電子親和力を足した値(を2で割った値)として、あらたに定義しよう」というような提案が、マリケンなどによってなされた。
 
そして、マリケンはさらに、上述の式にもとづいて、ポーリングとは異なる、あらたな電気陰性度の式を提案した。
 
つまり、マリケンなどは下記の式によって、新しく電気陰性度を提案した。原子 A のイオン化エネルギーを ''I''<sub>A</sub>とし、電子親和力を ''E''<sub>A</sub>とした際に、
:<math> \chi_{\rm M}^{\rm A} = {1 \over 2} (I_{\rm A} + E_{\rm A}) </math>
 
で求まる <math> \chi_{\rm M}^{\rm A} </math>が、マリケンによる新しい電気陰性度の定義である。
 
このような式による定義を「マリケンの電気陰性度」といい、ポーリングの電気陰性度とは区別する。
 
ポーリングの電気陰性度とマリケンの電気陰性度は、増減の傾向がよく似た値になる。
 
ポーリングは1932年に電気陰性度の測定法などを発表しており、マリケンは1934年に上述の計算などを発表している。
 
 
;備考 (教育業界での傾向)
:* 上述のように「電気陰性度」については、いくつかの定義があり、けっしてひとつの定義には統一されていない。なので、大学入試では、まず出題されないだろう。もし出題されたとしても、本コラム内の式については暗記の必要の無い問題が出るだろう。
:* なお、予備校の駿台文庫が出版している参考書で、マリケンの電気陰性度などの式を紹介している。
:* 「マリケン」という用語そのものは、啓林館など いくつかの検定教科書でも用語だけは紹介されているが、計算法には深入りしていない。
:* 「マリカン」か「マリケン」か、文献によって、 表記のゆれ がある。啓林館の検定教科書では「マリケン」で紹介されているので、本wikibooksでは、「マリケン」表記にした。
}}
 
 
:※ このように「電気陰性度」には、いくつかの定義がある。上述のコラムで紹介した以外にも、さらに別の定義すら提案されている。
:なので、電気陰性度の具体的な計算公式については暗記の必要は無い。
::高校生の段階では、「フッ素は陰性が高い」とか「ナトリウムは陰性が低い」のように、個別の原子についての具体的な陰性の高低の感覚が分かれば、十分である。