「高等学校生物/生物I/環境と動物の反応」の版間の差分

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(※ 範囲外: )妊娠歴のある女性には、免疫抑制剤が効かなくなる場合がある。高校でこういう専門知識まで教えるわけにはいかないので、現在の高校理科ではあまり免疫抑制剤について教えてないことにも、それなりの理由がある。
MHCについて、一部教科書の発展的記述を追加。
207 行
ここでいう「可変部」とは、免疫グロブリンのY形の2股の先端部分のことである。
 
実は、先端以外の、H鎖の「定常部」も、ヘルパーT細胞やサイトカインなどの働きによって形状・構造の変化することが遅くとも1970年代には分かっている。
 
定説では(一般の動物では?)、免疫グロブリンには5種類あり、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスがある。(免疫グロブリンの記法は、 Igなんとか のような記号で表すのが一般的である。)
281 行
:(※ 調査中:) 細胞に入り込んだタンパク質は、なるべく分解され、その分解されたタンパク質が細胞表面に出され、T細胞は、その細胞表面に出された異物の分解物を「抗原」として認識している。これが、下記に述べるMHCの実態である。(タンパク質以外の異物についてはどうか、専門書を見ても、書かれていない。また、異物として、最近やウイルスを構成するタンパク質を想定している文献ばかりだが、「では、栄養素などを構成するタンパク質やアミノ酸も、細胞は異物として認識するために細胞表面に抗原として提示するのかどうか?」については、残念ながら調査した文献の範囲内では書かれていなかった。)
 
 
ヘルパーT細胞によって認識される抗原の細胞表面のタンパク質の種類を'''MHC'''('''主要組織適合性複合体'''、Major Histocompatibility Complex)という。
細胞膜の表面には、'''MHC'''('''主要組織適合性複合体'''、Major Histocompatibility Complex)というタンパク質がある。臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。
 
:※ 説明の簡単化のため、ヒトのMHCを想定して解説する。
 
MHCは個人ごとに異なるので、普通、他人とは一致しない。
 
T細胞は、相手方細胞の表面にあるMHCを認識している。つまりMHCの違いによって、ヘルパーT細胞が自己と非自己を認識する。そしてヘルパーT細胞が非自己の物質が侵入したことを感知して、キラーT細胞を活性化させる。
 
臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。
 
なお、ヒトでは、ヒトの白血球の細胞表面にある'''ヒト白血球型抗原'''('''HLA'''、Human Leukocyte Antigen)がMHCとして機能する。血縁関係の無い他人どうしで、HLAが一致する確率は、ほとんど無い。同じ親から生まれた兄弟間で、HLAの一致は4分の1の確率である。移植手術の際、これらの免疫を抑制する必要があり、免疫抑制のために、あるカビから精製した「シクロスポリン」(ciclosporin)という名前の薬剤が、よく免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)として使われる。(※ シクロスポリンはいちおう、高校の教科書で紹介されている。)<ref>浅島誠『生物基礎』東京書籍、平成26年2月発行、P.121</ref> <ref>吉田邦久『チャート式シリーズ要点と演習 新生物IB・II』東京書籍、P.121</ref>
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:※ 検定教科箇所では、MHCの和訳を「主要組織適合性複合体」というかわりに「主要組織適合抗原」などという場合もある。大学の教科書でも、教科書出版社によって、どちらの表現を用いているかが異なっており、統一されていない。たとえば東京化学同人『免疫学の基礎』では「主要組織適合抗原系」という表現を用いている。羊土社『理系総合のための生命科学』では、「主要組織適合性複合体」を用いている。
 
:※ 余談だが、ヒトのHLA遺伝子の場所は解明されており、第6染色体に6対の領域(つまり12か所の領域)があることが分かっている。高校教科書でも図表などで紹介されている(※ 数年出版や第一学習者の教科書など)。(※ 入試にはまず出ないだろうから、暗記しないくて良いだろう。)
 
:いきなり「HLA遺伝子」と言う用語を使ったが、もちろん意味は、HLAを発現する遺伝子のことである。HLA遺伝子の対立遺伝子の数はけっこう多く、そのため、血縁者ではない他人どうしでは、まず一致しないのが通常である(※ 参考文献: 数研出版の教科書)、とも考えられる。いっぽう、一卵性双生児では、HLAは一致する(※ 啓林館の教科書)、と考えられている。
 
 
:※ 余談: (※ 覚えなくていい。一部の教科書にある発展的な記述。)
:いきなり「HLA遺伝子」と言う用語を使ったが、もちろん意味は、HLAを発現する遺伝子のことである。
::MHCが糖タンパク質であることが分かっている(※ 数研出版の教科書で紹介)。MHCには主に2種類あり、クラスIとクラスIIに分類される(※ 数研出版の教科書で紹介)。
::MHCの先端には、体内に侵入してきた病原体など有機の異物のタンパク質を分解した断片が、くっつけられ、提示される仕組みである(※ 第一学習社の教科書で紹介)。これによって、MHCからT細胞に情報を送る仕組みである。そして、有機の異物が侵入してない場合にも、MHCの先端には自己のタンパク質を分解した断片がくっつけられており、提示されている。自己タンパク質断片の提示される場合では、T細胞は提示された細胞を自己と認識するので、その場合にはT細胞は活性化されないという仕組みである。