「高等学校数学I/図形と計量」の版間の差分

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三角形の面積公式、ヘロンの公式を追加。
指導要領に合わせて見出しを変更しました。
4 行
 
== 図形と計量 ==
ある三角形を持って来たとき、その三角形の3つの角を定めたとき、
その三角形は完全には定まらない。このとき、
その三角形の角の大きさを変えること無く、辺の長さの
縮尺だけを変えることができるからである。
しかし、そうであっても、角の大きさは三角形の情報の
一種であり、なんらかの標準的な取り扱いをできるように
することが望ましい。
 
===三角比===
ここでは、特に直角三角形に注目して、角の大きさを
ここでは、[[w:三角比]]とそれを用いた定理を扱う。
各々の辺の長さの比によって特徴づける方法を学ぶ。
ある三角形についてその三角形の3つの角を定めたとき、その三角形は完全には定まらない。このとき、その三角形の角の大きさを変えること無く、辺の長さの縮尺だけを変えることができるからである。しかし、そうであっても、角の大きさは三角形の情報の一種であり、なんらかの標準的な取り扱いをできるようにすることが望ましい。
辺の長さの比は、対応する角によって一意に定まる。
このような直角三角形の辺の長さの比を、三角比と呼ぶ。
 
 
ここでは、特に直角三角形に注目して、角の大きさを各々の辺の長さの比によって特徴づける方法を学ぶ。直角三角形では、辺の長さの比が対応する角によって一意に定まる。このような直角三角形の辺の長さの比を、三角比と呼ぶ。
=== 三角比 ===
 
====正弦、余弦、正接====
ある直角三角形を取りその角のうちの、直角でない角の1つの大きさを、
<math>r</math> として、相対する辺の長さを<math>a</math>とする。
更に、最も長い辺、つまり直角三角形の斜辺を
の長さを<math>c</math>とし、それ以外の辺の長さを<math>b</math>とよぶ。
 
ある直角三角形を取りその角のうちの、直角でない角の1つの大きさを、<math>r</math> として、相対する辺の長さを<math>a</math>とする。更に、最も長い辺、つまり直角三角形の斜辺をの長さを<math>c</math>とし、それ以外の辺の長さを<math>b</math>とよぶ。
このとき、三平方の定理から、
 
:<math>
このとき、三平方の定理から、<math>a^2 +b^2 = c^2</math>が成り立つことに注意せよ。
a^2 +b^2 = c^2
</math>
が成り立つことに注意せよ。
 
[[画像:Right triangle to define sine or cosine.png|thumb|r,a,b,cの定義]]
 
 
このとき、直角三角形の直角以外の角度である
38 ⟶ 24行目:
r
</math>
は、各々の辺の長さの比によって特徴づけられる。実際、直角三角形においてある1つの角の大きさが
与えられているとき、そのような三角形は2つの角の大きさが知られていることから、互いに相似であることが知られるからである。
実際、直角三角形においてある1つの角の大きさが
与えられているとき、そのような三角形は
2つの角の大きさが知られていることから、
互いに相似であることが知られるからである。
 
このとき、各々の辺の長さの比を、角の大きさ
角の大きさ
:<math>
r
</math>
を特徴づける量として用いることが出来る。そのような、辺の長さの比は
そのような、辺の長さの比は
:<math>
a:b,b:c,c:a
</math>
の3種類がある。実際にはこのうちの全てが、三角比を表わす量として用いられている。
三角比を表わす量として用いられている。
 
三角比を表わす量として
67 ⟶ 47行目:
\tan
</math>
の3つがあげられる。ここでは、それぞれの量の定義を扱う。これらの量はそれぞれ日本語で正弦、余弦、正接の訳が与えられている
これらの量はそれぞれ日本語で正弦、余弦、正接の
訳が与えられている。
 
このときsin r は、
101 ⟶ 79行目:
である。
 
====三角比の相互関係====
これらの式は、
:<math>
110 ⟶ 89行目:
</math>
となり、成立する。
 
 
*問題例
 
**問題
 
恒等式
:<math>
305 ⟶ 281行目:
 
===三角比と図形===
====正弦定理余弦定理====
=====正弦定理=====
 
ここでは、[[w:正弦定理]]と[[w:余弦定理]]という2つの定理を扱う。これらは三角比を用いた定理であり、任意の三角形について成立する定理である。
三角形の辺の長さがa,b,cと与えられ、
 
相対する角の大きさがA,B,Cと与えられるとき
 
最初に正弦定理を使う。三角形の辺の長さがa,b,cと与えられ、相対する角の大きさがA,B,Cと与えられるとき
:<math>
\frac a {\sin A} = \frac b {\sin B} = \frac c {\sin C} = 2R
315 ⟶ 293行目:
が成り立つ。ここで、 R は、三角形の外接円の半径である。
 
*導出
 
最初に三角形が直角三角形であるときについて考える。直角三角形で,90<math>{}^\circ</math>の角をCとおき、対応する辺をcとする。このとき、外接円の半径をRとすると、
導出
 
最初に三角形が直角三角形であるときについて考える。
直角三角形で,90<math>{}^\circ</math>の角をCとおき、
対応する辺をcとする。
このとき、
外接円の半径をRとすると、
 
:<math>
2R = c
329 ⟶ 300行目:
= \frac c {\sin C }
</math>
が成り立つ。よって、角Cについて正弦定理が確かめられた。辺aについても図の三角形が直角三角形であることを用いると、
 
が成り立つ。よって、角Cについて正弦定理が確かめられた。
辺aについても図の三角形が直角三角形であることを用いると、
:<math>
a = 2R \sin A
</math>
が成り立つ。Bについても同様である。よって、三角形が直角三角形であるとき、正弦定理は示された
よって、三角形が直角三角形であるとき、正弦定理は示された。
 
次に三角形が鋭角三角形であるときを考える。特に角Aに注目する。Aと同じ円周角を持つ点の中で、角CBDが<math>90^\circ</math>になるように、点Dをとる。
:[[画像:Acute angle triangle for cos theorem.png|thumb|鋭角三角形についての導出]]
特に角Aに注目する。
このとき、三角形BCDについて、<math>\sin</math>の定義から、
Aと同じ円周角を持つ点の中で、
角CBDが<math>90^\circ</math>になるように、
点Dをとる。
[[画像:Acute angle triangle for cos theorem.png|thumb|鋭角三角形についての導出]]
このとき、三角形BCDについて、
<math>\sin</math>の定義から、
:<math>
BC = CD \sin A
</math>
(角BDC = 角Aに注意。これは円周角が互いに等しいことによる。)となり、
となり、
:<math>
\frac a {\sin A}= CD = 2R
</math>
が得られて、正弦定理が角Aについて示された。角B、角Cについても同様に示すことが出来る
角B、角Cについても同様に示すことが出来る。
 
 
最後に鈍角三角形の場合について考える。鈍角三角形の2つの鋭角については上と同じ証明を用いることが出来る。鈍角をCと書き、角ABD= <math>90{}^\circ</math>となるように点Dを取る。
:[[画像:Obtuse angle triangle for cos theorem.png|thumb|鈍角三角形での導出]]
鈍角三角形の2つの鋭角については上と同じ証明を
用いることが出来る。
鈍角をCと書き、角ABD= <math>90{}^\circ</math>となるように点Dを取る。
[[画像:Obtuse angle triangle for cos theorem.png|thumb|鈍角三角形での導出]]
 
ここで、角BDA = <math>180^\circ</math> - 角Cが成り立つ。(これは円に内接する四角形の相対する角a,bについてa+b =<math>180^\circ</math>が成り立つことによる。)これを用いると、
が成り立つ。
(これは円に内接する四角形の相対する角a,bについてa+b =
<math>180^\circ</math>が成り立つことによる。
)
これを用いると、
:<math>
AB = c = 2R \sin (180^\circ - C)= 2R \sin C
</math>
となり、確かにこの場合も成立する。よって、全ての三角形について正弦定理が示された。
<!-- %(よく考えると鈍角の<math>\si</math>はまだ定義していないのだが...。)
(2005/5/4の時点でのことです。)
-->
となり、確かにこの場合も成立する。
よって、全ての三角形について正弦定理が示された。
 
 
*問題例
 
**問題
 
484 ⟶ 430行目:
c^2 = b^2 + a^2 - 2ab \cos C
</math>
これらの式は、それぞれ対応する式を、a,b,cについて解いたものになっていることに注意。
a,b,cについて解いたものになっていることに注意。
 
導出
 
上の絵で、点Bから線分ACに対して垂線を下ろし、垂線と線分ACがぶつかった点をHと呼ぶ。
上の絵で、
*図
点Bから線分ACに対して垂線を下ろし、
このとき、CHの長さはa cos C と表わせ、BHの長さはa sin C と表わせる。三角形ABHについて三平方の定理を用いると、
垂線と線分ACがぶつかった点をHと呼ぶ。
<!-- (Hが描き込まれた図。)\\ -->
このとき、CHの長さはa cos C と表わせ、
BHの長さはa sin C と表わせる。
三角形ABHについて三平方の定理を
用いると、
 
:<math>
AH^2 + BH^2 = AB^2
510 ⟶ 449行目:
b^2 - 2a b \cos C + a^2 = c^2
</math>
となり、求めたい式に対応した式が得られた。頂点A、Bについても同様にして求めることが出来る
頂点A、Bについても同様にして求めることが出来る。
 
 
*問題例
 
**問題
 
三角形ABCについて、辺の長さ
:<math>
567 ⟶ 502行目:
**解答
 
元々の条件で三角形ABCは、2辺AB,BCとその間の角
2辺AB,BCとその間の角
:<math>
\angle B
</math>
が知られていた。そのため、この三角形は完全に決まっており、それぞれの角の大きさも知られるはずである。
が知られていた。
そのため、この三角形は完全に決まっており、
それぞれの角の大きさも知られるはずである。
 
それぞれの角の大きさを計算するためには、角の大きさのための余弦定理を使うのがよい。ただし、2つの角の大きさが求められたら、3つめの角は余弦定理によるまでもなく、
余弦定理を使うのがよい。ただし、2つの角の大きさが求められたら、
3つめの角は余弦定理によるまでもなく、
:三角形の3内角の和 = <math>180 {}^\circ</math>
によって計算することが出来る。
 
まず、角Aを求める。余弦定理を用いると、
余弦定理を用いると、
:<math>
\cos A = \frac{AB ^2 + AC^2 - BC ^2}{2 AB \cdot AC}
602 ⟶ 531行目:
\cos A = \frac 1 {\sqrt{13}}
</math>
は簡単に計算することは出来ないが、数値的に値を知ることは出来る。仮にこの値を
数値的に値を知ることは出来る。
仮にこの値を
:<math>
a {}^\circ
</math>
とすると、角Cは
角Cは、
:<math>
\angle C = 180 {}^\circ
629 ⟶ 555行目:
 
**問題
三角形ABCについて、3辺の長さ、3角の大きさのうち、いくつかの量が与えられているとする。このとき、与えられた量以外の量を計算せよ。
三角形ABCについて、
3辺の長さ、3角の大きさのうち、
いくつかの量が与えられているとする。
このとき、与えられた量以外の量を計算せよ。
 
(i)
642 ⟶ 565行目:
AB = 5, \angle A = 45 ^ \circ , C = 75^\circ
</math>
 
**解答
 
(i)
余弦定理によって、
671 ⟶ 591行目:
\angle A, \angle C
</math>
を定めることができる。(余弦定理を用いて計算することもできる。 )実際に計算すると、
(余弦定理を用いて計算することもできる。 )
実際に計算すると、
:<math>
\sin \angle C = \frac {2} {\sqrt{37}}
692 ⟶ 610行目:
= 60 ^ \circ
</math>
が得られる。さらに正弦定理を用いると、
さらに正弦定理を用いると、
:<math>
\frac 5 {\sin \angle C }
701 ⟶ 618行目:
= \frac {AC} {\sin \angle B}
</math>
が得られる。これを解くと、
これを解くと、
:<math>
BC = \frac {5\sqrt 6} 3
713 ⟶ 629行目:
\sin 75 ^\circ
</math>
の値は、最も簡単な計算法は[[高等学校数学II]]で与えられる。詳しくは[[高等学校数学II いろいろな関数]]を参照。答えは、
[[高等学校数学II]]
で与えられる。詳しくは[[高等学校数学II いろいろな関数]]を参照。答えは、
:<math>
\frac {\sqrt 6 + \sqrt 2} 4
726 ⟶ 640行目:
 
====図形の計量====
=====相似形の面積比、体積比=====
 
長さの比が2倍になると面積は4倍になる。一般に、長さの比が <math>a</math> 倍になると面積は <math>a^2</math> 倍になる。長さの比が2倍になると体積は8倍になる。一般に、長さの比が <math>a</math> 倍になると体積は <math>a^3</math> 倍になる。
 
=====球の表面積、体積=====
<!-- 平面図形や簡単な空間図形の計量?? -->
 
=====3角形の面積公式=====