「高等学校数学II/式と証明・高次方程式」の版間の差分

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このような操作を分母の実数化ということもある。数学Iで学習した展開・因数分解公式 <math>(a+b)(a-b)=a^2-b^2</math>の簡単な応用である。
 
 
 
 
{{コラム| 複素数では大小関係が無い |
 
検定教科書では説明が大幅に省略されてるが、複素数そのものや虚数そのものには、大小関係が定義されない。つまり、2個以上の複素数について、不等号は定義されない。
 
複素数に大小関係を定義してみても、無駄だからである。
 
 
複素数では、数直線のように一直線には書けないので、そもそも順序を明確な基準で定義できない事などが理由だろう。
 
もちろん、ある複素数 z=a+bi にその共役の複素数を掛けて、絶対値 a^2 + b^2 をとれば、その絶対値は実数なので、不等号を使えるが、しかしそれは実数の大小関係であるので、複素数を定義する必要が無い。
 
}}
 
===== 負の数の平方根 =====
1,096 ⟶ 1,112行目:
:<math>x= \pm \sqrt{7}\ i</math>
 
{{コラム| 複素数の平方根 (※発展) |
:※ 数学IIIの複素数平面で詳しく習うので、高校年の段階では深入りは不要。
 
今度は、複素数の平方根について考えてみよう。
正の数<math>a</math>を考えたとき、
:<math>a</math>の平方根は<math>\pm \sqrt{a}</math>
:<math>-a</math>の平方根は<math>\pm \sqrt{a} i</math>
では、
:<math>\pm a i</math>の平方根はどのように表せるだろうか。
虚数単位<math>i</math>の平方根を考えると、これはzについての方程式 <math>z^2 = i</math> の解 z の値であるから、これを解けばよい。
 
まず、単純に両辺の平方根を考えると、<math>z = \pm \sqrt{i}</math>となる。ところが、ここから<math>\sqrt{i}</math>の値を考えるのは極めて難しい。
今度は両辺を2乗してみても、<math>z^2 = i \Rightarrow z^4 = -1 \Leftrightarrow z^4 + 1 = 0 \Leftrightarrow (z^2 + i)(z^2 - i) = 0</math>となり、解決しそうにはならない。
ならば、一見すると <math>z^2 = i</math>を満たすzを新しく'''虚数単位の平方根'''として定義する必要があるように思える。(じつは不要。)
 
 
では、どの複素数もこのzとなり得ないのだろうか。
これを確かめるため、zを複素数として話を進めてみよう。
 
zを複素数とすると、<math>z = x + yi</math>(x,yは実数)と表される。
<math>(x + yi)^2 = i \Leftrightarrow x^2 + 2xyi - y^2 = i \Leftrightarrow (x^2-y^2)+(2xy-1)i = 0</math>
 
<math>x^2-y^2,2xy-1</math>は実数であるから、実部と虚部が共に0にならねばならないから、
<math>\begin{cases}
x^2-y^2=0 (\Leftrightarrow x= \pm y ) \\
2xy-1=0
\end{cases}</math>
 
<math>x=y</math>のとき、<math>2x^2=1 \Leftrightarrow x=\pm\frac{1}{\sqrt{2}},y=\pm\frac{1}{\sqrt{2}}</math> (複号同順。x,yは共に実数であるから、条件を満たす。)
 
<math>x=-y</math>のとき、<math>-2y^2=1 \Leftrightarrow y^2=-\frac{1}{2}</math> ここで、これを満たす実数yは存在しないから不適。
 
よって、<math>z=\pm\left(\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i\right)</math><sub>■</sub>
 
zについての方程式<math>z^2 = i</math>は2次方程式であって、未知数<math>z</math>が複素数であると仮定した結果異なる2解が見つかった。このことから、複素数より広い範囲において更なる別の解がないことが分かる。
(つまり、'''虚数単位の平方根'''の定義は不必要)
 
不安の残る読者は、逆が成り立つことを示してみよう。
 
*問題例
** 問題
:■ <math>i \,\!</math>を虚数単位とするとき、次の問いに答えよ。
 
:(I) <math>-i,30i \,\!</math>の平方根を求めよ。
 
:(II) 2次方程式 <math>z^2 - 30i - 16 = 0 \,\!</math> を解け。
 
:(III) 3次方程式 <math>z^3 = i \,\!</math> を解け。
 
 
** 解答
:(I)
::<math>\pm\left(\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i\right) , \pm\left(\sqrt{15}+\sqrt{15}i\right)</math>
:(II)
::<math>z=5+3i , -5-3i \,\!</math>
:(III)
::<math>z=-i,\frac{i\pm\sqrt{3}}{2}</math>
 
:今回挙げた問題は、全て<math>z=x+yi</math>(x,yは実数)と置くことで求められる。(III)は、<math>(x+yi)^3-i=x(x^2-3y^2)+(3x^2y-y^3-1)i=0</math>より、
実部がゼロを考慮して<math>x=0</math>か<math>x=\pm\sqrt{3}y</math>だが、虚部もゼロなので、xの値が前者のとき<math>y=-1</math>、後者のとき<math>y=1/2</math>となることがすぐにわかる。
 
}}
 
==== 2次方程式の判別式 ====
1,696 ⟶ 1,650行目:
<center><math>\alpha + \beta + \gamma =- \frac{b}{a}\ ,\ \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha= \frac{c}{a}\ ,\ \alpha \beta \gamma =- \frac{d}{a}</math></center>
|}
 
== コラム 複素数の平方根 (※発展) ==
 
{{コラム| 複素数の平方根 (※発展) |
:※ 数学IIIの複素数平面で詳しく習うので、高校年の段階では深入りは不要。
 
今度は、複素数の平方根について考えてみよう。
正の数<math>a</math>を考えたとき、
:<math>a</math>の平方根は<math>\pm \sqrt{a}</math>
:<math>-a</math>の平方根は<math>\pm \sqrt{a} i</math>
では、
:<math>\pm a i</math>の平方根はどのように表せるだろうか。
虚数単位<math>i</math>の平方根を考えると、これはzについての方程式 <math>z^2 = i</math> の解 z の値であるから、これを解けばよい。
 
まず、単純に両辺の平方根を考えると、<math>z = \pm \sqrt{i}</math>となる。ところが、ここから<math>\sqrt{i}</math>の値を考えるのは極めて難しい。
今度は両辺を2乗してみても、<math>z^2 = i \Rightarrow z^4 = -1 \Leftrightarrow z^4 + 1 = 0 \Leftrightarrow (z^2 + i)(z^2 - i) = 0</math>となり、解決しそうにはならない。
ならば、一見すると <math>z^2 = i</math>を満たすzを新しく'''虚数単位の平方根'''として定義する必要があるように思える。(じつは不要。)
 
 
では、どの複素数もこのzとなり得ないのだろうか。
これを確かめるため、zを複素数として話を進めてみよう。
 
zを複素数とすると、<math>z = x + yi</math>(x,yは実数)と表される。
<math>(x + yi)^2 = i \Leftrightarrow x^2 + 2xyi - y^2 = i \Leftrightarrow (x^2-y^2)+(2xy-1)i = 0</math>
 
<math>x^2-y^2,2xy-1</math>は実数であるから、実部と虚部が共に0にならねばならないから、
<math>\begin{cases}
x^2-y^2=0 (\Leftrightarrow x= \pm y ) \\
2xy-1=0
\end{cases}</math>
 
<math>x=y</math>のとき、<math>2x^2=1 \Leftrightarrow x=\pm\frac{1}{\sqrt{2}},y=\pm\frac{1}{\sqrt{2}}</math> (複号同順。x,yは共に実数であるから、条件を満たす。)
 
<math>x=-y</math>のとき、<math>-2y^2=1 \Leftrightarrow y^2=-\frac{1}{2}</math> ここで、これを満たす実数yは存在しないから不適。
 
よって、<math>z=\pm\left(\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i\right)</math><sub>■</sub>
 
zについての方程式<math>z^2 = i</math>は2次方程式であって、未知数<math>z</math>が複素数であると仮定した結果異なる2解が見つかった。このことから、複素数より広い範囲において更なる別の解がないことが分かる。
(つまり、'''虚数単位の平方根'''の定義は不必要)
 
不安の残る読者は、逆が成り立つことを示してみよう。
 
*問題例
** 問題
:■ <math>i \,\!</math>を虚数単位とするとき、次の問いに答えよ。
 
:(I) <math>-i,30i \,\!</math>の平方根を求めよ。
 
:(II) 2次方程式 <math>z^2 - 30i - 16 = 0 \,\!</math> を解け。
 
:(III) 3次方程式 <math>z^3 = i \,\!</math> を解け。
 
 
** 解答
:(I)
::<math>\pm\left(\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i\right) , \pm\left(\sqrt{15}+\sqrt{15}i\right)</math>
:(II)
::<math>z=5+3i , -5-3i \,\!</math>
:(III)
::<math>z=-i,\frac{i\pm\sqrt{3}}{2}</math>
 
:今回挙げた問題は、全て<math>z=x+yi</math>(x,yは実数)と置くことで求められる。(III)は、<math>(x+yi)^3-i=x(x^2-3y^2)+(3x^2y-y^3-1)i=0</math>より、
実部がゼロを考慮して<math>x=0</math>か<math>x=\pm\sqrt{3}y</math>だが、虚部もゼロなので、xの値が前者のとき<math>y=-1</math>、後者のとき<math>y=1/2</math>となることがすぐにわかる。
 
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