「高等学校数学II/式と証明・高次方程式」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
検定教科書ではマイナス符号は全角英数であるので、半角にした投稿を差し戻し。 また「以上より」という表現は、大小関係と紛らわしいので検定教科書では使わない。他人の編集にケチをつけるなら、検定教科書を読んでから投稿してください。
「以上より」については訂正。それ以外の編集を差し戻される意味が分からないのであとは差し戻し。
286 行
===== 恒等式 =====
等式 <math>(a+b)^2=a^2+2ab+b^2</math>は、文字<math>a,b</math>にどのような値を代入しても成り立つ。このような等式を'''恒等式'''(こうとうしき)という。
等式<math>\frac {1}{x-1} + \frac {1}{x+1} = \frac {2x}{x^2-1}</math>は、両辺とも<math>x=1,-1</math>を代入することはできないが、その他の値であれば代入することができ、またどのような値を代入しても等式が成り立っている。これも恒等式と呼ぶ。高校で習う因数分解の公式( <math>(a+b)^2=a^2+2ab+b^2</math> など)は、基本的に恒等式である
 
いっぽう、<math>x^2 - x - 2 = 0</math> は、x=2 または x=ー1 を代入したときだけ成り立つが、このように文字に特定の値を代入したときにだけ成り立つ式のことを方程式と呼び、恒等式とは区別する。
 
等式 <math>ax^2+bx+c=0</math> が <math>x</math> についての恒等式であるのはどのような場合か、考えてみよう。
 
ある式が「 <math>x</math> についての恒等式である」とは、この式の<math>x</math> にどのような値を代入しても、この等式は成り立つという意味である。なので、例えば <math>x</math> に<math>-1\ ,\ 0\ ,\ 1</math> を代入した式
高校で習う因数分解の公式( <math>(a+b)^2=a^2+2ab+b^2</math> など)は、基本的に恒等式である。
 
 
「恒等式」という言葉の実用的な使い方については、たとえば、次のように使う。
 
「式 <math>ax^2+bx+c=3x^2+1x+5</math> が <math>x</math> についての恒等式であるなら、a=3 , b=1 , c=5 である。」
 
上の例では、説明を単純化するために係数の対応が一目瞭然の形のものを紹介したが、しかし実際に恒等式の発想を数学で使う場合には、事前には 上式のような形には整理されておらず、なので計算者が自身で式変形して整理していく必要がある。
 
 
では、この「恒等式」の言葉の使い方を理解するために、次の問題を考えよう。
 
方程式と恒等式の意味の違いを理解するために、次の等式 <math>ax^2+bx+c=0</math> が <math>x</math> についての「恒等式である」場合について考えてみよう。
 
ある式が「 <math>x</math> についての恒等式である」とは、この式の<math>x</math> にどのような値を代入しても、この等式は成り立つという意味である。
 
 
なので、例として <math>x</math> に<math>-1\ ,\ 0\ ,\ 1</math> を代入すると
:<math>a-b+c=0</math>
:<math>c=0</math>
:<math>a+b+c=0</math>
となはすべて成り立つ必要がある。これを解くと
:<math>a=b=c=0</math>
逆に <math>a=b=c=0</math> とするとなので明らかに等式 <math>ax^2+bx+c=0</math> <math>x</math> についての恒等式になるならば、<math>a=b=c=0</math>なければならないことがわかる。
ところで、逆に <math>a=b=c=0</math> とすると、明らかに等式 <math>ax^2+bx+c=0</math> は <math>x</math> についての恒等式であることがわかる。
 
:※ この例のよう一般に、xについての恒等式 <math>ax^2+bx+c=0a'x^2+b'x+c'</math> は、その式単独恒等式は、あまり実用性は無い。くまでることと<math>(a-a')x^2+(b-b')x+(c-c')=0</math> が恒等式であるこ方程式の意味の違いを理解するための例題同じしかないある<br>
:ただし、次に述べるように、他の式との等号などと組み合わせると、価値がある。
 
 
等式 <math>ax^2+bx+c=0</math> と <math>a'x^2+b'x+c'=0</math> について、<br>
等式 <math>ax^2+bx+c=0</math> が恒等式であることと、<math>(a-a')x^2+(b-b')x+(c-c')=0</math> が恒等式であることと同じである。<br>
よって
:<math>ax^2+bx+c=a'x^2+b'x+c'</math> が<math>x</math>についての恒等式   <math>\Leftrightarrow </math>   <math>a=a'</math> かつ <math>b=b'</math> かつ <math>c=c'</math>
 
 
まとめると次のようになる。
357 ⟶ 335行目:
さきほど紹介した「恒等式」という言葉を使って「証明」の意味を説明するなら、「等式を証明(しょうめい)する」とは、その式が恒等式であることを示すことである。
 
一般に、等式 A=B を証明するためには、次のような手順のいずれかを実行すればよい。
:※ しかし、実際に証明するときに、ここまで考える必要は無い。せいぜい、方程式と恒等式の言葉の使い方を間違えないように気をつければいい。言葉の使い分けが苦手なら、単に「式」または「等式」とだけ言っていればいいし、実際に中学の数学教育では そうしている。
 
それよりも、実際に等式を証明する際の手順を学ぼう。
 
 
一般的に、等式 A=B を証明するためには、次のような手順のいずれかを実行するのが通常である。
:(1)  Aを式変形してBを導くか、または Bを変形してAを導く。
:(2)  A,Bをそれぞれ変形して、同じ式Cを導く。
:(3)  A-B=0 を示す。
 
上記の3つの方法の内容は、どれも中学校または高校1年ていどで練習したものである( なので、暗記の必要は無い)。
 
 
* 例題 1
374 ⟶ 344行目:
(a+b)^2-(a-b)^2 = 4ab
</math>
が成り立つことを証明できるせよ
この等式を証明せよ。
 
(証明)<br>
 
左辺を展開すると、
(解法)<br>
まず、左辺を展開すると、
:(左辺)=<math>
(a^2+2ab+b^2)-(a^2-2ab+b^2) = a^2+2ab+b^2 - a^2+2ab-b^2=4ab
385 ⟶ 353行目:
 
となり、これは右辺に等しい。よって、等式 <math>
(a+b)^2-(a-b)^2 = 4ab
</math> は証明された。(終)
 
 
----
396 ⟶ 363行目:
が成り立つことを証明せよ。
 
:(証明)
 
左辺を計算すると、
:(解法)
左辺を展開すると、
:(左辺) = <math> (x^2+2xy+y^2)+(x^2-2xy+y^2) = x^2+2xy+y^2 + x^2-2xy+y^2 = 2x^2+2y^2 =2(x^2+y^2) </math>
最後の式変形では、係数2でまとめた。
 
これは右辺に等しい。よって等式が成り立つことが証明された。(終)
 
----
447 ⟶ 412行目:
|style="padding:5px"|
:(1)  <math> a>b </math> かつ <math> b>c </math> ならば <math> a>c </math>
:(2)  <math> a>b </math> ならば <math> a+c>b+c </math> ならばかつ <math> a-c>b-c </math>
:(3)  <math> a>b </math> かつ <math> c>0 </math> ならば <math> ac>bc </math> であり、<math> \frac{a}{c} > \frac{b}{c} </math>でもある
 
463 ⟶ 428行目:
|style="padding:5px"|
:(1)  <math> a>b </math> かつ <math> b>c </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> a>c </math>
:(2)  <math> a>b </math> ならば<math>\Longrightarrow </math> <math> a+c>b+c </math>  <math>\Longrightarrow </math>かつ <math> a-c>b-c </math>
:(3)  <math> a>b </math> かつ <math> c>0 </math>  <math>\Longrightarrow</math>  <math> ac>bc </math> であり、<math> \frac{a}{c} > \frac{b}{c} </math>でもある
 
473 ⟶ 438行目:
とも書ける。
 
上述の4つの基本性質から、
 
:a>0,  b>0 ならば a+b > 0
を証明してみよう。
 
(証明)
数式だけだと意味を理解しずらいし覚えづらいので、この4つの公式の要点を日本語にすると、
まず a>0 なので、基本性質(2)より
:(1)  <math> a>b </math> かつ <math> b>c </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> a>c </math>  (※ これだけは数式で覚える必要がある)
:a+b > b
:(2)  不等式の両辺から同じ数を足しても、不等号の向きは変わらない。 同様に、両辺から同じ数を引いても、不等号の向きは変わらない。
である。
:(3)  不等式の両辺に、正の数を掛けても、不等号の向きは変わらない。 不等式の両辺を、正の数で割り算して分数にしても、不等号の向きは変わらない。
:(4)  不等号の両辺に、負の数をかけ算する場合、不等号の向きが反転する。 割り算で分数にする場合も同様、不等号の向きは反転する。
ことを主張している。
 
よって、
:<math> a+b>b </math> かつ <math> b>0 </math>
なので、基本性質(1)より<math> a+b>0 </math>
が成り立つ。(終)
 
同様にして、
さて、上述の4つの基本性質から、
:a<0,  b<0 ならば a+b < 0
 
:a>0,  b>0 ならば a+b > 0
を証明できる。
 
::(※ 読者は自分で これを証明してみよ。検定教科書にも、この式の証明は省略されている。)
(証明)
まず a>0 の両辺に bを足して、
:a+b > b
である。(基本性質(2)の「不等式の両辺から同じ数を足しても、不等号の向きは変わらない。 同様に、両辺から同じ数を引いても、不等号の向きは変わらない。」を適用した)
 
ここまでに示したことから、不等式 <math> A \geqq B </math> を証明したい場合には、
これに、性質(1) と 仮定の b>0 を適用し、
: <math> A-B \geqq 0 </math>
:<math> a+b>b </math> かつ <math> b>0 </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> a+b>0 </math>
を証明すればよいことがわかった。こちらの方が証明しやすい場合がよくある。
 
不等式を証明する際に根拠とする基本的な不等式として、次の性質がある。
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|'''実数の2乗の性質'''
|-
|style="padding:5px"|
実数 a について、かならず
:<math>a^2 \geqq 0</math>
が成り立つ。
 
この式で等号が成り立つ場合とは、 <math>a = 0</math> の場合だけである。
そして、前提の <math> a+b>b </math> と <math> b>0 </math> の両方とも、仮定などにより成り立っているので、よって結論の <math> a+b>0 </math> が成り立つ。
|}
 
この定理(「実数を2乗すると、かならずゼロ以上である」)を、基本性質(3),(4)を使って証明してみよう。
:※ なお P<math>\Longrightarrow </math>Q という論理式は、「もしも 前提のP が成立するとしたら 結論のQ も成立する」とだけしか主張していないので、前提のPが正しくない場合には結論 Q が成り立つかどうかは不明である (この論理式 P <math>\Longrightarrow </math> Q だけでは不明)。なので、もし証明で この論理式 P <math>\Longrightarrow </math> Q を使う場合には、この論理式の式変形とは別途に前提Pが成り立つことも証明する必要がある。
 
'''(証明)'''
こうして
:a+b > 0
が導かれる。 (証明 おわり)
 
aが正の場合と負の場合と0の場合の3通りに場合わけする。
 
'''<nowiki>[aが正の場合]</nowiki>''' <br>
このとき、基本性質(3)より、
:<math> aa>0a </math>
である。すなわち、
:<math> a^2 > 0 </math>
である。
 
'''<nowiki>[aが負の場合]</nowiki>'''<br>
同様にして、
このとき、基本性質(4)より
:a<0,  b<0 ならば a+b < 0
<math>0a < aa </math>
を証明できる。
である。すなわち、
: <math> a^2 > 0 </math>
である。
 
'''<nowiki>[aがゼロの場合]</nowiki>''' <br>
::(※ 読者は自分で これを証明してみよ。検定教科書にも、この式の証明は省略されている。)
このとき、
<math>a^2=0</math>
である。
 
よって、すべての場合について<math>a^2 \geqq 0</math>
(終)
 
このことと基本性質(1)(2)より、次が成り立つこともわかる。
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|'''実数の2乗どうしの和の性質'''
|-
|style="padding:5px"|
2つの実数a,b について <math>a^2 \geqq 0</math>,  <math>b^2 \geqq 0</math> であるから、かならず
:<math>a^2+b^2 \geqq 0</math>
が成り立つ。
 
上式で等号が成り立つ場合とは、 <math>a^2 = 0</math> かつ <math>b^2 = 0</math> の場合だけであり、つまり <math>a = 0</math> かつ <math>b = 0</math> の場合だけである。
さて、不等式 <math> A \geqq B </math> を証明したい場合には、移項して
: <math> A-B \geqq 0 </math>
を証明することに置きかえると、証明しやすくなる場合がよくある。
 
|}
 
** 問題
527 ⟶ 523行目:
</math>
 
(証明)<br>
 
(解法)<br>
移項して、
:<math>
(x^2 + 10 y^2) -(6 x y) \geqq 0
</math>
を証明する問題に置きかえるればよい
 
では、この置きかえ後の問題を証明しよう。
 
左辺を展開して まとめると、
547 ⟶ 539行目:
(x - 3 y)^2 \geqq 0 , \quad y^2 \geqq 0
</math>
だから
:<math>
(x - 3 y)^2 + y^2 \geqq 0
</math>
である。よって
なので(0以上の数に、別の0以上の数を足したら、当然、結果は0以上であると言う条件をみたすので)、
よって、
:<math>
x^2 + 10 y^2 \geqq 6 x y
</math>
である。(証明 おわり
 
 
 
 
さきほどの問題では証明せずに用いた性質だが、実数 a,b について、次の性質がある。
 
 
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|'''実数の2乗どうしの和の性質'''
|-
|style="padding:5px"|
2つの実数a,b について <math>a^2 \geqq 0</math>,  <math>b^2 \geqq 0</math> であるから、かならず
:<math>a^2+b^2 \geqq 0</math>
が成り立つ。
 
上式で等号が成り立つ場合とは、 <math>a^2 = 0</math> かつ <math>b^2 = 0</math> の場合だけであり、つまり <math>a = 0</math> かつ <math>b = 0</math> の場合だけである。
 
|}
 
上の性質の証明の前提として、実数の2乗はかならずプラスであることを用いた。
 
つまり、
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
|style="background:skyblue"|'''実数の2乗の性質'''
|-
|style="padding:5px"|
実数 a について、かならず
:<math>a^2 \geqq 0</math>
が成り立つ。
 
この式で等号が成り立つ場合とは、 <math>a = 0</math> の場合だけである。
|}
 
 
 
じつは、この公式(「実数を2乗すると、かならずゼロ以上である」)も基本性質(3),(4)を使って証明できる。
 
証明のさい、証明したい式の文字と、基本性質の文字が同じでまぎらわしいので、基本性質の文字を x, y , z を用いたものに変形する。
:(3)<nowiki>'</nowiki>  <math> x > y </math> かつ <math> z > 0 </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> xz > yz </math> であり、<math> \frac{x}{z} > \frac{y}{z} </math>でもある
:(4)<nowiki>'</nowiki>  <math> x>y </math> かつ <math> z<0 </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> xz<yz </math> であり、<math> \frac{x}{z} < \frac{y}{z} </math>でもある
 
すべての実数 a について
: <math> a^2 \geqq 0 </math>
が成り立つ。
 
 
'''(証明)'''
 
aが正の場合と負の場合と0の場合の3通りに場合わけする。
 
'''<nowiki>[aが正の場合]</nowiki>''' <br>
まず、aが正の場合について考える。
 
仮定より a>0 である。
 
基本性質(3)に x=a, y=0 ,Z=aを代入し、
 
:(3)<nowiki>''</nowiki>  <math> a>0 </math> かつ <math> a>0 </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> aa>0a </math> であり、<math> \frac{a}{a} > \frac{0}{a} </math>でもある
 
が成り立つ。
 
整理して
:(3)<nowiki>'''</nowiki>  <math> a>0 </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> a^2 > 0 </math> であり、<math> 1 > 0 </math>でもある
 
が成り立つ。
 
 
'''<nowiki>[aが負の場合]</nowiki>'''<br>
aがゼロ以外の負の場合、まず仮定より a<0 である。
 
aが負の場合は、基本性質(4)または(4)<nowiki>'</nowiki>を使って証明する。
 
x=0, y=a ,Z=aを代入すると、
:(4)<nowiki>''</nowiki>  <math> 0>a </math> かつ <math> a<0 </math>  <math>\Longrightarrow </math>  <math> 0a < aa </math> であり、<math> \frac{0}{a} < \frac{a}{a} </math>でもある
となり、整理すると
:(4)<nowiki>'''</nowiki>  <math> 0>a </math> <math>\Longrightarrow </math>  <math> 0 < a^2 </math> であり、<math> 0 < 1 </math>でもある
となる。
 
よって、aが負の場合も、
: <math> a^2 > 0 </math>
である。
 
'''<nowiki>[aがゼロの場合]</nowiki>''' <br>
aが0の場合、これを2乗してもゼロであるので、 <math> a^2 \geqq 0 </math> を満たしている。
 
'''<nowiki>[すべての場合の結論]</nowiki>''' <br>
よって、aが正または負またはゼロの、すべての場合わけの場合について、 <math> a^2 \geqq 0 </math> が証明できた。(証明 おわり)
 
 
===== 根号をふくむ不等式 =====
655 ⟶ 558行目:
である。
 
これを証明するには、<math> a^2 - b^2 </math> を調べればよい。
 
証明は、結論の両辺 <math> a^2 > b^2 </math> を移項することで得られる 両辺の差 <math> a^2 - b^2 </math> を式変形すれば証明できる。
 
証明の単純化のため、まず a>b の場合を証明する。
 
:<math> a^2 - b^2 = (a+b)(a-b) </math>
である。
 
a>bとする。仮定より、a,b は正の数なので、<math> (a+b)>0 </math> であり、別の仮定より、 a > b なので、<math> (a-b)>0 </math> でもある。よって、<math> a^2 - b^2 = (a+b)(a-b) >0 </math>
仮定より、a,b は正の数なので、
:<math> (a+b)>0 </math>
である。
 
 
別の仮定より、 a > b なので、
:<math> (a-b)>0 </math>
でもある。
 
逆に、<math>a^2-b^2>0</math>のとき、<math>(a+b)(a-b)>0</math>であり、<math>a>0,b>0</math>なので<math>a+b>0</math>である。よって、<math>a-b>0</math>なので、<math>a>b</math>である。
なので、
:<math> a^2 - b^2 = (a+b)(a-b) >0 </math>
 
よって、<math> a > b \quad \Longleftrightarrow \quad a^2 > b^2 </math> である。
 
a≧bの場合も同様に証明できる。
 
 
;別の証明
別の証明として、やや技巧的な証明だが、 a>b という仮定を外して、
 
単に a,b がともに正の実数だという仮定のみから、 <math> a^2 - b^2 </math> の符号と <math> a-b </math> の符号が一致するかどうかを調べるという証明法もある。(大小問題の証明を、符号の問題に置き換えるというテクニック。)
 
 
つまり、仮定として、 a>0 および b>0 だけを設ける。
 
さて、
:<math> a^2 - b^2 = (a+b)(a-b) </math>
なので、
<math> a^2 - b^2 </math> の符号と <math> (a-b) </math> の符号とは一致する。(※ 検定教科書では、こちらの証明を紹介しているので、上記の別証を証明としても良い。)
 
 
----
練習として、どこの検定教科書にもある典型的な例題を次に示すので、次の問題を問いてほしいみよう
 
 
703 ⟶ 579行目:
 
 
解法証明
不等式の両辺は正であるので、両辺の平方の差を考えればよい。両辺の平方の差は
 
:<math>( \sqrt{a} + \sqrt{b} )^2 - ( \sqrt{a+b} )^2 = a + 2 \sqrt{a} \sqrt{b} + b - (a+b) 2 \sqrt{ab} </math>
とにかく、高校レベルの不等式の証明問題では普通、まず両辺の平方の差を求めればよい。
である。ここで、a,b はともに正の実数なので、
 
両辺の平方の差は、
:<math>( \sqrt{a} + \sqrt{b} )^2 - ( \sqrt{a+b} )^2 = |a| + 2 \sqrt{a} \sqrt{b} + |b| - |a+b| </math>
 
ここで、仮定の <math> a>0 </math>, <math> b>0 </math> より、
:<math> |a|=a </math>, <math> |b|=b </math>,  <math> |a+b| = a+b </math>
である。
 
また、a,b はともに実数なので、ルート記号の内部どうしの数はかけ算できるので、
::<math> \sqrt{a} \sqrt{b} = \sqrt{ab} </math>
であることを用いた。
 
これらの結果を使うと、両辺の平方の差は、次のように書き換えできる。
 
:<math>( \sqrt{a} + \sqrt{b} )^2 - ( \sqrt{a+b} )^2 = |a| + 2 \sqrt{a} \sqrt{b} + |b| - |a+b| = a + 2 \sqrt{ab} +b - (a+b) = 2 \sqrt{ab} </math>  (1)
 
そして、仮定の <math> a>0 </math>, <math> b>0 </math> より、
:<math> \sqrt{ab} > 0</math>
であるので、これを式(1)と組み合わせて
:<math>( \sqrt{a} + \sqrt{b} )^2 - ( \sqrt{a+b} )^2 > 0 </math>
となる。よって、
 
 
したがって、両辺の平方の差が正なので、おおもとの不等式も両辺が正であるなら真である。
 
そして、おおもとの不等式の両辺は仮定より正であるので、よって問題は証明されたので、つまり、この問題の仮定の場合は
:<math> \sqrt{a} + \sqrt{b} > \sqrt{a+b} </math>
である。(証明 おわり
 
===== 絶対値をふくむ不等式 =====
780 ⟶ 638行目:
 
 
:平均を考える際、つい相加平均ばかりを考えがちだが、以下のような状況では相乗平均の方が適切である。
:(※ 検定教科書の範囲外 :)なぜ、相乗平均という発想が必要かというと、たとえば
::「ある企業では、2015年度の売上を基準にすると、2016年度では前年(2015年)の1.5倍の売上になりました。2017年度では、前年(2016年)の2倍の売上になりました。平均として、一年ごとに何倍の売り上げになっていったでしょうか? 」
:(答)<math>\sqrt{1.5 \times 2} = \sqrt{3} \fallingdotseq 1.73</math> より、約 1.73倍。
:のような問題では、意味を考えれば、相乗平均を求める必要がある。(※ よくある間違いで、これを相加平均で計算してしまう間違いがある。)
:また、この応用例は、項が3つ以上の場合の相乗平均の定義の仕方も、示唆している。もし読者が指数関数を知っているなら、項が3つ(ここでは a, b, c とする)の場合の相乗平均は、
:なお、答えは、<math>\sqrt{1.5 \times 2} = \sqrt{3} \fallingdotseq 1.73</math> より、約 1.73倍である。
 
:また、この応用例は、項が3つ以上の場合の相乗平均の定義の仕方も、示唆(しさ)している。もし読者が指数関数を知っているなら、項が3つ(ここでは a, b, c とする)の場合の相乗平均は、
::(3つの項の相乗平均)=<math> (abc)^{ \frac{1}{3} } </math>
:になる。
 
:※ この話題は検定教科書には書いてなくても、ある程度に高度な参考書なら普通に書いてある話題なので、こういう背景を理解しておこう。
 
 
 
相加平均と相乗平均について、次の関係式が成り立つ。
865 ⟶ 717行目:
 
==== 複素数 ====
===== 導入 =====
二次方程式 <math>ax^2+bx+c = 0</math> の解の公式 <math>x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math> で、判別式 <math>\sqrt{b^2-4ac}</math> がマイナスの場合、x軸との交点は無かった。
 
 
二次関数の方程式で解の無い式を、解の公式に無理矢理に当てはめると、解の公式にあるルート部分 <math>\sqrt{b^2-4ac}</math> (「判別式」という)の中身がマイナスになる。たとえば <math>\sqrt{-2}</math> や <math>\sqrt{-3}</math>のようになる。
 
ヨーロッパの数学では、中世に2次関数の研究が行われていた当初、解の公式をあてはめてみてルートの中身がマイナスになる方程式の場合は、単に「解が無い場合」というふうに考えていたので、当初の理論では、2乗してマイナスになる数については考える必要が無いと思われていた。
 
ところが、それから数学の研究が3次関数や4次関数へと進み、3次方程式の解の公式 や 4次関数の解の公式 が発見された際、2乗してマイナスになる数が、解を持つ公式の中に出てきた。つまり、たとえば 3次関数の方程式
:<math> a x^3 + b x^2+ c x + d = 0 \qquad (a \ne 0)</math>
で解をもつ場合でも、つまり、<math> a x^3 + b x^2+ c x + d</math> をグラフに書いた時にx軸と交わる場合でも、解の公式のなかに2乗するとマイナスになる数があらわれる場合のあることが分かってきた。
 
 
このため、2乗してマイナスになる数の研究が中世〜近世ごろのヨーロッパで始まった。
 
このような、2乗してマイナスになる数というのが、これから読者の学ぶ「虚数」(きょすう)である。
 
 
さらに虚数の研究が進むと、数学の「三角関数」(さんかく かんすう)といわれる分野や、「微分積分」(びぶん せきぶん)と言われる分野などの公式の多くが、虚数をつかうと公式が簡単な形になったり、また理解しやすくなることが分かってきた。そして20世紀以降、数学にかぎらず物理学や電気工学などの色々な分野でも、それらの分野における式計算をラクにするために虚数が活用されるようになった。
 
 
さて、慎重な読者のなかには「二乗してマイナスになる数を式に導入しても矛盾しないだろうか?」と心配する人もいるかもしれないが、しかし大丈夫である。なぜなら、そもそも、3次関数などの解をもつ場合の公式から、虚数の理論が誕生したのであるから、3次関数などの解の公式に矛盾のないかぎり、虚数の理論にも矛盾のしようが無いだろう。
 
そして21世紀の現在まで、3次関数の公式には、間違いは知られてなく、今でも3次関数の解の公式は正しい公式である。
 
なお現代では、3次関数や4次関数の公式には、あまり実用性が無いので、高校では学ばない。高校生の読者の勉強時間にも限りがあるので、3次関数や4次関数の公式に深入りする必要は無い。
 
 
さて、虚数の性質については、通常の数とは性質のちがう部分がいくつかのあるので、注意ぶかく学習する必要がある( たとえば虚数には、大小関係が無い)。
 
では、これから読者は、虚数の性質を学んでいこう。
 
===== 複素数 =====
2乗して負になる数、というものを考える。このような数は、中学で習った実数の中にはないことがわかる。なぜならば、正の数でも負の数でも2乗すると符号が打ち消して正の数になってしまうからである。そこで高校では、2乗して負になるという性質を持つ数の概念を新しく導入することにする。
983 ⟶ 803行目:
 
除法の定義は、分子と分母に、分母と共役な形の式を 掛け算 しただけである。
 
(※ 上記のように複素数に四則演算を定義しても矛盾が起きない。なぜなら、3次方程式や4次方程式の解の公式で、このような複素数の四則演算によって、実数解が導けるという事実が存在するからである。なので読者は、方程式の理論と複素数との理論との整合性について、心配をする必要は無い。)
 
 
乗法や除法の定義式を暗記する必要は無く、計算の際には、必要に応じて分配法則や共役などの、必要な式変形を行えばいい。
1,034 ⟶ 851行目:
 
 
{{コラム| 複素数では大小関係が無い |
検定教科書では説明が大幅に省略されてるが、複素数そのものや虚数そのものには、大小関係が定義されない。つまり、2個以上の複素数について、不等号は定義されない。
 
複素数どうしについて、その大小関係は定義しない。その理由は、どのように大小関係を定義しても、便利な性質を満たすことができないからである。具体的に言えば、既に述べた実数の大小関係についての「不等式の基本性質(1)(2)(3)(4)」にあたる式を成り立たせることができないのだ。
複素数に大小関係を定義してみても、無駄だからである。
 
たとえば、<math>a+bi<a'+b'i</math>であることを、<math>a^2+b^2<a'^2+b'^2</math>であることとして定義してみよう。このように定義すると、たとえば1+2i<2-3iであり、また2+3i<3+4iである。ところが、(1+2i)+(2+3i)=3+5i,(2-3i)+(3+4i)=5+iであり、3+5i>5+iとなってしまう。これは基本性質(2)が成り立たないことを意味する。
 
もちろんこれは適当に考えた定義がたまたま不適切だったというだけのことだが、実は、他にどのように定義してもこのような困難からは逃れられないことが知られている。それゆえに、複素数には大小関係を定義しないのである。
複素数では、数直線のように一直線には書けないので、そもそも順序を明確な基準で定義できない事などが理由だろう。
 
もちろん、ある複素数 z=a+bi にその共役の複素数を掛けて、絶対値の2乗 a^2 + b^2 をとれば、その絶対値は実数なので、不等号を使えるが、しかしそれは実数の大小関係であるので、わざわざ複素数の大小関係を定義する必要が無い。
 
また、もし絶対値の2乗 a^2 + b^2 で大小関係の定義をしたとすると、+1 と ー1 の絶対値が同じなので大小関係を比較できず、無価値な理論になってしまう。
 
このように、もし複素数の理論に、むりやりに大小関係を定義してみても、無価値な結論がいくつも出てきてしまい、無駄になってしまう。近世ヨーロッパで複素数の研究ですぐれた研究成果を達成した数学者オイラーですら、研究の当初はためしに複素数の大小関係を定義してみたが、役立たない結論ばかりが得られたので、発想を転換して、複素数には大小関係を定義すべきでない という発想に切りかえたほどである。
}}
 
===== 負の数の平方根 =====
数の範囲を複素数にまで拡張すると、負の数の平方根も考えるようになことができる。
 
例として、 -5 の平方根について考えてみよう。<br>
 
 
1,063 ⟶ 873行目:
</math>
 
であるから、 -5 の平方根は <math> \sqrt{5}\ i </math> と <math> - \sqrt{5}\ i </math> である。
 
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
1,072 ⟶ 882行目:
|}
 
<math> \sqrt{-5} </math>とは、<math> \sqrt{5}\ i </math> のこととする。<math> - \sqrt{-5} </math>とは、<math> - \sqrt{5}\ i </math> のことである。
 
※ ある方程式の解として複素数を与えられたときに、よく<math>- \sqrt{5}\ i</math> のようなマイナスのルート何とかのほうの解を忘れやすいので、気をつけよう。
 
 
 
<math> \sqrt{5}\ i </math> とは、<math> \sqrt{-5} </math> のことである。<math> - \sqrt{5}\ i </math> とは、<math> - \sqrt{-5} </math> のことである。
 
なので、もし「ー5の平方根をすべて書け」という問題の答案で「 <math> \sqrt{5}\ i </math>」としか書かないと、<math> - \sqrt{-5} </math> を見落としていることになるので、気をつけよう。
 
とくに <math> \sqrt{-1}\ = \ i </math> である。
 
 
 
さて、-5 の平方根は、方程式<math>x^2=-5</math> の解でもある。
 
この方程式を移項することにより、-5 の平方根は、
:<math>
x^2+5=0
1,093 ⟶ 895行目:
の解であるともいえる。
 
さらに因数分解をすることにより、-5 の平方根は方程式
:<math>
(x + \sqrt{5}\ i)(x - \sqrt{5}\ i) =0
1,108 ⟶ 910行目:
:<math>\sqrt{-2}\ \sqrt{-6} = \sqrt{2}\ i \times \sqrt{6} \ i = \sqrt{12}\ i^2 = -2 \sqrt{3}</math>
 
このように、まず、マイナスの数の平方根が出てきた、まず虚数単位 i を用いた式に書き換える。
 
そのあと、かけ算をしていく。
1,131 ⟶ 933行目:
==== 2次方程式の判別式 ====
===== 2次方程式の解と複素数 =====
複素数の応用として、ここでは2次方程式の性質について述べる。任意の2次方程式は、解の公式によって解かれることを[[高等学校数学I 方程式と不等式#二次方程式|高等学校数学I]]で述べた。しかし、解の公式に含まれる根号の中身が負の数の場合には実数解が存在しないことに注意する必要がある。2次方程式
:<math>
ax^2+bx+c = 0
</math>
で、解の公式は、
:<math>
x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac} }{a}
1,372 ⟶ 1,174行目:
 
===== 2次式の因数分解 =====
* 導入
複素数を使うと、2次方程式を全ての場合において、因数分解できるようになる。
 
では、そもそも、「なぜ2次方程式を複素数を使ってまで因数分解する必要があるのか?」とか、「2次方程式を因数分解しても、3次以上の方程式で矛盾しないか?」という心配については、
:じつは3次方程式や4次方程式の解の公式で、因数分解を要求しているから、3次以下の2次方程式を因数分解しても大丈夫である。
 
3次方程式や4次方程式の解の公式で、実数解のある方程式を因数分解すると、実数解といっしょに虚数解も出て来る場合もある。
 
このため、けっして実数解と虚数解とは、対立しあうものではなく、3次以上の方程式において実数解を導出するために虚数解も必要になるのである。(説明 おわり)
 
また、大学レベルの話題になるが、「微分積分」(びぶん せきぶん)などの理論で、複素数を使った因数分解が必要になる場合などもある。
 
 
そういう応用を見越して、高校生は とりあえず、複素数をつかった2次方程式の因数分解を計算練習しよう。
 
 
*本論
 
2次方程式 <math>ax^2 + bx + c = 0</math> の2つの解 <math>\alpha</math> ,<math>\beta</math> がわかると、2次式
:<math>ax^2 + bx + c
1,688 ⟶ 1,472行目:
 
{{コラム| 複素数の平方根 (※発展) |
:※ 数学IIIの複素数平面で詳しく習うので、高校年の段階では深入りは不要。
 
今度は、複素数の平方根について考えてみよう。
1,696 ⟶ 1,479行目:
では、
:<math>\pm a i</math>の平方根はどのように表せるだろうか。
虚数単位<math>i</math>の平方根を考えると、これはzについての方程式 <math>z^2 = i</math> の解 z の値であるから、これを解けばよい。どのような複素数zならこの式を満たすことができるだろうか
 
まず、単純に両辺の平方根を考えると、<math>z = \pm \sqrt{i}</math>となる。ところが、ここから<math>\sqrt{i}</math>の値を考えるのは極めて難しい。
今度は両辺を2乗してみても、<math>z^2 = i \Rightarrow z^4 = -1 \Leftrightarrow z^4 + 1 = 0 \Leftrightarrow (z^2 + i)(z^2 - i) = 0</math>となり、解決しそうにはならない。
ならば、一見すると <math>z^2 = i</math>を満たすzを新しく'''虚数単位の平方根'''として定義する必要があるように思える。(じつは不要。)
 
 
では、どの複素数もこのzとなり得ないのだろうか。
これを確かめるため、zを複素数として話を進めてみよう。
 
zを複素数とすると、<math>z = x + yi</math>(x,yは実数)と表される。
1,720 ⟶ 1,495行目:
 
よって、<math>z=\pm\left(\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i\right)</math><sub>■</sub>
 
zについての方程式<math>z^2 = i</math>は2次方程式であって、未知数<math>z</math>が複素数であると仮定した結果異なる2解が見つかった。このことから、複素数より広い範囲において更なる別の解がないことが分かる。
(つまり、'''虚数単位の平方根'''の定義は不必要)
 
不安の残る読者は、逆が成り立つことを示してみよう。
 
*問題例
** 問題
:<math>i \,\!</math>を虚数単位とするとき、次の問いに答えよ。
 
:(I) <math>-i,30i \,\!</math>の平方根を求めよ。
1,752 ⟶ 1,522行目:
 
== コラム: 5次方程式の「解の公式」は無い ==
2次方程式には解の公式があり、日本の中学や高校でも習う。2次方程式の解の公式を用いれば、どんな係数の2次方程式であっても解を求められる。3次方程式と4次方程式にも、じつは解の公式があり、係数がどんな係数であっても解を求められる。
:※ 検定教科書では、章末コラムや巻末の見開きなどで、目立たずに書いてある。
 
2次方程式には解の公式があり、日本の中学や高校でも習う。2次方程式の解の方程式では、方程式の係数が実数であるかぎりは、どんな係数であっても解を求められる。
 
 
3次方程式と4次方程式にも、高校ではあまり深入りしないが、じつは解の公式があり、係数が実数のどんな係数であっても解を求められる。
 
しかし、5次方程式では、そのような一般的な解の公式は無い。
 
もちろん、<math> x^5 -32 = 0 </math> のような特別な場合の方程式には、簡単に解が求められる。たとえば、<math> x^5 -32 = 0 </math> は解のひとつとして <math> x=2 </math> をもつ。しかし、特別な係数の組み合わせの場合に解を求めることができることと、一般的な解の公式の存在とは、意味が違う。5次方程式に、一般的な解の公式が存在しないとは、どんな係数の組み合わせであっても適用できる、普遍的な解の公式が無いという事である。
 
なお、その証明を理解するには、19世紀に生まれた「ガロア理論」という高度な数学を理解する必要があり、ここでその解説をすることはとても困難なので割愛する。
もちろん、
 
<math> x^5 -32 = 0 </math> のような特別な場合の方程式には、個々の解がある。
 
たとえば、<math> x^5 -32 = 0 </math> は解のひとつとして <math> x=2 </math> をもつ。
 
しかし、特別な係数の組み合わせの場合に解の存在することと、一般的な解の公式の存在とは、意味が違う。
 
 
5次方程式に、一般的な解の公式が存在しないとは、どんな実数係数の組み合わせであっても適用できる、普遍的な解の公式が無いという事である。
 
 
 
その根拠として、数学者アーベルや数学者ガロアなどによって、5次以上の方程式では、解の公式が無いことが証明されてしまった。ただし、その証明は高度すぎるので、高校生は学習しなくて良い。(また、工業的な実用性もまったく無い。)