「大学受験参考書/数学」の版間の差分

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発展:リーマン和による積分の定義

高校数学においては、上述のように積分は微分の逆演算として定義される。そしてそれがグラフに囲まれる領域の面積と一致することは定理であるという立場をとる(高等学校数学III/積分法#区分求積法も参照)。しかし、高校数学以外では、面積を積分の定義として、それが微分の逆演算で計算できることを定理とするのが標準的である。この節では、そのような積分の定義について解説する。

 
区分求積法にもとづく積分 求めたい場所

関数 y=b x2 など、2次以上の関数で、x軸とグラフの囲む面積を、x=0 から x=a の範囲まで計算して、文字式で答えを記述したいとする。

どうやって計算すれば良いか。

ここではそもそも面積が定義できるかという点には立ち入らない。

 
面積を、いくつもの四角で近似。

直感的には、面積を求めるべき領域を四角形や三角形などでできる限り埋め尽くせば面積の近似値がわかるので、分割を極限まで細かくしたときの面積をその領域の面積と考えればよい。厳密には分割の仕方によらず値が一致することを示さねばならないが、ここでは触れない。


 
区分求積法にもとづく積分の説明図。下側(se)で計算した場合の図。
 
区分求積法にもとづく積分の説明図。上側(Sf)で計算した場合の図。

近似する際の分割の仕方によらず面積が等しいことを認めてしまえば、次のようにして面積を計算することが考えられる。面積を、いくつもの棒グラフの面積の足し合せとして計算するのである。本当の面積よりも大きめの面積になる棒グラフと、小さめの面積になる棒グラフを考える。求めたい本当の面積を S として、小さめの棒グラフの面積を Se とし、大きめの面積の棒グラフを Sf としよう。 すなわち、

Se < S < Sf

である。

もし正確に面積を求めたいなら、より細かい棒グラフで、面積を測ればよい。つまり、棒グラフ1個あたりの幅を細かくしていって、(そうすると、そのかわり棒グラフの本数が増えるが、)たとえば100個の棒グラフで近似、もっと細かくしていって1000個の棒グラフで近似、もっと細かく・・・、としていけば、どんどん面積が正確になる。つまり、面積の差は、無視できるほどに、小さくなる。(厳密には証明が必要だが、ここでは省略する)

そして、この、棒グラフを「どんどん細かくする」というような操作を、極限の操作と見なそう。すると、今までに習った極限の計算法を利用して、ひょっとしたら面積を文字式でも表せそうである。

結論を先にいうと、この「棒グラフをどんどん細かくする」という方法を極限で立式して、式をすすめていくと、面積を、文字式で表せる。

そして、このような面積の文字式による計算方法が、これから習う、積分(せきぶん)の正体である。


  • 極限の実行

では、じっさいに極限計算を実行していって、面積を正確に求めてみよう。

まず、面積を、じっさいより小さく評価する場合について、計算していこう。

n本の棒グラフで面積を近似した場合を考える。棒グラフ1本の横幅(x軸方向の幅)は、  である。そして、 左からk本目の棒グラフ高さは、図のように、  である。

そして、その棒グラフ1本の面積は  である。


そして、棒グラフを足し合わせるのだから、Σ計算を用いればよく、

 

となる。

kについて、まとめると、

 

となる。

 高等学校数学B/数列#簡単な数列の和にある通り、  である。代入すると、

すると、

 

となる。

そして、棒グラフを細かくするためには、n→∞に極限をとればよいのであるから、極限計算をすると、

 

こうして、  の極限が求まった。


同様に、面積を大きめに評価した場合の面積   を計算しても、

 

になる。

そして、大小関係

Se < S < Sf

を思い起こすと、高等学校数学III/極限#数列の極限にあるはさみうちの原理により、面積Sの値は

 

と求まる。

これが、積分である。

特にb=1とすれば、x2を 0 から a まで積分すると、  となる。この文字aを文字xで置き換えることで関数が得られる。この関数を不定積分という。二次関数の場合はこれが微分の逆と一致していることが式を見ることでわかる。

先述したとおり、積分の定義について、高校の検定教科書に書いてあるような定義(「微分の逆演算を積分という」のような定義)は、高校以外では標準的ではない。上述したような微小分割の無限和をとる極限計算を定義とするのが標準的である。

そして、大学などで習う、ベクトルの線積分(高校物理に例えると、「位置エネルギー」や(物理学的な意味での)「仕事」の計算のようなもの)などを理解するには、微小分割の無限和の極限計算にもとづいた積分に慣れ親しむ必要がある。

(※ 上記の例題では、2次関数についてのみ、積分が微分の逆演算になってることを、実際に計算例で示した。本来は、一般の関数について積分が微分の逆演算になっていることを計算で証明する必要はあるが、ここではそこまで立ち入らない。)


  • シグマと積分記号との関係

さて、

 

だった。

ここで、棒グラフ1本あたりのx軸方向の幅   を、

 

と書くことにする。また、

 

とおく。これらを代入すると、

 

さて、比較のため、積分の式を記載する。

 

級数和の式と積分の式で、式の形が似ていることに注目しよう。級数和の   は積分記号 に対応し、   に対応している。