「旧課程(-2012年度)高等学校数学A/整数の性質」の版間の差分

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35 行
:8の約数は −8, −4, −2, −1, 1, 2, 4, 8 である。
 
==== 隣接する数個の数の積 ====
たとえば 4×5 や 10×11 や 7×8 のように、隣接する2つの数の積は、かならず2の倍数である。なぜなら、隣接する2つの数のうち、どちらか一つは2の倍数だからである。
 
では、3つ以上の隣接する数の場合は、どうであろうか?(「隣接する3つの整数の積」とは、たとえば 4・5・6 や 10・11・12 のような数である。)
 
少し考えればわかるように、次のことが成り立つ。
隣接する3つの整数の積は、かならず 6 の倍数である。
 
(理由)
なぜなら、隣接する3つの数のうち、かならず1つは3の倍数である。
また、隣接する2つの数は、2の倍数を1つ含む。なので、隣接する3つの数には、少なくとも1つの2の倍数が含まれる。
よって、隣接する3つの数には、3の倍数と2の倍数が、必ず含まれる。
よって、隣接する3つの数の積は2の倍数でも3の倍数でもある。つまり6の倍数である。
 
このことを文字式で表すと次のようになる。整数''n''に対して
:<math>n(n-1)=n^2-n</math>は 2の倍数である。
:<math>n(n-1)(n+1)=n^3-n</math>は6の倍数である。
 
=== 素数と合成数 ===
111 ⟶ 128行目:
よって 60 が最小公倍数である。
 
ここまでの例題では、最小公倍数や最大公約数を求めるために、素朴に倍数や約数をすべて書き出してきたが、実はこれは多くの場合あまり得策ではない。今から述べるように、素因数分解を用いる方法がしばしば便利である。
==== 大きな数の最小公倍数と最大公約数 ====
60 と 84 の最小公倍数と最大公約数を求めよう。
 
もし大きな2つの数たとえば、60 と 84 の最小公倍数最大公約数を求めたい場合、よう。それぞれの数を素因数分解すると、答えを求めるのが簡単になる。
 
では、それぞれ素因数分解すると、
 
:60 = 2 × 30 = 2×3×10 = 2<sup>2</sup> × 3 × 5
123 ⟶ 137行目:
となる。
 
よって、最大公約数は、2つの項に素因数分解の共通している素数の、 素数2 と 素数3 に注目部分を取り出して、
:2<sup>2</sup> × 3 = 4×312
そして 4×3 = 12 よつまり、最大公約数は 12 である。
 
 
最小公倍数は
:2<sup>2</sup> × 3 × 5× 7 = 420
と計算すればよい。最小公倍数は 420 である。
 
:2<sup>2</sup> × 3 × 5× 7
より
:60×7=420
よって最小公倍数は 420 である。
 
 
==== 3つ以上の数の最大公約数と最小公倍数 ====
3つ以上の数でも、最大公約数や最小公倍数は定義できる。
 
147 ⟶ 157行目:
 
 
なので、まず上と同様に考えて、最小公倍数は、素数として、2,3,7をふくむ。
 
2<sup>3</sup>× 3<sup>2</sup>× 7 = 504 である。
そして 24, 28, 36 の素因数分解で、それぞれの素数の指数が最大のものに注目する。
 
よって、最小公倍数は 504 である。
 
つまり具体的には
:素数2の指数が最大である 24 に注目,
:同様に素数3の指数が最大である 36 に注目、
:素数7の指数が最大である 28 に注目する。
 
一方、最大公約数についても同様に、素因数分解の共通部分を考えて、2<sup>2</sup> つまり 4が最大公約数である。
 
そして
:24 の素因数分解で素数2の部分により、最小公倍数の素数 2 の指数は少なくとも 2乗、
:36 の素因数分解で素数3の部分により、最小公倍数の素数 3 の指数は少なくとも 2乗、
:28 の素因数分解で素数7の部分により、最小公倍数の素数 7 の指数は少なくとも 1乗、
である事がわかる。
 
比較的小さな数の最大公約数や最小公倍数を求めるには、これまでに述べたような素因数分解を用いる方法が有効である。素因数分解をするのが困難なぐらい大きな数の場合には、少し後で述べるユークリッドの互除法を用いるとよい。
よって、この3つの数にもとづく
最小公倍数を素因数分解したものは
 
==== 最小公倍数・最大公約数の性質 ====
:2<sup>3</sup>× 3<sup>2</sup>× 7
この節では、2つの自然数 a, bの最大公約数を記号で G ,最小公倍数を L と書くことにする。
 
これは、
である。
:英語で最大公約数は Greatest common measure であり、
:一方、英語で最小公倍数は Least common multiple なので、
頭文字をとって、それぞれ G と L で表している。
Gはaとbの最大公約数なので、定義より、
:a = G a<nowiki>'</nowiki>   および  b = G b<nowiki>'</nowiki>   (ただし a,b は互いに素)
と表される。
 
さて、このとき次が成り立つことがわかる。
これを合成すると、
 
異なる2つの自然数 a, b について、最大公約数 G と最小公倍数 L との間には、
2<sup>3</sup>× 3<sup>2</sup>× 7 = 8×9×7 = 72×7 = 504 である。
L = G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki> 
a・b = GL
 
の関係がある。   (ただし a,b は互いに素)
よって、最小公倍数は 504 である。
 
 
具体例を考えてみる。たとえば a=18, b=28 について考えてみよう。
一方、最大公約数については
 
素因数分解すると
:24 = 2<sup>3</sup> × 3
:18 = 2 × 3<sup>2</sup>
:28 = 2<sup>2</sup> × 7
:36なので最大公約数Gは 2 であり、最小公倍数 L 2<sup>2</sup> × 3×3<sup>2</sup>×7=252である。
 
ところで、G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki>を計算してみる。
G=2なので、a'=18÷2=9、b'=28÷2=14である。よって、Ga'b'=2×9×14=252であり、これは確かにLと等しい。
 
 
具体例から成り立ちそうなことが感じられたところで、この公式を証明してみよう。
 
(1つ目の式の証明)
より、どの項にも素数2が含まれており、2の指数部は共通して2以上なので、
 
Lはa=Ga'の倍数なので、整数mを用いて
よって 2<sup>2</sup> つまり 4が最大公約数である。
:<math>L=mGa'</math>
と表せる。一方、Lはb=Gb'の倍数でもあるので、mGa'はGb'の倍数である。すなわち、ma'はb'の倍数である。
ここで、a'とb'は互いに素であることに注意すると、mはb'の倍数である。すなわち、m=nb'と表せる。よって、
:<math>L=nGa'b'</math>
と表せる。一方、Ga'b'はaとbの公倍数なので、Lの倍数である。これらがともに成り立つのは''n''=1のとき、またそのときに限る。//
 
(2つ目の式の証明)
 
よってa = G a'であり最小公倍数はまたb 4 G b'なので、ab=GGa'b'である。
一方、L=Ga'b'よりGL=GGa'b'である。よって、
:ab = GL
である。//
 
== ユークリッドの互除法 ==
280 ⟶ 309行目:
 
=== 合同式 ===
 
 
== 雑題 ==
=== 隣接する数個の数の積 ===
たとえば 4×5 や 10×11 や 7×8 のように、隣接する2つの数の積は、かならず2の倍数である。
 
なぜなら、隣接する2つの数のうち、どちらか一つは2の倍数だからである。
 
 
では、3つ以上の隣接する数の場合は、どうであろうか?
 
次の事が解明されている。
隣接する3つの整数の積は、かならず 6 の倍数である。
 
::※ なお、「隣接する3つの整数の積」とは、たとえば 4・5・6 や 10・11・12 のような数である。
 
 
(理由)
 
なぜなら、隣接する3つの数のうち、かならず1つは3の倍数である。
 
また、隣接する2つの数は、2の倍数を1つ含む。なので、隣接する3つの数には、少なくとも1つの2の倍数が含まれる。
 
よって、隣接する3つの数には、3の倍数と2の倍数が、必ず含まれる。
 
2と3はたがいに素であるから、隣接する3つの数の積は3×2の倍数、つまり6の倍数である。
 
 
;例題
:n<sup>2</sup>−n は 6の倍数であることを示せ。
 
(解法)
 
因数分解すると、
:n<sup>2</sup>−n = n(n−1)
 
並び変えると
:(n−1)n
 
これは、隣接する2つの数の積なので、よって2の倍数である。
 
 
;問題
:n<sup>3</sup>−n は 6の倍数であることを示せ。
 
 
(解法)
 
n<sup>3</sup>−n = n(n−1)(n+1) と因数分解できる。
 
これを並び変えると
:(n−1)・n・(n+1) のように隣接する3つの数の積になる。
 
よって、6の倍数である。
 
 
=== 最小公倍数・最大公約数の発展的な話題 ===
日本の高校数学では一般的に、最大公約数を記号で G ,最小公倍数を L と置く。
 
これは、
:英語で最大公約数は Great common measure であり、
:一方、英語で最小公倍数は Least common multiple なので、
頭文字をとって、それぞれ G と L で表している。
 
異なる2つの自然数 a, b について、最大公約数 G はその定義にもとづき、
:a = G a<nowiki>'</nowiki>   および  b = G b<nowiki>'</nowiki>   (ただし a,b は互いに素)
と表される。
 
 
天下り的だが、
 
実は次の2つの公式がある。
 
異なる2つの自然数 a, b について、最大公約数 G と最小公倍数 L との間には、
L = G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki> 
a・b = GL
 
の関係がある。   (ただし a,b は互いに素)
 
 
公式だけだと意味が分かりづらいので、具体例を考えてみよう。
 
たとえば 18 と 28 の最小公倍数と最大公倍数で考えよう。
 
 
まず、素因数分解して
:18 = 2 × 3<sup>2</sup>
:28 = 2<sup>2</sup> × 7
 
なので最大公約数Gは 2 である。
 
一方、最小公倍数Lを素因数分解すると、形は
:L=2<sup>?</sup> × 3<sup>?</sup>× 7<sup>?</sup>
のように(「?」部の数字は、かならずしも同じとは限らない)、
それぞれの素因数分解に使われている素数をぜんぶ使う事になる。
 
そして、最小公倍数の素因数分解では、それぞれの素数の指数部の数値は、2つの素因数分解の素数の指数部のうち最大のものである事を利用し、最小公倍数を求めればよい。
 
 
たとえば、
最小公倍数Lの素因数分解に含まれる2の素数の累乗については、もとになる2個の数の18と28の素因数分解に現われる素数2の指数部のうち、28の素因数2の指数のほうが大きいので、Lは
:L=2<sup>2</sup>×(2の累乗以外の数の積)
の形になる。
 
同様に、素因数分解に含まれる3の素数の累乗については、18の素因数分解に現われる素数3の指数部は2で、一方28の素因数分解に現われる素数3の累乗は0なので( 3<sup>1</sup> =1 なので)、
:L=3<sup>2</sup>×(3以外の数の積)
の形になる。
 
 
そして、素数2と素数3はもちろん 互いに素 なので、
 
:L=2<sup>2</sup> × 3<sup>2</sup> ×(2と3の累乗以外の積)
 
の形になる。
 
 
同様に、28 の素因数分解にふくまれる素数7についても考察すると、
:L=7<sup>1</sup>×(7以外の数の積)
である。そして、7は2,3と互いに素なので、
 
 
:L=2<sup>2</sup> × 3<sup>2</sup> × 7<sup>1</sup> =126
 
となる。
 
よって、最小公倍数 L は 252 である。
 
 
いっぽう、公式
L = G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki> 
を使うと、
まず、G=2 である。
そして、
:18 = 2 × 3<sup>2</sup> = 3<sup>2</sup> G
:28 = 2 × (2×7) = (2×7) ・ G
 
なので
:a<nowiki>'</nowiki> = 3<sup>2</sup>
:b<nowiki>'</nowiki> = 2×7
 
そして
:G × a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki> = 2 × ( 3<sup>2</sup> )×(2×7) = 252
となり、たしかに最小公倍数になっている。
 
 
この公式 L = G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki> を使えば、もう一つの公式( a・b = GL )も導かれる。
 
実際に計算してみると、
 
a = G a'   および  b = G b'  
 
:a = G a<nowiki>'</nowiki>   および  b = G b<nowiki>'</nowiki>   (ただし a,b は互いに素)
 
 
a・b = (G a<nowiki>'</nowiki>)・(G b<nowiki>'</nowiki>) = G G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki> = G (G a<nowiki>'</nowiki> b<nowiki>'</nowiki>) =GL
 
より
:a・b = GL
が証明される。