「有限群論序論」の版間の差分

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今、代数構造(''G'',·)があり、''G''には、単位元''e'' ∈ ''G''が定義されているとする。
 
ある''x'' &isin; ''G''に対する逆元''x''<sup>-&minus;1</sup>とは、
''x'' &middot; ''x''<sup>-&minus;1</sup> = ''x''<sup>-&minus;1</sup> &middot; ''x'' = ''e''
となるような、''x''<sup>-&minus;1</sup> &isin; ''G''のことである。
 
逆元は、常にあるとは限らない。逆元が存在する元と存在しない元がともに混在している代数構造も考えられる。
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====一部だけ逆元が存在する例====
一部だけ逆元が存在する例は、上記のように簡単には作れない。
例えば、自然数の集合'''N'''、足し算を+とする。仮に、代数構造('''N'''&cup;{0,-&minus;1,-&minus;2},+)があったとしよう。
 
ただし、-&minus;1,-&minus;2は、1,2の逆元とする。すなわち、1+(-&minus;1)=0, 2+(-&minus;2) =0が成り立つものとする。
 
こうすれば、一見すると、一部だけ逆元が存在するように見える。しかし、(-&minus;1)+(-&minus;2)という演算の結果はどうなるのだろうか?代数構造は、演算の結果が、必ず、元の集合の中に入っていなければならなかった。すなわち、
 
(-&minus;1)+(-&minus;2)&isin; '''N''' &cup; {0,-&minus;1,-&minus;2}
 
でなければならなかったのだが、(-&minus;1)+(-&minus;2)=(-&minus;3)と、(-&minus;1)+(-&minus;2)が、3の逆元であることが、(1+2)+((-&minus;1)+(-&minus;2))より、わかってしまう。3の逆元は、'''N'''&cup;{0,-&minus;1,-&minus;2}では定義してなかったから、-&minus;3&notin; '''N'''&cup;{0,-&minus;1,-&minus;2}であるはず。これは、矛盾。
 
結局、背理法より、('''N'''&cup;{0,-&minus;1,-&minus;2},+)は代数構造ではないという結果が出てしまう。このように、('''N'''&cup;{0},+)の一部だけ、逆元を作ろうと思うと、結局、任意のm &isin; '''N'''に対して、逆元を作らなければ、代数構造にならなくなってしまう。
 
しかし、簡単には思いつかないだけで、一部の元のみについて、逆元が存在するような代数構造は、いくらでもある。