「経済学基礎」の版間の差分

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貨幣の流通速度
限界貯蓄性向の乗数効果
333 行
である。
 
 
* 乗数効果
 
 
ところで、あなたが消費して支払ったカネは、あなた以外の誰か(仮にBさんとしよう)の収入になるわけだ。そのBさんもまた、消費して別の誰か(仮にCさん)に支払うわけだ。
 
Cさんもまた、別のDさんに支払うわけだ。
 
こうして、連鎖的に、消費は別の誰かの収入になるので、その別の誰かの消費を引き起こす。
 
 
で、このことを先の限界消費性向を結びつける。
 
 
単純計算のため、Aさんの年収を1000万円としよう。また、説明の単純化のため、Aさんの消費相手はBさんだけ、Bさんの消費相手はCさんだけ、Cさんの消費相手はDさんだけ、・・・・としよう。
すると、つまり、
:Aさんは 1000万円 の収入を手にしたので MPC × 1000万円 の消費をすることになる。
:Bさんは MPC ×1000万円 の収入を手にしたので MPC<sup>2</sup> × 1000万円 の消費をすることになる。
:Cさんは MPC<sup>2</sup> ×1000万円 の収入を手にしたので MPC<sup>3</sup> × 1000万円 の消費をすることになる。
:Dさんは MPC<sup>3</sup> ×1000万円 の収入を手にしたので MPC<sup>4</sup> × 1000万円 の消費をすることになる。
 
 
 
まあ、実際の経済は、けっして、たった1人が消費相手なことはないが、しかし上述の計算のように、消費は別の消費を引き起こす。
 
よって、最初の収入額(例では1000万円)は、一国全体でみれば最終的に、
:<math> MPC + MPC^2 + MPC^3 + MPC^4 + \cdots + + MPC^n + \cdots </math>
倍の消費になる。
 
これは等比数列の級数の和である。
 
そして、MPCは1未満であるので(収入以上には消費できないので1以下。収束させるため 1未満 とする。また国民全体が収入全額を使いきることは統計的に起きてない)、この等比数列は収束する。
 
そして、等比級数の和の公式より、この等比数列の合計値は
:<math> MPC + MPC^2 + MPC^3 + MPC^4 + \cdots + + MPC^n + \cdots = \frac{1}{1-MPC} </math>
 
となる。
 
 
 
たとえば、消費性向が0.9なら、1-MPCは0.1なので、よって<math> \frac{1}{1-MPC} </math> は10になる。
 
この倍率のぶんだけ、なんらかの投資の効果どは増加する、と考えられている。
 
 
ところで、
:1-MPC
は貯蓄性向である(正確には限界貯蓄性向)。
 
限界貯蓄性向は MPS であらわす。
 
なので、
:<math> \frac{1}{1-MPC} = \frac{1}{MPS} </math>
でもある。
 
 
* 貯金は損か?
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 信用創造
! 銀行  !! 預金 !! 支払い準備金 !! 貸し付け金
|-
! A銀行
|  100万円 ||  20万円 || 80万円 
|-
! B銀行
|  80万円 ||  16万円   || 64万円
|-
! C銀行
|  64 ||  12.8   || 51.2
|-
! D銀行
|  51.2 ||  10.24   || 40.96
|-
! 以下省略
|   ||     ||
|-
! 合計
|  500万円 ||  100万円   || 400万円
|-
|}
 
ところで、アメリカ経済教科書では指摘されてないが、上述のように書くと貯金が一国にとって損なように思えるが、しかし実際は違い、家計の銀行への預貯金は銀行にとっての貸出資金の増加であり、その結果として金融市場に流れる資金量が増えて、別の銀行の資金量も増えるので、銀行が貸し出すので、右の表のように、消費せず銀行預金にしても、結果的に社会では、もとのカネの何倍ものカネが動くことになり、この銀行預金のメカニズムを「信用創造」という。(※ 日本では'''高校'''の『政治経済』で習う)。
 
:※ ネットで経済評論をする大人のなかには、ときどき、(高校レベルの)信用創造を無視して、「消費性向を高めれば景気が良くなる」とかの論絶を主張する、アタマの悪い大人が日本には多い。まあ、タンス預金なら、一国にとっては損かもしれないが。