「経済学基礎」の版間の差分

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貨幣数量説 MV = PY の従来解釈への批判の裏付けになる参考文献が見つかったので追記。中経出版『図解 使えるマクロ経済学』菅原晃
マーシャルのk
445 行
計算を単純にするため、付加価値を製品価格に比例するとして、同じPで表してしまおう。(※ この仮定は、経済学教科書ではとられれてない非標準な仮定だが、しかしこの仮定でないと、後述するインフレとの関係性を、厳密には導出できない。)
 
:※ 菅原晃『使えるマクロ経済学』、中経出版、2014年10月14日 第1刷発行,203ページ、
: では、『貨幣数量説』の公式として、
::「供給: 貨幣量×世の中を回った回数 = 需要: 物価×取引量」
456 行
また、厳密ではないが、シグマ記号 Σ を省略して
:MV = PY
と、経済学教科書では書かれる。(なお、この形の公式を「数量方程式」(quantity equation) という。また、この公式であらわされる学説を「貨幣数量説」という場合もある。)
 
右辺に価格が入っているので、物価のインフレまたはデフレの解析に、この貨幣の流通速度の理論が使えそうだと経済学では思われている(というか、むしろ当然の前提になっている。最初から MV = PY の式を紹介して、あとから PY=GDP「P×Y は GDPに等しい」と説明するのが普通のアメリカ経済学の教科書のスタイル)。
 
 
490 行
:たしかに、20世紀後半では、アメリカや英仏などの西側(資本主義陣営の)ヨーロッパ諸国、日本などの経済の歴史をふりかえれば、それを当時の南半球国家や中国など(当時の)発展途上国と比べれば、先進工業国は物価は高いしGDPも高くほぼ比例的でり、発展途上国は物価も低ければGDPも低かったのでやはり比例的であった、というような傾向があった。
:また、一般的に経済活動が活発なときはインフレになりやすいという経験則が言われているので、取引量はおおむねインフレに比例的であるとする仮定も、妥当性があるだろう。
 
なお、教科書・文献によっては、PのほうをGDPデフレーターにして、YのほうをGDPにする文献も場合もある。だが、本書wikibooksで上述したように、そのような差異は本質的ではない、
 
数学的かつ経済学的にも重要なことは、まずインフレとかそういう事は一切無視して単に
:MV = 物価×取引量 ∝ 名目GDP
という関係式を得ることと、次にインフレを考慮することで貨幣数量説の公式に「物価∝実質GDP」および「取引量∝インフレ率」の関係を代入して
:MV = 物価×取引量 ∝ 実質GDP × インフレ率
という関係式とを得て、それを経済モデルに合うように連立させることである。
 
 
=== 派生敵な、いくつかの学説 ===
==== マーシャルのk ====
:※ アメリカの大学の入門経済学では書かれない場合が多いが、関連が深いので紹介だけ。
 
貨幣数量説の公式
:<math> MV = \frac{1}{V} \times PY </math>
は、式変形すれば、
:<math> M = \frac{1}{V} \times PY </math>
となる。
 
さて、
:<math> k = \frac{1}{V} </math>
と マーシャル(人名)という学者が置いた。
 
また、どこかの経済学者が
:<math> M = k PY </math>
という説を提唱した(ケンブリッジ方程式)。
 
統計的には k は定数ではない。(※ 参考文献: 中谷巌『入門マクロ経済学 第5版』、日本評論社、2007年3月30日 第5版 第1刷 発行、192ページ)
 
たとえば中谷は参考文献『入門マクロ経済学 第5版』で、日本では1970年代はマーシャルのkが 0.7 程度だったが、しだいに増加していき、2004年には k は 1.4 程度であるとグラフで図示している。
 
 
:※ 福田慎一・照山博司『マクロ経済学・入門』(、有斐閣、2016年3月30日 第5版 第1刷 発行、141ページ)では、文中に「右辺の定数k」とある。しかし、中谷の文献で紹介されるように、統計的にはkは定数ではない。数学的にはkは、「右辺の'''係数'''」である。
 
ちなみに、マーシャルのk の性質として、その定義式 k=1/V のとおり、貨幣の交換が少なくなるほど、kが増大する。
 
 
なので、いわゆる「デフレ経済」と言われる日本の1990年以降の時代(平成初期の不動産バブル崩壊の以降の時代)でマーシャルのkが増加するのは常識と一致するのだが、しかし中谷の文献のグラフを見ると、1970年代も1980年代でもマーシャルのkは増加傾向であるのが、グラフから読み取れる。(しかし中谷は、不動産バブル崩壊以前のマーシャルのkの増大には注意を払ってない。)
 
 
ところで PY(=MV) は名目GDPでもあった。
また、貨幣量 M は、その国の貨幣の発行当局(中央銀行など)がおおむね管理できる。
 
なので、
:M = k 名目GDP
のような式が成り立つハズである。(※ 参考文献: 菅原晃『使えるマクロ経済学』、中経出版、2014年10月14日 第1刷発行,203ページ。 この文献では「貨幣量=GDP」という図とともに「k%ルールが有効!」という文言が図中にある。 )
 
 
このkを、経済政策の目安にするのが良いだろうという学説があるらしく、フリードマンがそのような学説を提唱したらしい(※ 菅原の文献を読んだ限り、そういう印象を受けた。)。