「経済学基礎」の版間の差分

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== 「金持ちはケチ」は本当か?(限界消費性向のお話) ==
=== 限界消費性向 ===
よく、「金持ちはケチ」だと、言われることがある。
 
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そして、この限界消費性向を実際にアメリカで測定したところ、よほどの大富豪でないかぎり、限界消費性向の実測値は0.8~0.9で、所得の大小にかかわらず、よく一致することが分かった。
 
(※ 入門の範囲外: )経済学者クズネッツは1869~1938年の統計を調べ、所得によらず消費性向が 0.9 であることを実証した。
 
つまり、縦軸に消費額をとり、横軸に所得(可処分所得)をとると、傾き0.8~0.9の直線になる。(『スティグリッツ入門経済学 第4版』、薮下史郎ほか訳、東洋経済、2012念4月5日 発行、)(クルーグマン『マクロ経済学』、大山道弘ほか訳、東洋経済、2009年4月2日発行、315ページ)
 
消費額をCとして、所得をYとすれば、つまり
:C≒0.9Y
である。(クズネッツの消費関数) ※ 入門の範囲外
 
限界消費性向が0.89という事は、単純計算すると、所得が2倍になったら、消費支出はおよそ1.6倍(=0.8×2)になるという事である。
 
もちろん、正比例ではないので(つまり、所得が2倍になっても支出が2倍にならないので)、そういう意味では「金持ちはケチ」かもしれない。
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また、各国の消費動向の分析の結果、所得にかかわらず一定額の消費をする。(たとえば、食費など、誰でも消費が必要である。)
 
=== (ケインズ型の)消費関数 ===
この、所得によらずにする消費のことを独立消費(antonomous consumption)という。
上述のクズネッツの消費関数とは別に、もうひとつ、別の消費の関数が知られている。
 
さて、日本など、いくつかの国で、所得が増えるほど消費の割合が低くなるという現象が知られており、これもまた統計的に実証されている。
 
このような事実から、消費関数 consumption function は、次のような式であらわされる。
 
ケインズ型の消費関数とは、』次のような形の消費関数である。
:c = a + MPC × Yd
 
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:Yd : 可処分所得
である。
 
なお、収入以上に消費はできないのが一般的なので MPC<1 である(MPCは1未満ということ)。
 
 
なお、式中のaのぶぶん、つまり、所得によらずにする消費のことを独立消費(antonomous consumption)というが、日本では基礎消費ともいう(※: 『基礎消費』の参考文献: 福田慎一・照山博司『マクロ経済学・入門 第5版』、有斐閣、2016年3月30日 第5版 第1刷 発行,32ページ)
 
 
:(wikibooks追記:) ケインズ型の消費関数の式の形だけを見れば、仮にa=0 かつ MPC=0.9 とすればクズネッツの消費関数 C≒0.9Y と等しくなるが、しかし一般的に日本やいくつかの国で知られる、高所得者ほど消費が少なくなるという現象を説明したい場合にケインズ型の消費関数を使うので、あまりアメリカでも日本でも大学教科書では、ケインズ型の消費関数をクズネッツ型の消費関数に含めるような論理展開はしない。
 
:しかし、数式だけを見れば、たしかに c = a + MPC × Yd の式でも、a=0とすればクズネッツ型の消費関数 C≒0.9Y も説明できるので、そこでいくつかのアメリカの大学教科書では、「ケインズ」や「クズネッツ」の名前はふせて、単に 「c = a + MPC × Yd」の式だけを紹介するような教育法もある。
 
 
中谷巌『マクロ経済学入門 <第2版>』(日本経済新聞社、2007年1月15日、2版1刷、32ページ)は、1992年から1997年の日本の消費関数を
:C=76+0.61Y
 
としている。
 
 
日本の多くの経済学者・経済評論家たち(福田・照山や中谷など)は、このクズネッツ型の消費関数と、ケインズ型の消費関数の、けっして無視できない差異の原因を、長期スケール(クズネッツ型)と短期スケール(ケインズ型)の差異が原因だと考えており、つまり
:クズネッツ型の消費関数は長期的な消費関数に当てはまるものであり、
:ケインズ型の消費関数は短期的な消費関数に当てはまるものであり、
:前提にしている長期と短期のスケールの違いが差異の原因である、
と経済学者たちは考えている。