「有機化学/有機化学の化学結合」の版間の差分

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:なお野依らの この定義のため、野依らの文献では、ナフタレンのようにベンゼン環が2個しかない場合は、片方だけ〇を書かれている。
:なお、野依らの著書『大学院 有機化学』では、クラール構造の丸印の記法は、破線による青色の丸印である。(おそらく、ロビンソン構造との区別のためだろうか(著者に聞いたわけではないので未確認の単なる推測)。)
 
 
{{コラム|クラールの仮説の矢印|
なお、細矢治夫の著書『はじめての構造化学』を読むと、野依らの著書には書かれてないクラール独自の記法が書いてある。
 
クラールは、相対的に安定している甲に丸を描いた(上記の図では、破線部で丸を描かれた甲に相当)他に、加えて周囲の破線部の無い甲(相対的に不安定な甲)への矢印を描いている。安定甲から不安定甲への矢印が、クラール独自の記法では、描かれているらしい。
 
 
どうやら、クラールは、複数ベンゼン化合物の隣接した安定甲と不安定甲との間に相互作用を考えているらしい。
 
 
しかし、野依らは、クラールの名前は紹介し(て、おそらくは敬意を払い)つつも、この矢印は紹介してない。つまり野依らは、この矢印の学説を切り捨てている(もしくは、クラール以外の欧米の学者が矢印の学説を切り捨てており、野依らはそれらの国際評価に従って、そのまま紹介しただけか)。べつに野依らへの批判ではなくて、化学の理論構築はこのくらい慎重に学会内での相互検証をしなければならない、という事である。
 
 
なお、細矢治夫は離散数学の組み合わせ論を化学に導入しようと目指している、この分野の日本でのパイオニア的な人物である。だが、たといそのような立派な人の紹介するクラールの学説であってすら、けっして学説を鵜呑みにしてはいけない、というほどまで慎重であるべきが有機化学の取るべき態度であろう。
 
2010年以降の今でこそ、離散数学は大学1~2年で多くの理系の学科で教育するようになったが、1990年は違っており、あまり重視されなかったし、それどころか、「あんなの、大学で教える価値は無い。」「高校レベルの稚拙な数学だ。」「数学でなくて単なるパズルの類だ」みたいな批判すら、されている時代もあった(数学者の秋山仁の自伝などで、こういう過去の状況がよく紹介されている)。
 
さて、化学に戻ると、つまち細谷はこのような時代に、偏見にとらわれずに離散数学の化学での活用の開拓を目指した先駆的な人物であるという事である。しかし、たとえそのような立派ん人物の紹介する学説ですら、証明しきれてないと認識されている矢印の学説を野依らは切り捨てている、という事である。
 
ここまで(野依らのように)慎重に考えつつ、それでもあえて(細谷のように)新しいことに挑戦していくのが有機化学の理論構築のあり方である。
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