「高等学校物理/物理I/波」の版間の差分

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"いろいろな波"の項に地震波などの解説を追加しました。
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<small>[[高等学校理科 物理I]] &gt; 波</small>
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本項は[[高等学校理科 物理I]]の波の解説です。
 
==波==
 
後に[[高等学校理科 物理I]]では[[w:力学]]の法則を扱う。力学とはある物体に何らかの力をかけたときに、その物体がどのように動作するかを記述する方法である。力学の法則は物体の動作を具体的に記述する方法として有用であるが、実際にはその法則だけを用いて身の回りの現象を説明することは困難である。例えば、水面に物を投げ込んだときに[[w:波]]が水面を伝搬していく様子は、基本的には力学の法則に従って記述されるものである。これは、このときに実際に動作しているものが水の分子であり、これは力学で扱われる物体([[w:質点]])として扱うことができるからである。しかし、後に扱うことだが、力学で扱う法則は個々の水分子の相互作用に対して適用できるものであり、それらが非常にたくさん集まった場合に粒子全体の運動を見るために、適用できるものではない。実際に気体のように比較的密度の小さい物質であっても、それらは1リットルあたりに[[w:アボガドロ数]]程度の粒子を含むのである。このように多くの粒子を扱うことは、例え個々の粒子の運動の様子が知られていたとしても実際には困難である。
== 波の性質 ==
*注意
正確には常温常圧で、22.4リットルにつき1[[w:モル]]の気体分子が含まれる。[[高等学校化学]]を参照。
 
幸いにも、極めて多くの質点を含む運動の様子が、少数のパラメータを用いて記述できる場合がある。ここで扱う波の運動はそのような例の一つであり、多くの粒子の運動を近似的に記述する方法として有効である。もちろん実際には非常に多くの自由度を含む運動が少数のパラメータで表されるのは特別な場合に限られ、実際に波として運動を記述することが可能であるかを議論することは大切である。
 
== =いろいろな波 ===
 
ここでは実際に日常生活において見られる波の例をあげる。まず、波を"性質の似た物体が数多く集まっているときに、お互いの間の力学的な相互作用を通じて、互いの位置を大きく動かすこと無く、本来個々の物体がある位置からの[[w:変移]]を伝搬させていく現象"と定める。例えば、一般的な[[w:固体]]は何らかの分子がお互いに結合することで固体としての形を保っているが、これは波を伝搬させるための状況を満たしている。つまり、固体を作る分子は互いに似た性質を持っていると期待され、それらの分子が固体を成している相互作用自体を、波の伝搬に使われる相互作用として用いることができるからである。実際に例えば金属はある一点で起こった振動を広く伝える性質があり、その伝搬はまさに波の現象そのものである。
*実験
金属の棒を持って来て片方を軽く叩いてみる。このとき、反対側に振動が伝わってくることを確かめる。
 
実際には、この振動には2種類が存在する。まず一方は、振動が伝搬する方向と各点の粒子の変移の方向が一致している場合であり、もう一方は振動が伝搬する方向と各点の変移が垂直である場合である。これらの波は、変移の波の伝搬方向に対する向きから[[w:縦波]]、[[w:横波]]と呼ばれる。一般には固体中を伝搬する縦波と横波の速度は、互いに異なっている。
 
固体を伝搬する波の例として[[w:地震]]により生じる振動伝搬があげられる。この波は[[w:地震波]]と呼ばれ、その伝搬は固体としての地面そのものだけではなく、地面の上にある建造物などにも激しい変移を与える。振動の衝撃に耐え切れない建造物は[[w:全壊]]、[[w:半壊]]などの被害を受けるので、あらかじめ地震に備えた対策をしておくことが重要である。地震波にも縦波と横波があり、それらはそれぞれ[[w:P波]]と[[w:S波]]と呼ばれる。一般にP波はS波よりも速度が大きいが、地面の上に大して大きな振動を与えるのはS波の方であるので、P波と思われる波を感じたら後に来る振動に備えて対処するのがよい。
 
実際には固体中の振動伝搬以外にも、波が関わる現象はいくつかある。例えば水の中で振動を起こしても、その振動はある程度水中を伝わっていく。これは、水や一般的な液体を構成する分子も、固体の場合程ではないにせよ、お互いに相互作用を持っているからである。実際には気体のように固体や液体と比べて密度が非常に低い物体でも、それを構成する各分子はお互いに相互作用を持っており、その振動は気体分子間の相互作用を通じて伝搬していく。この振動は[[w:音]]となって我々の耳に届く。実際には我々が耳にする音は、気体の振動を通して伝搬して来た波として解釈できる。気体中を伝搬する音は縦波であることが知られている。これは相互作用の性質上、音は気体中の各点に生じる[[w:密度]]の揺らぎの伝搬として解釈されるからである。
 
音が気体の振動として我々の耳に届いているなら、固体を介して振動が伝搬して来たときには、その振動は気体の振動を介して伝搬してきた振動よりも明瞭であると考えられる。[[w:糸電話]]はその例で話者の声は糸を通して伝搬するため、遠距離でも割合明瞭に音を聞き取ることができる。また、音を媒介する気体が少ない宇宙空間では通常の方法で会話を行うことはできず、ヘルメットとヘルメットの振動を介して会話を行う必要がある。(実際の例 )
 
我々がよく見る波として、水面に生じる波があるが、この波はこれまでにあげた水中の振動伝搬とは異なる例である。実際には水面に生じる波は重力波と呼ばれ、([[w:重力波(流体力学)]]を参照)その速度は波が伝搬する水の深さに関連する。実際には水が浅くなるほど波の速度は下がり、波高は増すことが知られている。[[w:津波]]は典型的な重力波でありその高さは海岸近くでは遠方にあるときと比べて非常に大きくなり得る。(実際の例 )そのため、海の近くにいるときに地震にあったときには、すぐに高いところに避難することが重要である。
 
=== 波の性質 ===
例えば海の波のように、ある物体を媒介にして遠くにエネルギーに伝えて行く現象を'''波'''という。
波を伝える物質を'''媒質'''という。海の波の例では、媒質は海水である。
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となる。
 
== いろいろな波 ==
波には、地震波、水波、光、音などがある。
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%それぞれの性質は大学で詳しく学ぶ。
%実際には筆者は物理専攻だが地震波と水波にはあまりくわしくない。
%地球物理の人間の方が詳しいだろう。
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波は縦波、横波、表面波などに分けられる。
 
=== 音 ===
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2.99792458 &times; 10<sup>8</sup> [m/s]
である。
<!-- 光速の測定の 実験はかなり難しく、歴史的には 木星(?)の動きを観測することで最初に得られた。 -->
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%現代的にはレーザーの干渉を使うことで
%光が通ったコースによって干渉の仕方が
%変わることを見るのがよいと思う。
 
%私事になるが、筆者は大学3年の頃この方法で光速を測定した。
%結果は 1.4(?) <math>\times</math> <math>10^8</math> [m/sec] となりかなりずれた。
-->
 
==== 光の回折と干渉 ====