「有限群論序論」の版間の差分

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380 行
 
'''例''' ''G''を位数''n''の巡回群、''H''を位数2の巡回群(生成元を''i''とする)とし、<math>\sigma:H \to \operatorname{Aut} G</math>を<math>\sigma(i)(x)=x^{-1} \ (x \in G)</math>で定めるとき、半直積<math>G \rtimes H</math>を'''正2面体群'''という。これは正''n''角形の回転と裏返しによって自分自身に写す写し方全体からなる群になっている。
 
== 完全系列 ==
群と準同型からなる列
:<math>\cdots \to G_{i-1} \xrightarrow{f_{i-1}} G_i \xrightarrow{f_{i}} G_{i+1} \to \cdots</math>
があり、
:すべての''i''について<math>\mathrm{Im} f_{i-1} = \mathrm{Ker} f_i</math>
が満たされるとき、この列は'''完全系列'''であるという。
 
最初と最後が単位元のみの群<math>\{e\}</math>であるような完全系列で、考える意味のある最も「短い」列はどのような列だろうか。
:<math>\{e\} \xrightarrow{f_1} G \xrightarrow{f_2} \{e\}</math>
が完全であるとする。このとき、<math>G=\mathrm{Ker} f_2=\mathrm{Im} f_1=\{e\}</math>であるから、''G''は単位元のみからなる群である。一方、
:<math>\{e\} \xrightarrow{f_1} G_1 \xrightarrow{f_2} G_2 \xrightarrow{f_3} \{e\}</math>
が完全であるとすると、<math>\mathrm{Ker} f_2=\mathrm{Im} f_1=\{e\}</math>なので<math>f_2</math>は単射、<math>\mathrm{Im} f_2=\mathrm{Ker} f_3=G_2</math>なので<math>f_2</math>は全射、よって<math>G_1 \cong G_2</math>である。
 
以上の例は自明であり、考えても面白くない。よって、非自明な完全系列で最も短いものは、5個の群からなる列
:<math>\{e\} \to G_1 \xrightarrow{f} G_2 \xrightarrow{g} G_3 \to \{e\}</math>
であろう。この5個の群からなる列が完全であるのは、<math>f</math>は単射、<math>g</math>は全射、<math>\mathrm{Im} f=\mathrm{Ker} g</math>が満たされるときである。このとき、この列を'''短完全系列'''という。短完全系列が存在するとき、群<math>G_2</math>を<math>G_3</math>の<math>G_1</math>による'''拡大'''という。短完全系列に対してさらに、<math>g \circ i</math>が恒等写像になるような単射<math>i:G_3 \to G_2</math>があるとき、この短完全系列は'''分裂'''するという。
 
前節でみた半直積は群の拡大の例であり、その短完全系列は分裂する。すなわち、次が成り立つ。
 
'''命題'''
群と準同型の列
:<math>\{e\} \to G \xrightarrow{\varphi} G \rtimes H \xrightarrow{\pi} H \to \{e\}</math>
は完全系列であり、この完全系列は分裂する。ただし、<math>\varphi(g)=(g,e),\pi(g,h)=h,i(h)=(e,h)</math>とする。
 
証明は定義を確認するだけである。
 
== 可解群と冪零群 ==