「高等学校物理/物理I/波」の版間の差分

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"いろいろな波"の項に地震波などの解説を追加しました。
正弦波の式などを追加しました。
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我々がよく見る波として、水面に生じる波があるが、この波はこれまでにあげた水中の振動伝搬とは異なる例である。実際には水面に生じる波は重力波と呼ばれ、([[w:重力波(流体力学)]]を参照)その速度は波が伝搬する水の深さに関連する。実際には水が浅くなるほど波の速度は下がり、波高は増すことが知られている。[[w:津波]]は典型的な重力波でありその高さは海岸近くでは遠方にあるときと比べて非常に大きくなり得る。(実際の例 )そのため、海の近くにいるときに地震にあったときには、すぐに高いところに避難することが重要である。
 
身近な波の例として、最後にあげるのが光である。既に[[中学校理科]]で光と音については似た性質があることが説明された。音と同様、光もまた波としての性質を持つ。これは、例えば後で述べる回折や、干渉などの現象が、光に対しても観察されることから明らかである。
=== 波の性質 ===
:光の干渉の図
例えば海の波のように、ある物体を媒介にして遠くにエネルギーに伝えて行く現象を'''波'''という。
一方、光はここまでにあげた波と異なった性質を持つことが知られている。実は、いままでの波と違って、光はこれを媒介する物質を持たない。例えば、音は気体を媒介として伝搬されるので、真空の宇宙を通過することはできない。一方、光は真空の宇宙ですら自由に通過することができる。これは、例えば太陽からの光が地球に届いて来ることから確かである。光の性質についてより詳しくは、下の発展の項を参照。
波を伝える物質を'''媒質'''という。海の波の例では、媒質は海水である。
また、振動が伝わる元となった点を'''波源'''という。
 
*発展 光の性質:波と粒子の二重性
媒質や媒質の上にある物体は波と共に進行することは無い。
既に述べたが、光は波の性質を持ちながら、それを媒介する物質を持たないという性質を持つ。これは一見矛盾して見える。実際にはこのことは光だけでなく、粒子の一般的な性質を知る上で、重要な事柄である。この矛盾の現代的な解釈は、光は波であると同時に一つの粒子としての性質を持っている(粒子としての性質を強調するとき、特に[[w:光子]]と呼ばれることがある)という事である。つまり、波であるから光が波の性質を持つのは当然であり、同時に粒子でもあるので媒介する物質を持たないことも当然であるというのが矛盾に対する答えである。この性質は波と粒子の[[w:二重性]]と呼ばれ、光子だけでなくあらゆる粒子に関して成立する事柄である。ここではこの性質について詳しく述べることはできない。詳細は、[[高等学校理科 物理II]]、[[量子力学]]などを参照。
波の上にある物体を観察してみる(例えば水面にボールを浮かべて波を起こし、ボールを観察してみる)と、周期的な上下運動をしているはずである。
ここで、ボールが一番高い点にある時刻から次に一番高い点に来るまでの時間''T''[s]を'''周期'''という。また、周期の逆数''f''[/s]を'''振動数'''という。振動数の単位には''Hz(ヘルツ)''を用いる。
 
=== =波の性質 ====
<math>f=\frac{1}{T}</math>
ここでは、波の性質とその記述法について一般的に扱う。これらは波を伝える物質がどんなものであっても、それが波である限り成立する性質である。
 
例えば海の波のように、ある物体を媒介にして遠くにエネルギーに伝えて行く現象を'''波'''という。波を伝える物質を'''媒質'''という。海の波の例では、媒質は海水である。また、振動が伝わる元となった点を'''波源'''という。媒質や媒質の上にある物体は波と共に進行することは無い。波の上にある物体を観察してみる(例えば水面にボールを浮かべて波を起こし、ボールを観察してみる)と、周期的な上下運動をしているはずである。
また、波の一番高い点を'''山'''、一番低い点を'''谷'''とよぶ。山から谷の高さの半分を'''振幅'''といい、山と次の山との間隔を'''波長'''という。
 
波は周期''T''[s]の間に波長''&lambda;''[m]分だけ進むので、速さ''v''[m/s]は次のようになる。
=====正弦波=====
 
一般に波は様々な形を取る。これは、波がある時刻にある地点で起こった振動を伝搬する現象であり、その地点で起こる現象の複雑さ次第で、波は様々な形となり得るからである。しかし、波の性質を議論する上では、波の形をある程度限った方が都合がいい。ここでは、波の形として[[w:正弦波]]を考える。波の形としては、他に[[w:矩形波]]、[[w:三角波]]などが基本的である。
 
正弦波に関わらず、周期的な波を与えるには媒介物質の1点に周期的な振動を与える必要がある。このときこの振動は物質間の相互作用を通じて、周りの物体に伝搬される。このとき波の形は周期的運動の種類で決まる。正弦波を発生させたいときには、周期的運動として正弦関数で与えられる振動を与えればよい。正弦関数は周期的な運動であるので、これは周期的な振動の一種である。ここでは簡単のため、媒介物質は1次元方向に広がっているものと仮定する。
:周期的な振動の図
このとき正弦波について成り立つ事柄について述べる。実際にはここで扱う事柄は周期的な波には常に当てはまるが、ここでは正弦波しか扱わない。周期的な波を考えるときには、波が媒介されて来るいずれかの点で振動の様子を観察すると、その点での振動はある時間が経過するごとに、同じ値に至ることがわかるはずである。ここで、同じ値が現れるまでの時間を、[[w:周期]]と呼ぶ。周期は時間経過であるので、単位はsecである。また、周期はしばしばTを用いて書かれる。
 
"T秒ごとに正弦波中の1点が現れる"が周期の定義であった。ここで、"1秒間にf回正弦波中の1点が現れる"によって[[w:振動数]]を定義する。振動数はしばしばfで書かれる。上の例では、T秒間に点が1度現れるのだから、1秒間には1/T回点が現れる。このことから、一般に正弦波については、
:<math>
f = \frac 1 T
</math>
が成り立つ。振動数の単位はHz(ヘルツ)が用いられるが、この単位は1/secと等しい。
 
ここで、物質中を振動が伝わる速度をvと置く。物質の性質によって異なる定数であり、振動の性質にはよらない。例えば、音が空気中を伝わる速度は音の高低に関わらず一定である。波が伝わる速度と波の周期が与えられたとき、波が1周期のうちに進む距離を計算することができる。これは、例えば正弦波では波のある1点(例えば最も振動が正の向きに大きいとき)間の距離に対応する。この距離を波の波長と呼ぶ。
:波長の図
波長は通常<math>\lambda</math>で表される。波長<math>\lambda</math>は振動が1周期内に進む距離なので、波の速度vと周期Tを用いて計算できる。一般に
:<math>
v = \frac \lambda T
</math>
が成り立つ。
 
最後に、(減衰が無ければ)波が与える振動の大きさは波源で起きた振動の大きさと等しい。ここで、振動の大きさを波の振幅と呼ぶ。振幅はしばしばAで書かれる。
 
ここまでである1点で生じた周期的な振動が持つ性質を見て来た。ここまでを用いて、振動が始まってからt秒後の波源からの距離xでの振動について記述することができる。位置x=0のとき、その振動は
:<math>
A \sin (2\pi \frac t T)
</math>
である。これは振動が周期Tの正弦振動であるので当然である。更に、この振動が速度vで広がることを考えると、点xでの式は
:<math>
A \sin (2\pi \frac 1 T(t - \frac x v))
</math>
となる。この式は地点xでは、振動が(x/v)だけ遅れて来ることを表している。この式は正弦波に関する一般的な式だが、<math>v = \frac \lambda T</math>の関係を用いると、この式は
:<math>
A \sin (2\pi (\frac t T - \frac x \lambda))
</math>
となる。また、上の式では時刻t=0で点x=0では振動が0だったと仮定しているが、実際にはその地点でちょうど正弦運動の最も高い部分や最も低い部分にいてもその波は正弦波となる。この分を取り入れるため、上の式に
:<math>
A \sin (2\pi(\frac t T - \frac x \lambda) + \delta)
</math>
のように定数(ここでは<math>\delta</math>)を入れることもある。ここで<math>\delta</math>は位相と呼ばれる。<math>\delta = \frac \pi 2</math>では、振動は正弦運動の最も高い部分から始まり、<math>\delta = \frac {3\pi} 2</math>や、<math>\delta = - \frac \pi 2</math>では最も低い位置から始まる。
 
 
*問題例
**問題
振幅2[m], 周期2[s], 波長0.5[m]で与えられる正弦波の式を述べよ。ただし位相は0としてよい。
**解答
:<math>
A \sin (2\pi (\frac t T - \frac x \lambda))
</math>
を使えばよい。答えは
:<math>
2 \sin (2\pi (\frac t 2 - \frac x {0.5}))
</math>
となる。
 
<math>v=\frac{\lambda}{T}=f\lambda</math>
 
=== 干渉 ===