「高等学校保健体育保健/精神の健康」の版間の差分

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精神病では、もし患者の死後に解剖で脳を解剖しても、残念ながら、精神病で無い患者の脳の解剖と比較しても、精神病患者の解剖した脳には異常が何も見つけられないのが現状です。
 
このため、ガンや心疾患などの身体的な病気などとは違い、精神病では解剖によって検証(なお医学用語で「剖検」(ぼうけん)と言います)することが困難、ほぼ不可能です。
 
 
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=== 心理学と精神医学違いなど ===
カウンセラーと、精神科医とは、職業が異なる。カウンセラーに医師免許は不要。
 
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さて、躁鬱(そううつ)などの症状が、単にその人個人の思想や知能の問題なのか、それとも脳の何かの神経伝達物質などの分泌異常といった生理学的な異常に起きているのか、あるいは無意識の記憶の問題なのか、実は診察するのは困難である。
 
よほどの知能障害でないかぎり、思想や知能に起因しているのか、それとも脳の生理異常に起因しているのかの困難であるようだ。
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:医学者B 「分泌異常である。なぜなら、そもそも『躁鬱病とは、神経伝達物質の異常によって起こされる、気分の過度な高揚と落ち込みの周期的な症状のことを言うからだ。よって、この躁うつ病の患者は『躁うつ病』である。」
 
こういう、前提と結論とが同じになっている循環的な理論(論理学の用語でこういう循環的な論理構成を「循環論」(じゅんかんろn)ん)といい、悪い論法とされています)は、矛盾こそ無いものの、科学などの実用では役立ちません。循環論は、英語ではトートロジー tautology といいます。
 
たとえば数学で、「もし代数Aと代数BとがA=Bの関係だと仮定した場合、よって結論は A=B である」といってるようなものであり、矛盾こそ無いですが、なんの役にも立っていない論法です。
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つまり、そもそも、「その患者は、本当に『躁うつ病』に分類すべきなのか?」という疑問があるわけですが、こういう問題点は、精神医学では、あまり教育されていないのが現状です。なぜなら、患者が本当に精神病かどうかの検証しようとすると、経済学や現代思想や教育学や文化人類学などの膨大な知識が必要になってしまい、残念ながら、医療の現場では、そこまで手間が回らないのが現状だからです。
 
このため、ある『患者』の精神不調が、本当は思想や知能の問題、未成年なら精神発達の問題であっても、分泌異常に分類されてしまう場合危険性もあり、よく(書籍などでも、既存の精神医学に反対する立場から)批判されています(「反精神医学」と言う)
 
 
日本にかぎらず欧米でも精神医療では「精神の不調を訴える患者には、とりあえず向精神薬をしばらく処方する」というような治療(?)も、されてしまっているのが現状である。(アメリカでは、まさにそれが問題視された。5歳児の児童に向精神薬という問題も、こういう「とりあえず投薬」が問題視されているワケだ(ただし、児童じしんが精神不調を訴えているワケではないが)。)
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ともかく、精神医療には、名前こそ「医学」「医療」ではあるが、実際には、人間心理や社会制度・社会問題などの、さまざまな知見も要求される。
 
=== 歴史 ===
おおまかに精神医学の学問の歴史を言うと、近代において、この分野の精神病理の発見を提唱したのは、医師のフロイトである。
 
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これはこれで、当時のキリスト教やヨーロッパ社会などの性欲表現に厳格な偏見の打破に役立ったかもしれず、つまり性欲の表現や女性の恋愛感情などに厳しいヨーロッパ社会の偏見を打破するの意義があったが、「だからといって、何でもかんでも性欲に結びつけるのは、いくら先駆者のフロイトさんといえども、やっぱ大雑把すぎるでしょう」という感じの評価が、現代の精神医学や心理学での主流のフロイト評価である。
 
:※ ヨーロッパの性欲への厳しさといっても昔の高校生には分からないだろうから例を挙げておくと、たとえばイギリスでは20世紀なかばごろまで、「ゲイ(男性の同性愛)は逮捕」であった。実際、イギリスの数学者のチューリング(この人はコンピュータの研究者でもある。男)などもイギリスで同性愛の容疑により逮捕されている。
 
:なおフロイトの国籍については、フロイトはオーストリア(ドイツの隣りあたりの位置の国)の医者。フロイトの生きてた時代の19世紀後半~20世紀前半は、ヨーロッパが帝国主義の戦争に明け暮れてたような時代であるので、現代とは倫理観が違うので、そのため性欲表現などは厳しく扱われていたのである。
 
さてフロイトへの評価については、21世紀の現代でこそフロイトの学説には「証拠が乏しい」と疑問視されているが、しかし残念ながら20世紀末ごろまでは、「欧米先進国の教科書に書いてあるから正しい。古典に書いてあるから正しい。」という感じのズサンな教育が大学などでも普及しており、フロイトの学説が真実として鵜吞みにされていた(なので、読者がもし古い本を読む場合には気をつけろ)。
 
 
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これはこれで、一見すると精神病差別に対する反・差別の勝利のようでメダタシのように見えるが、残念ながら20世紀後半ごろから今度は「精神の不調などは、何でもかんでも、脳の分泌異常のせいだ」という感じのズサンな診療が横行するようになっていった。(冒頭で例として挙げた、5歳児児童の向精神薬治療などは、まさにその例。)
 
 
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もっとも、この疑問点の指摘すらもまた、仮説に過ぎず、精神医療には不明なことも多い。
 
=== 精神医学で未解明なこと ===
精神医学がどの程度に不明なことが多いかというと、たとえば人類は、実験動物のネズミが(向精神薬の投薬などで)幻覚・幻聴を体験できるのかどうかすら、人類にいまだに知るすべは無い。<ref>『標準精神医学』、医学書院、第7版、22ページ</ref>
 
 
このように不明なことが多い精神病理であるが、しかし統合失調症の統計に限ると、どこの国でも人口当たりなどの発症率がおおむね一定しているという統計的な数値結果があるので、国の思想などの価値観は、統合失調症には影響がうすいだろう、と解釈されており、(統合失調症に限ると)器質などを要因とする学説を補強する統計結果となっている。
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=== 薬物療法と精神療法 ===
実際の精神病院などでの精神症の治療では、薬物による投与のほか、カウンセリングなどの精神療法が併用される。
 
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== 幻覚以外・人格以上以外の精神疾患 ==
== その他 ==
精神医療であつかわれる対象は、必ずしも幻覚だけでなくとも、また人格・性格に直接的な異常は無くても、記憶力の障害や、睡眠障害など、脳と関係のありそうな障害も「精神疾患」として分類される。
 
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:※ なおwikibooksでは、健康人の睡眠のメカニズムについては『[[検定外高校生物]]』に記してある。
 
 
== 思春期の精神疾患 ==
統計的には、10代後半の高校生や大学生くらいの時期に、統合失調症や 躁うつ病 などを発症しやすい人が、(小中学生などと比べると、)比較的に多いといわれています。(ここでいう「大学生」については、サラリーマン経験者などの社会人学生は除外する。高校の卒業後に大学進学するか、せいぜい2~3年の浪人で大学生になったような20歳前後の若者の場合。)
 
果たして、その若者の精神疾患の原因が、分泌異常のような生理学的・器質的なものなのか、それとも、いわゆる「5月病」のような環境変化によるものなのか、よほど極端な症例で無い限りは判別は困難ですが(精神医学の本では、分泌異常と決め付けているが、そんな決め付けは教科書を書くさいの学者の都合に過ぎず、実用の役には立たない)、ともかく統計的には、小中学校と比べて、高校生や大学生の時期は精神疾患を発症しやすい時期とされていますので、読者の皆さんは、自己の精神との付き合い方を考えていきましょう。
 
高卒で就職する人にとっては、「大学生」になれるなんて、うらやましいかもしれませんが。医大生むけの医学書を見ても、大学生のスチューデント・アパシー(いわゆる「五月病」)は記述されていても、高卒就職組のことなんて、まったく記述してもらっていません。