「高等学校保健体育保健/精神の健康」の版間の差分

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ただし、強制入院の患者の割合は少なく、入院患者の9050%以上は、患者本人から(家族ではなく患者本人から)の同意による任意入院である<ref>『標準精神医学』、医学書院、第7版、231ページ</ref>。残りの約40%は、患者の家族などからの要望による、医療保護入院である。患者本人の人権についての疑問点は残るが、しかし医療保護入院という制度が存在している
 
 
さて、よく、小説やらドラマ番組など創作物で描かれる精神疾患の入院については、作劇上の都合で刑法犯をした精神疾患患者の強制入院などの事例が描かれていたりするが、実際には任意入院または医療保護入院の件数のほうが遥かに多い。
 
 
なお、読者はここまで読むと、精神疾患での強制入院の患者が、おおむね刑法犯であるという実態が分かるだろう。
 
原理的には、医療保護入院の可能性もあるし、他にも「刑法犯をしてない段階であり、これから犯行しそうなので先に入院させた」のような場合も理論的にはありうるが、しかし実態は、はるかに、「すでに刑法犯をしてしまい、逮捕後の精神鑑定の結果、この容疑者は精神疾患であるとして判定された」のような人物のほうが多いだろう
 
そもそも、名目上は「医療保護入院」とは言うものの、もしかしたら実際には家族などに対する傷害などの刑法犯罪が発生している可能性もあり、名目が必ずしも実態を反映しているとは限らないことも考慮しておく必要がある。(本来なら、刑法犯の恐れがあるなら「措置入院」として強制入院させるのが法律的な運用としては正しいはずなのだが、しかし患者家族の「一族から犯罪者を出したくない」という感情などの事情もありうる。パチンコは賭博でなかったり、自衛隊は軍隊でないとか、ソープランドは売春ではなく浴場とか、日本は法律が必ずしも真実とは限らない場合もある。)
 
 
よく、啓蒙として「精神病への偏見は良くない」と言うが(医学書にもそう書かれている)、しかし精神病の強制入院患者は上述のように犯罪者であり、残念ながら犯罪を犯さない一般人と同程度の世間からの信用を強制入院患者にまで要求しようとするのは無理筋だろう。世間知らずの医者の理想論でしかない。
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そもそも強制入院(厳密には「措置入院」)という措置自体、医療がその患者の自己管理を「犯行しそうな患者」と疑っており、なのに強制入院患者を「偏見せずに、信用しろ」というのは無理筋である。
 
なお、退院については、自傷・他傷の恐れが無くなったと精神医療の指定医が判断したら、都道府県知事はその患者を退院させなければならないとされる。退院は医者だけではなく、行政の知事の責任という、外部関係者の責任が入っており、おそらくは医療の制度が暴走しないようにとの行政上の配慮だろうか。
 
 
なお、精神病院の閉鎖病棟に関しては、病院の運営への定期的な外部審査の制度が義務化されており、都道府県による外部審査が定期的に行われている。都道府県の行政上の指導にもし病院が従わない場合、罰則もあるとされる。このように、精神病院が、けっして牢獄(ろうごく)と化さないようにとの行政上の配慮もある。
 
 
このように書くと、入院の制度には不信・不満な点がいまいち多いように思われるかもしれないが、しかし歴史的には、精神疾患の患者の待遇は、かなりの改善をしたのである。
 
法律の歴史では、精神病院などの制度は日本では1900年ごろから登場したが(「精神病院法」など)、もともと、日本での精神疾患の患者の扱いは、ごく一部の例外を除いて、自宅に監禁するか(患者の家族に管理させる)、あるいは放ったらかしか、ごく一部の患者だけの入院だった。
 
医療資格や専門知識や治療・教育ノウハウなどを持たない素人の患者家族に管理させるのと比べたら、病院の医師に管理させるほうが、はるかにマシである。
 
21世紀の現在の日本の障碍者基本法は、法律上は障害を理由として差別の禁止を呼びかけている、実際の強制入院などの医療政策の方針は、上記のように、差別の国家による管理である。
 
 
いちおう、1900年代初期の当時の法律でも、精神病患者を不法に監禁しないように権利に配慮するような法律上の目的があったが、しかし財政上の問題もあり精神病院の建設はあまり進まず、患者の多くは自宅で監禁される状態だった<ref>『標準精神医学』、医学書院、第7版、229ページ</ref>。
 
さて、マスメディアでは1990年代ごろに心理学ブーム・精神医学ブームが起きたが(90年代当時の流行語「アダルトチルドレン」や、小説「24人のビリー・ミリガン」など)、実は精神病院・病棟の建設の件数では、もっと前の1960年代に精神病院などの建設ブームが民間の病院で起きている<ref>『標準精神医学』、医学書院、第7版、229ページ</ref>。
 
 
1980年代、日本の公立のある精神病院で、患者の虐待死とされる死亡事件が起こり、日本の精神医療は国際的な批判にさらされた。
 
このため、法改正がその後あいつぎ、かつての「精神衛生法」が「精神保健法」に名称が変わり、さらにその後、1990年代に「精神保健福祉法」に名称が変わり、そして2020年代の現代に「精神保健福祉法」のままの名称である。
 
== 幻覚以外・人格以上以外の精神疾患 ==