「集合論」の版間の差分

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特に空集合は任意の集合の部分集合なので、空集合からは任意の集合へ包含写像を考えることができる(実質的には何も定めていない写像だが、集合論的に考えることはできる、ということである)。これを特に空写像という。
 
==== 逆写像 ====
写像<math>f:X \to Y</math>と<math>g:Y \to X</math>があって、<math>g \circ f =id_X</math>かつ<math>f \circ g =id_Y</math>を満たすとき、gはfの'''逆写像''' (inverse mapping)であるといい、<math>f^{-1}</math>と書く。
 
'''命題''' 写像<math>f:X \to Y</math>に逆写像が存在することと、写像''f''が全単射であることは同値である。写像が全単射であることを証明するために、全射かつ単射であることを示すより、具体的に逆写像を構成してしまったほうが簡単な場合がしばしばある。
:(証明)''f''に逆写像<math>f^{-1}</math>が存在するとは、''Y''の任意の要素''y''に対してただ一つの''X''の元''x''が存在して<math>y=f(x)</math>を満たすことであり、これは''f''が全単射であることにほかならない。//
 
この命題があるため、写像が全単射であることを証明するために、全射かつ単射であることを示すより、具体的に逆写像を構成してしまったほうが簡単な場合がしばしばある。
 
より細かくみると、次が成り立つ。
 
'''命題'''<ref name="AC"> ''X''が空集合でないとき、写像<math>f:X \to Y</math>が単射であることは、<math>r \circ f=id_X</math>を満たす写像<math>r:Y \to X</math>(''f''の左逆写像、またはレトラクトという)が存在することと同値である。また、写像<math>f:X \to Y</math>が全射であることは、<math>f \circ s=id_Y</math>を満たす写像<math>s:Y \to X</math>(''f''の右逆写像、またはセクションという)が存在することと同値である。
:(証明)
:(単射性)''f''が単射のとき、<math>y \in Y</math>に対して<math>y=f(x)</math>を満たす''x''が存在すれば(ただ一つなので)その''x''を<math>r(y)</math>とし、<math>y=f(x)</math>を満たす''x''が存在しなければ適当な''X''の元<math>x_0</math>を<math>r(y)</math>とすることで写像''r''が定まり、この''r''は<math>r \circ f=id_X</math>を満たす。
:逆に、''f''に左逆写像''r''が存在するとき、<math>f(x)=f(x')</math>ならば<math>r(f(x))=r(f(x'))</math>であり、すなわち<math>x=x'</math>なので、''f''は単射であることがわかる。
:(全射性)''f''が全射のとき、<math>y \in Y</math>を任意にとると<math>y=f(x)</math>を満たす''x''が存在するのでその中から適当に一つを選び(ここで選択公理を用いる)それを<math>s(y)</math>とすることで写像''s''が定まり、この''s''は<math>f \circ s=id_Y</math>を満たす。
:逆に、''f''に右逆写像''s''が存在するとき、任意の<math>y \in Y</math>に対し<math>s(y) \in X</math>は<math>f(s(y))=y</math>を満たす''X''の元であるから、''f''は全射であることがわかる。//
 
==== 普遍性 ====
単射・全射については以下の命題も成り立つ。
 
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:(証明)<br /><math>y \in Y</math>を任意にとると、''f''が全射なので、<math>f(x)=y</math>なる<math>x \in X</math>がある。<math>g_1(f(x))=g_2(f(x))</math>なので、<math>g_1(y)=g_2(y)</math>である。よって、<math>g_1=g_2</math>である。
 
これらの命題は、単射や全射という概念を、集合の元という概念(もっといえば、集合という対象)を用いずに特徴づけているという点で重要な命題である。
 
=== 写像の制限 ===