「薬理学/抗炎症薬および関連薬」の版間の差分

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== ステロイド系抗炎症薬 ==
=== 概要 ===
:※ 未記述.
副腎皮質からステロイド構造のホルモンが何種類か分泌される事が知られており、
そのステロイド構造の副腎皮質ホルモンのことを総称して'''コルチコイド'''という。
:※ 「副腎皮質の」と言う意味の英語の形容詞を cortical という。なので、「コルチカルなステロイド」→「コルチコイド」という単純な命名である。
 
コルチコイドはホルモンであるので、そのホルモンを受けた体内の組織では、いろいろな反応が起きる。
 
コルチコイドの種類によって、分泌時・投与時における体内での反応が変わる。
 
コルチコイドのホルモンを受けた結果、体内が糖質を蓄える方向に向かうなら、そのホルモンを'''糖質コルチコイド'''<ref>『パートナー薬理学』、P377 </ref><ref>『パートナー薬理学』、P377 </ref>(glucocorticoids )または'''グルココルチコイド'''<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>という。
 
 
一方、コルチコイドのホルモンを受けた結果、体内がナトリウムを蓄える方向に向かうなら、鉱質コルチコイド(mineralcorticoid)という。
:※ 「糖質」と「鉱質」の発音が似ていて紛らわしいので、本wikiでは「鉱質」のほうを「ミネラルコルチコイド」と呼ぶことにする。一般的に、ステロイド薬では糖質のほうを使う機会が多いので。
 
 
なお、天然の糖質コルチコイドを含めて、糖質コルチコイドは一般的に、脂肪やタンパク質を異化することにより、糖質を貯留させる。
 
 
さて、糖質コルチコイドには、抗炎症作用がある。
 
ミネラルコルチコイドについては、副作用として電解質の貯留により全身性の浮腫が起きる。
 
 
糖質コルチコイドとミネラルコルチコイドは、反するものではなく、
 
両ホルモンとも、互いに、両方の性質を兼ね備えている。
 
 
たとえば天然の糖質コルチコイドである'''ヒドロコルチゾン'''(別名: コルチゾール cortisol )というコルチコイドは、ミネラルコルチコイドとしての性質も少々は兼ね備えている。
 
なので、抗炎症目的でもヒドロコルチゾンを投与すると、全身性の浮腫が副作用として起きる。なお、糖質コルチコイドにも副作用として糖尿病や、そのほかの色々な副作用がある(後述)。
 
副作用が不都合なので、糖質コルチコイドとミネラルコルチコイドを分離した薬剤を開発しようという試みが過去に行われたが、分離は失敗している<ref>『シンプル薬理学』、P218 </ref>。ある程度、副作用を抑制する事は可能だが<ref>『シンプル薬理学』、P218 </ref><ref>『標準薬理学』、P581 </ref>、しかし「分離できた」と言えるほどには、とうてい至っていない。
 
 
なので、薬剤開発では、なるべく糖質コルチコイドの性質をより増強した糖質コルチコイド系の薬剤、または、ミネラルコルチコイドの性質をより増強したミネラルコルチコイド系の薬剤、などのように得意分野をより増強する方向性での開発が進んでいった。
 
 
=== 糖質コルチコイド ===
天然のものは、経口投与が可能である。胃腸管から、よく吸収される。経口、注射、噴霧、吸入、塗布、坐薬などとして適用される<ref>『パートナー薬理学』、P377 </ref>。合成のものも、普通は同様に胃腸管でよく吸収される。
 
なお、天然のものも合成のものも、肝臓で速やかに<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>代謝分解される<ref>『NEW薬理学』、P217 </ref><ref>『標準薬理学』、P581 </ref>。
 
 
ともかく、コルチコイド薬剤の副作用は抑え切れていない製薬状況であるので、投薬量はなるべく最小限にすべきであるとされている<ref>『NEW薬理学』、P464 </ref>。
 
 
ヒヂロコルチゾンをプロトタイプとして、それを化学修飾することで、他のステロイド系抗炎症薬が開発されていき、などが開発されていった。
 
 
開発の順序は、歴史的には、
:(古い側) プレドニゾロン → トリアムノシン → デキサメタゾン (新しい側)
である。
 
上記の3つの薬剤では、後世に開発されたものほど(つまりデキサメタゾンは一番)副作用が比較的に弱い<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>とされている。
:※ ・・・と『標準薬理学』は(後世ほど副作用が弱いと)言ってるが、しかし他の医学書はその説を採用していない。
 
 
 
* 臨床適用
糖質コルチコイドは、気管支喘息にも効き、'''ベクロメタゾン'''が気管支喘息に使われる。
 
湿疹や感染<ref>『パートナー薬理学』、P377 </ref>などの炎症性<ref>『パートナー薬理学』、P377 </ref>皮膚疾患<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>、関節リウマチ、気管支喘息、膠原病、潰瘍性大腸炎、などに効く。
 
そのほか、副腎皮質ホルモンであるので、副腎皮質疾患の診断や治療などに使われる<ref>『NEW薬理学』、P217 </ref>。 (※ 詳しくは専門書を参照せよ。)
 
 
* 開発の詳細
ヒドロコルチゾンを基本薬として、ヒドロコルチゾンの1位<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>を二重結合にした<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>プレドニゾロンが開発された<ref>『NEW薬理学』、P217 </ref><ref>『標準薬理学』、P581 </ref>。
:※ 「1位」とか「2位」とか言うのは有機化学の用語。詳しくは有機化学の入門書を参照せよ。
:※ 以下、参考文献は、標準薬理学とNEW薬理学。引用ページは上の文の参照にあるページ数と同様なので省略。
 
そして、抗炎症作用は4倍になったが、ミネラルコルチコイド的な副作用はあまり改善されていなかった<ref>『NEW薬理学』、P217 </ref><ref>『標準薬理学』、P581 </ref>。
 
 
次に、'''トリアムノシノロン'''、'''ベタメタゾン'''、'''デキサメタゾン'''が開発され、それぞれ糖質コルチコイドの作用が増強された。
 
トリアムノシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾンは、糖質コルチコイドとしての作用が強く、なのでミネラルコルチコイド的な副作用(この薬剤の場合なら、ナトリウム貯留作用<ref>『標準薬理学』、P581 </ref>が弱い)は相対的に弱い。
:※ 医学書では、副作用が「極めて弱い」(標準薬理学)とか「無視できる」(NEW薬理学)とか言ってるが、それだと副作用と分離できないという、それらの医学書にある別の記述との整合性がとれないので、本wikiでは「相対的に弱い」という表現にした。
:※ たぶん、昔の医学会のお偉いさん(どうせ欧米)が「副作用が無い!」とか断言しちゃって、そのあと、やっぱり副作用が分離できない事が発覚して、でも悪しき権威主義の慣習とかで、医学者たちが不整合を放置してるんだろう。製薬研究には、お金が掛かるので、論理的な整合性よりも権威が重要な業界。
 
== 脚注 ==