「薬理学/生理活性物質と消化器作用薬」の版間の差分

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また、シメチジンはチトクロムP-450系(CYP)酵素を阻害するため、これらの酵素に関わっている他の薬剤との薬物相互作用に注意する必要がある。
 
== 胃腸薬消化性潰瘍 ==
胃や十二指腸の潰瘍のことを'''消化性潰瘍'''という。
胃潰瘍を治療するには、大まかに次の方針のいずれかになる。
 
 
健康な人間では、胃は、胃粘液による防御が、胃酸からの攻撃を防いでいるので、潰瘍などの障害が起きない。
 
胃潰瘍の原因は、
胃粘液による防御よりも、胃酸による攻撃の強さが優っているのが原因である。
 
なので、胃潰瘍を治療するには、胃酸による攻撃を弱めさせるか、胃粘液による防御を強めればいい。
 
また、胃を攻撃するのは酸だけでなく、ヘリコバクターピロリなどの感染症も胃を攻撃する。
 
なので、消化性潰瘍を治療するには、大まかに次の方針のいずれかになる。
:胃酸を減らすか、
:または、保護粘液を増やすか、
:pHを中性に近づける、
:細菌・ウイルス性の場合は除菌、
などの治療法が有効である
 
 
=== プロスタグランジンE2製剤 ===
プロスタグランジンE<sub>2</sub>により、保護粘液が分泌されるので、プロスタグランジン製剤の投与で治療できる。(※ また、逆にアスピリンなどの抗プロスタグランジ薬は、胃潰瘍を悪化させる副作用があるのが普通。)
 
また、ヒスタミン阻害により、胃酸の分泌が減るので、抗ヒスタミン薬が治療になる。
 
 
=== 制酸薬 ===
胃酸のPHそのものを直接に中和する薬剤のことを制酸薬という。たとえば、炭酸水素ナトリウムが制酸薬である。
 
ただし、PHを中和するといっても、制酸薬はせいぜいPH5くらいにまで胃液のpHを上昇させる程度である<ref>『NEW薬理学』、P489</ref>。 ※ 正常な胃酸のpHは 1.0~1.5 程度。
下記の化学反応式により、胃酸の主成分である塩酸 HCl が中和される。
:※ 未記述.
 
炭酸水素ナトリウムの場合、下記の化学反応式により、胃酸の主成分である塩酸 HCl が中和される。
:HCl + NaHCO<sub>3</sub> → NaCl + CO<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>O
 
炭酸水素ナトリウムは速効性である。
 
制酸薬には、炭酸水素ナトリウムのほか、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム<ref>『パートナー薬理学』、P321</ref><ref>『はじめの一歩の薬理学』、P162</ref>などがある。
 
ただし連用すると、胃内のpHが低下している状態で酸分泌の持続する現象('''酸反跳''')が起き<ref>『NEW薬理学』、P489</ref><ref>『標準薬理学』、P538</ref>、休薬後に起きやすい<ref>『NEW薬理学』、P489</ref>。
 
 
=== H.ピロリ除菌約 ===
胃潰瘍の多くは、細菌のヘリコバクターピロリ菌による感染の結果であるという学説もある。
例外もあるが、ある実験では、胃洗浄によるH.ピロリ菌の除菌を行ったところ、
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ただし例外もあり、けっしてすべての胃潰瘍がピロリ菌によるものではない事も、事実である。
 
初期には、ビスマス製剤、メトロニダゾール、'''アモキシシリン'''の3剤併用が行われたが、副作用が強かった<ref>『NEW薬理学』、P492</ref>。
 
現代では、'''アモキシシリン'''、'''クラリスロマイシン'''に加えて、'''プロトンポンプ阻害薬'''を併用する'''3剤併用療法'''が一般的である。
 
== 脚注 ==