「薬理学/感染症の治療薬」の版間の差分

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=== 抗HIV薬 ===
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はRNAウイルスである。
 
HIVは変異しやすく、そのためワクチンの開発は困難なのが現状である<ref>『はじめの一歩の薬理学』、P288 </ref>。
 
また、化学療法的に抗ウイルス薬を使うにしても、1種類の抗ウイルス薬だと耐性菌がすぐに出現してしまうので、複数の抗ウイルス薬をうまく組み合わせて投与してい必要がある。
 
{{コラム||
カクテル薬剤的に、いろいろな治療薬を片っ端から併用するのって、よく重病(HIVだけでなくエボラ熱などでも)の治療薬開発で報道されますけど、
でも耐性ウイルス、耐性菌にはどうなんでしょうかね?
 
カクテルの濫用をしたら、すべての既存の治療薬が無効な耐性病原体を出現させるだけな気がするのですが・・・
 
しかしHIV治療薬では、こういう視点は無い。科学者は論文さえ書ければ、そして製薬会社は儲かれば、耐性ウイルスに既存の薬剤が無効になって凶悪化しても気にしないのかしら。
応急処置としてはカクテル的な「全部混ぜた」的な薬も必要でしょうけど、慢性治療としてはカクテルは耐性の問題が懸念されるような・・・。
 
耐性ウイルスを防ぎたいなら、カクテルではなくて定期的に治療薬を交代する方式にして、ウイルスに体内環境のゆさぶりを掛ける方式にすべきだと思うのですがね・・・(季節の夏→冬の変化による蚊の死滅や、政権交代による権力腐敗の適切みたいに、環境を変えていく事で下等な生物や下等な思想は滅ぼせる。)
:もちろん、薬理学書では、そんな方式の検証すら言及されてないから、本コラムは薬学者の能天気ぶりにキレてるから慇懃無礼なワケでして。
 
 
なぜこんな事を言うかというと、下記のようなマスコミ報道を思い出したから、である。1990年代あたりのマスコミ報道だが、HIV治療薬ではなく抗生物質の耐性菌の話題だが、
 
昔のお昼番組か夕方番組のワイドショーか何かのマスコミ報道で、今からすれば珍説・珍論の類だが「新型の抗生物質を積極的に使えば、耐性菌が減らせる。なのに耐性菌をおそれて、医者は新薬を使いたがらない」みたいな珍論を、当時はまじめそうな報道としてコメンテーターなどの発言として聞いたことがある。
 
もちろん、歴史的にはそんな薬理現象は起きず、つまり2020年代の現代でも医療では各種の耐性菌や体制ウイルスに悩まされている。耐性菌を生じさせない種類の抗生物質なんて、今のところ、薬理学では知られていない(少なくとも『標準薬理学』やら『NEW薬理学』『パートナー薬理学』などの薬理学書に書いてない)。
 
 
なので、例えば『はじめの一歩の薬理学』P288には、「ART開始後は、耐性ウイルスの出現を防ぐため、服薬率100%をめざす必要がある」とあるが、意味が分からない。そもそもウイルスって絶滅できるのか?
 
幼少時に皆が罹患する「みずぼうそう」ウイルスであるヘルペスウイルスですら、人類は体内ですら絶滅できてないのに?(体内でヘルペスウイルスが眠っているだけ。)なぜ、はるかに難しいだろうHIVを体内から絶滅できるつもりなのだろうか?
 
 
なので、例えばパートナ-薬理学,P491 には「HIV特異的プロテアーゼ阻害薬は、HIV耐性発現を阻害するため、ジダノシンなどの逆転写酵素阻害薬と併用して用いられている」という記述があるが、
意味が分からない。もしそのジダノシンとやらに耐性をもつHIVが出現したらどうするつもりか?なぜジダノシンに対する耐性出現は無視できるのか、なんの説明も無い。
 
 
しかし幸運なことに、HIV治療薬は、逆転写酵素阻害薬のうちの「ヌクレオシド系」だけに限定しても、
ラミブジン、アバカビル、テムホビル、エムトリシタビン、など最低4種類以上はある。
 
この他の原理の異なる別方式の治療薬でも、最低でも それぞれ3~4種類くらいの治療薬があるので、複数の原理の異なる方式の治療薬を併用しても、
それぞれ原理から治療薬を1個だけ選んでいれば、もし耐性ウイルスが出現しても、残りの未投与の治療薬で対応できる可能性がある。
 
まあ、国(製薬の本場のアメリカ合衆国は、植民地・日本の宗主国)からすれば、HIVは空気感染しないので、さっさと凶悪な耐性ウイルスを体内で出現させて患者には死んでもらったほうが安上がりなのでしょうね。
カクテル方式のほうが人件費も安く済んで、単純だし。なので、まともに耐性ウイルスの問題の論理的欠陥について研究されていないのでしょう。
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==== 逆転写酵素阻害薬 ====
逆転写酵素阻害薬は、ウイルスのRNA依存性DNAポリメラーゼを阻害することで、HIVのRNA複製やタンパク質複製などを阻害することにより、HIVの増殖を抑制する。
 
逆転写酵素阻害薬には、ヌクレオシド系(NRTI)と、非ヌクレオシド系(NNRTI)の二種に大別される。
 
ヌクレオシド系では、'''ジドブジン'''が代表的である。
そのほかヌクレオシド系では、ジダノシン、ラミブジン、エムトリシピン、アバカビル<ref>『NEW薬理学』、P542 </ref><ref>『パートナー薬理学』、P491 </ref>、などがある<ref>『標準薬理学』、P453 </ref><ref>『NEW薬理学』、P542 </ref><ref>『パートナー薬理学』、P491 </ref>。
 
 
非ヌクレオシド系では、エファビレンツ、ネビラビン、デラビレンツ、デラベルジン、エトラビリン、などがある<ref>『NEW薬理学』、P542 </ref>。
 
 
==== インテグラーゼ阻害薬 ====
インテグラーゼ阻害薬は、逆転写酵素により生成されたHIV由来のDNAが宿主のDNAに挿入されるのを防ぐ。
インテグラーゼ阻害薬には'''ラルテグラビル'''などがある。
 
:※ インテグラーゼ阻害薬は比較的に新しい方式らしく(『NEW薬理学』に、「インテグラ-ゼの阻害薬であるラツテグラビル(raltegravir)が承認された」という文言がある)、医学書ではよく、プロテアーゼ阻害薬の次の項目でインテグラーゼ阻害薬が書いてある。(「承認された」なんて、古い薬には使わないだろうし.) だが本wikiでは、機序の関連性を考えて、逆転写酵素阻害薬の次の単元としてインテグラーゼ阻害薬を紹介した。未来の教育への先読み予想である。予想が当たればいいが。
 
 
==== プロテアーゼ阻害薬 ====
HIVにかぎらず、多くのウイルスで<ref>『標準薬理学』、P454</ref>、プロテアーゼという酵素がウイルスにより産生され、mRNAで翻訳されたタンパク質を切断することで、ウイルスタンパク質が生産されている。
 
プロテアーゼ阻害薬はこの工程を阻害するので、ウイルスに有効である。
 
HIVに有効なプロテアーゼ阻害薬としては、'''リトナビル'''、インジナビル、サキナビル、ホスアンプレナビル、などがある。
 
 
==== CCR5受容体遮断薬 ====
HIVはT細胞に感染することで、免疫破壊をするので、感染者が免疫不全になる病気である。
 
という事はつまり、T細胞への感染を防ぐ事でも治療になるわけだ。
 
HIVはT細胞に感染する際、T細胞にあるケモカイン受容体CCR5<ref>『パートナー薬理学』、P492</ref><ref>『はじめの一歩の薬理学』、P289</ref> と相互作用をしている。
 
'''マラビロク'''という薬物が、このCCR5へのHIVの結合を防ぐことによりHIVを抑制する作用をもつ。
 
しかし、CCR5と相互作用しないで感染する種類のHIVもあるようであり、なので投与の前にCCR5指向性の有無の確認が必要である<ref>『はじめの一歩の薬理学』、P289</ref>。
 
== 脚注 ==