「民法第445条」の版間の差分

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[[法学]]>[[民事法]]>[[民法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第3編 債権 (コンメンタール民法)]]
 
==条文==
[[w:連帯債務者免除]]一人弁済をする資力ない者負担部分の分担免除等と求償権
;第445条
:[[w:連帯債務|者の一人に対して債務の免除がされ、 又は連帯債務者]]の一人が連帯免除を得ために時効が完成した場合において、他の連帯債務者は、そ一人の連帯債務者対し、[[w:弁済民法第442条|弁済第442条]]をする資力第1項ない者があるときは、債求償者は、その資力のない者が弁済行使することができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。
 
==解説=改正経緯===
2017年改正以前の条文は以下のとおり。
本条は、債権者が連帯債務者の1人に対し'''連帯の免除'''をした場合、債務者間の[[w:求償|求償]]債権の回収不能に関して債権者が負う責任について定める。[[民法第444条]]の特則。
 
([[w:連帯の免除]]と弁済をする資力のない者の負担部分の分担)
*連帯債務
:[[w:連帯債務|連帯債務者]]の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に[[w:弁済|弁済]]をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。
:連帯債務とは、数人の債務者が、同一内容の給付について、各自が独立に全部の給付をすべき債務を負担し、しかもそのうちの1人の給付があれば他の債務者も債務を免れる多数当事者の債務をいう([[民法第432条]])。
 
:以下旧条項に関する解説。
*連帯の免除
::本条は、債権者が連帯債務者の1人に対し'''連帯の免除'''をした場合、債務者間の[[w:求償|求償]]債権の回収不能に関して債権者が負う責任について定める。[[民法第444条]]の特則。
::連帯の免除とは、債権者が、連帯債務者の1人(又は数人)の債務を、負担部分までの分割債務とすることをいう(相対的連帯免除)。全額の弁済義務を免除するという点で一種の債務[[w:免除|免除]]であるから、債権者が連帯債務者の1人(又は数人)に対して一方的な[[w:意思表示|意思表示]]によってすることができる。
::*例えばA・B・Cの3人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合、債権者DがAに対して連帯の免除をしたとすると、AはDに対し20万円の分割債務を、B・CはDに対し従前どおり60万円の連帯債務を負うこととなる。この場合、Aが20万円の弁済をすると、B・Cの債務額も当然20万円減少する。
::*:なお、債権者が、すべての連帯債務者について連帯の免除をする場合(絶対的連帯免除)もあるが、この場合はすべての債務が分割債務となり、求償の問題は発生しないので、本条の対象ではない。
::*本条の適用結果
::*:一般に、連帯債務者Cが債権者Dに60万円全額を弁済したときは、Cは、他の連帯債務者A・Bに対して、それぞれ負担部分である20万円を求償することができる([[民法第442条]]1項)。Bが'''無資力'''であった場合、[[民法第444条]]本文に従えば、Cは、Aに対し、更に負担部分に応じて10万円の負担(求償額と合わせて30万円)を求めることができる。
::*:しかし、債権者Dが連帯債務者の1人であるAに連帯の免除をしていた場合、本条が適用される結果、CはAに対して20万円の求償しかできないかわりに、Cは、債権者Dに対して、Aが負担すべきであった10万円の返還を求めることができる。
::本条は、連帯の免除の意思表示の解釈規定であるから、これと異なる意思表示があれば、それに従う。
::改正前の妥当性には疑問が持たれており、債権者としては、通常、連帯債務者Bの一部が無資力の場合の負担まで自己が負担しようとする意思ではなく、A依然、連帯を免除した者に負担させる意思(又はB・C連帯を免除した者以外の連帯債務者に対し負担部分以上の請求をしない意思)であると解釈すべきであるとされていた(通説)。
 
==解説==
:例えばA・B・Cの3人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合、債権者DがAに対して連帯の免除をしたとすると、AはDに対し20万円の分割債務を、B・CはDに対し従前どおり60万円の連帯債務を負うこととなる。
2017年改正前は、以下の場合において、
 
*連帯債務者の一人に対して債務の免除
:この場合、Aが20万円の弁済をすると、B・Cの債務額も当然20万円減少する。
*連帯債務者の一人のために時効が完成
 
:なお、債権者が、すべての連帯債務者について連帯の免除をする場合(絶対的連帯免除)もあるが、この場合はすべての債務が分割債務となり、求償の問題は発生しないので、本条の対象ではない。
 
*本条の適用結果
:一般に、連帯債務者Cが債権者Dに60万円全額を弁済したときは、Cは、他の連帯債務者A・Bに対して、それぞれ負担部分である20万円を求償することができる([[民法第442条]]1項)。Bが'''無資力'''であった場合、[[民法第444条]]本文に従えば、Cは、Aに対し、更に負担部分に応じて10万円の負担(求償額と合わせて30万円)を求めることができる。
 
:しかし、債権者Dが連帯債務者の1人であるAに連帯の免除をしていた場合、本条が適用される結果、CはAに対して20万円の求償しかできないかわりに、Cは、債権者Dに対して、Aが負担すべきであった10万円の返還を求めることができる。
 
*意思表示の解釈規定
:本条は、連帯の免除の意思表示の解釈規定であるから、これと異なる意思表示があれば、それに従う。
 
すなわち、債務者が:連帯債務者の一人に対して債務の免除したとしても(又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても)、他の連帯債務者が、自己の財産の負担により、債務を消滅させた場合には、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、[[民法第442条|第442条]]第1項の求償権を行使することができる。
:本条の妥当性には疑問が持たれており、債権者としては、通常、連帯債務者Bが無資力の場合の負担まで自己が負担しようとする意思ではなく、Aに負担させる意思(又はB・Cに対し負担部分以上の請求をしない意思)であると解釈すべきであるとされる(通説)。
 
==参照条文==