「民法第466条」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Mtodo (トーク | 投稿記録)
編集の要約なし
編集の要約なし
17 行
 
==解説==
===1項===
民法では債権を財産権として捉え、原則として自由に譲渡できることを定めている。つまり債権は取引の対象となるのである。
 
29 行
*法律によって譲渡が禁止されている場合。扶養請求権([[民法第881条]])、記名式乗船切符([[商法第777条]])、災害補償を受ける権利([[労働基準法第83条]])などがある。
 
改正前は、第2項に「当事者間で債権譲渡禁止の特約(債権譲渡禁止特約)」を結んだ場合、債権譲渡を無効とし但し善意の第三者(判例により、善意につき重大な過失がないことまで拡張されていた)には対抗できないものとされていたが、2017年改正で、そのような場合にあっても譲渡は有効であると定められ、譲渡自由の例外ではなくなった。
 
===2項===
既述のとおり、「譲渡制限の意思表示(債権譲渡禁止特約)」を無効とした。
*次の場合を考える。中小企業G1が(指名)債権を取立業者G2に譲渡し、G1が大企業Sにその旨を通知した。G2がSに債務の履行を催告した。
このときその通知は債務者に対する債権譲渡の対抗要件([[民法第467条]])なのでSは本来債務の履行を拒絶することができない。しかし民法はG2が悪質な取立業者である場合を想定し、Sのために債権譲渡禁止特約を認めた。自分で取り立てない譲渡人から債権を譲り受ける者は悪質な取立業者であると考えられたからである。
 
譲渡禁止特約を認めるのは比較法的に珍しく、これが認められた趣旨は、明治初年民法制定以前は債権譲渡は債務者の同意を要するものとしていたこと、暴力組織などが債権を安く譲り受け『取立て屋』などが跋扈することを防止することにあるとされていたが、近年は、事務の煩雑さの抑制(預金債権が譲渡された場合、窓口での、譲渡確認が煩雑になる)、過誤払いの防止、相殺権の確保(銀行において、事業資金に関する継続的取引の多くは両建て取引)など、主に銀行などが債務者である場合に有利な制度になっており(例:[https://www.shokochukin.co.jp/individual/pdf/sogo_201305.pdf 商工中金の総合口座取引等規定集]には譲渡・質入れ禁止の条文がいくつも規定されている。)<ref>{{Cite book |和書 |author=星野英一 |year=1984 |title=民法概論Ⅲ |publisher=良書普及会 |pages=201-202 |isbn=4-656-30200-7}}</ref>、債務者たる預金者が零細な企業等である場合、それらの企業にとっては資金調達の手段を狭めるなどの批判もあった。また、その解釈について、従来は「前項の規定は適用されない」と規定されており債権譲渡が無効であると定められていたので、「譲渡禁止特約は誰に対しても対抗できて譲受人に譲渡無効を主張できる」という物権的効力説が通説だった。これに対して少数説だった債権的効力説は譲渡禁止特約が譲受人に対抗できず譲渡人に債務不履行責任を問えるとしていた。
しかし現在では国・地方公共団体、銀行や大企業という債務者によって中小企業との債務の管理がラクなので譲渡禁止特約が使われている(特約を無視して債権を譲渡した中小企業とは手を切ってしまう。資金繰りのために債権譲渡してしまった中小企業にとっては打撃である)。<br>例:[https://www.shokochukin.co.jp/individual/pdf/sogo_201305.pdf 商工中金の総合口座取引等規定集]には譲渡・質入れ禁止の条文がいくつも規定されている。
 
2017年改正によって、債権譲渡自由の原則を徹底した。
従来は「前項の規定は適用されない」と規定されており債権譲渡が無効であると定められていたので、「譲渡禁止特約は誰に対しても対抗できて譲受人に譲渡無効を主張できる」という物権的効力説が通説だった。これに対して少数説だった債権的効力説は譲渡禁止特約が譲受人に対抗できず譲渡人に債務不履行責任を問えるとしていた。改正466条は債権譲渡が有効であると規定したので物権的効力説は採用しがたい。
 
===3項===
しかしながら、長年の取引慣習もあり、譲受人等が、『譲渡禁止特約』の存在を知っていながら(悪意)、又は、重大な過失によって知らなかった(<u>『譲渡禁止特約』は慣習化しているので、譲り受け時に、その存在を確認しないと、重大な過失があったと解されうる</u>)場合は、譲受人等に対して、債務者は履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済等債務消滅行為(両建て預金の相殺が典型)をもって、成就者等に対抗しうるものとした。
履行を催告された債務者は譲受人が譲渡禁止特約の存在について悪意有重過失を立証すれば譲受人に履行を拒絶でき、譲渡人に履行した分は有効である。地方公共団体や大企業の代金債務について譲渡禁止特約があることを知らない者は無い。結局この3項によって中小企業の資金繰りは制限される。
 
したがって、実務上、改正前後に大きな差は生じていないとも言える。
===4項===
 
*譲受人G2が譲渡禁止特約の存在を知っていたか知らなかったことについて重過失があった場合を考える。もはや債権を手放した譲渡人G1はSに履行を催告する権限はなく(債権譲渡が有効だと規定されたから)、G2は悪意重過失だから債務者Sに履行を催告しても拒絶されるだけである。ではSは債務を履行しなくてもよいのか。
===4項===
この場合、まずG2はSに、G1に債務を履行せよと催告する。それでもSがG1に履行しなければ、G2はSに弁済を請求することができる。これは譲受人G2保護のための規定である。しかし、大企業であるSにとって譲渡時まで管理していた「G1」との債務の会計マネジメントのほうが、新たに「G2」との取引のマネジメントをするよりラクである。
第3項により債務の履行が拒否された場合、譲受人等を救済するため、債権譲渡により本来であれば権限のない譲渡人に対して、期間を定め債務者への履行を催告できるものとし、元々の債権者・債務者間で解決を促すものとし、その期間中に履行がなければ、履行の拒否はできなくなるものとした。
 
==参照条文==
65 行
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52327&hanreiKbn=02 否認権行使請求事件](最高裁判例 平成16年07月16日)[[破産法第72条]]2号,[[民法第127条]]1項
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=37486&hanreiKbn=02 供託金還付請求権帰属確認請求本訴,同反訴事件](最高裁判例 平成21年03月27日)
==脚注==
<references/>
----
{{前後