「高等学校数学II/式と証明・高次方程式」の版間の差分
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実数でない複素数のことを「虚数」(きょすう)という。
===== 複素数の性質 =====
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このような操作を分母の実数化ということもある。数学Iで学習した展開・因数分解公式 <math>(a+b)(a-b)=a^2-b^2</math>の簡単な応用である。
コラム:複素数では大小関係が無い▼
複素数どうしについて、その大小関係は定義しない。その理由は、どのように大小関係を定義しても、便利な性質を満たすことができないからである。具体的に言えば、既に述べた実数の大小関係についての「不等式の基本性質(1)(2)(3)(4)」にあたる式を成り立たせることができないのだ。▼
たとえば、<math>a+bi<a'+b'i</math>であることを、<math>a^2+b^2<a'^2+b'^2</math>であることとして定義してみよう。このように定義すると、たとえば1+2i<2-3iであり、また2+3i<3+4iである。ところが、(1+2i)+(2+3i)=3+5i,(2-3i)+(3+4i)=5+iであり、3+5i>5+iとなってしまう。これは基本性質(2)が成り立たないことを意味する。▼
もちろんこれは適当に考えた定義がたまたま不適切だったというだけのことだが、実は、他にどのように定義してもこのような困難からは逃れられないことが知られている。それゆえに、複素数には大小関係を定義しないのである。▼
===== 負の数の平方根 =====
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'''注意''' <math> \gamma</math> はギリシャ文字の小文字(こもじ)のひとつで、ガンマと読む。
== コラム
=== 複素数は「存在する」か? ===
しばしば虚数は「現実には存在しない数」であると言われることがあり、歴史的にも虚数を扱った数学を考えるべきではないと考えられた時代は長かった。その時代の先進的な数学者の中には、虚数を有効に活用して研究を進める一方で、成果を発表する際には虚数を表に出さずに記述する努力をすることで、無用な抵抗を受けないように工夫した者もいたと言われるほどである。
だが、よく考えてみれば、数が「現実に存在する」とはどういう意味なのだろうか。現実に鉛筆を使って紙に円を描くならば、円周の長さを「正確に円周率そのものにする」ことは不可能であるように思われるが、その割に円周率という実数は「存在する」と感じられるのはなぜだろうか。数直線が実数の「実在」を信じさせるならば、複素数は複素数平面(数学IIIで習う)の上に存在するのだから、同じではないだろうか。
{{コラム| 複素数の平方根 (※発展) |▼
このように考えると、そもそも数とはすべてある意味で想像上の存在であり、それに対して「存在する」「存在しない」という問いを立てることがナンセンスであるように思われる。「存在しない」ように思われがちな虚数であるが、たとえば物理学の一分野である量子力学のシュレディンガー方程式に表れるなど、応用上のさまざまな場面においても、虚数を使って記述することが自然な対象は多いのだ。
▲複素数どうしについて、その大小関係は定義しない。その理由は、どのように大小関係を定義しても、便利な性質を満たすことができないからである。具体的に言えば、既に述べた実数の大小関係についての「不等式の基本性質(1)(2)(3)(4)」にあたる式を成り立たせることができないのだ。
▲たとえば、<math>a+bi<a'+b'i</math>であることを、<math>a^2+b^2<a'^2+b'^2</math>であることとして定義してみよう。このように定義すると、たとえば1+2i<2-3iであり、また2+3i<3+4iである。ところが、(1+2i)+(2+3i)=3+5i,(2-3i)+(3+4i)=5+iであり、3+5i>5+iとなってしまう。これは基本性質(2)が成り立たないことを意味する。
▲もちろんこれは適当に考えた定義がたまたま不適切だったというだけのことだが、実は、他にどのように定義してもこのような困難からは逃れられないことが知られている。それゆえに、複素数には大小関係を定義しないのである。
今度は、複素数の平方根について考えてみよう。
正の数<math>a</math>を考えたとき、
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実部がゼロを考慮して<math>x=0</math>か<math>x=\pm\sqrt{3}y</math>だが、虚部もゼロなので、xの値が前者のとき<math>y=-1</math>、後者のとき<math>y=1/2</math>となることがすぐにわかる。
▲== コラム: 高次方程式の「解の公式」 ==
2次方程式には解の公式があり、日本の中学や高校でも習う。2次方程式の解の公式を用いれば、どんな係数の2次方程式であっても解を求められる。3次方程式と4次方程式にも、解の公式は存在し、係数がどんな係数であっても解を求められる。これらの解の公式は、[[代数方程式論]]で述べているように、係数に有限回の四則演算と根号をとる操作の組み合わせで表すことができる。
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