「ゲームプログラミング/バランス調整」の版間の差分

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→‎RPGのダメージ計算式: 現実の軍事学でも、似たようなモデルがある。クラウゼヴィッツの攻撃重視理論など。
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== RPGのダメージ計算式 ==
=== 特化型が有利になりやすい ===
たとえば、キャラクターに能力をプレイヤーが自由に選んで振り分け配分できるシステムのゲームがあったとしましょう。(商業ゲームでも、いくつかの作品で、似たようなシステムのRPGがあります。)
 
説明の単純化のため、合計値が必ず100だとしましょう。
 
つまり、たとえば下記のようになります。
;作成キャラ
 
;作成キャラの能力例
:(※ 合計100)
ちから: 10
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さて、別の作成キャラ例を考えます。
さて、
 
;平均型キャラA
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ほとんどの20世紀のRPGのアルゴリズムでは、特化型のキャラBのほうが勝ち、つまり特化型のほうが強くなってしまいます。
 
さらに言うと、たいてい「攻撃力」のような、敵にダメージを与える意味のパラメーターに振り割ったほうが、キャラクターが強くなるゲームのほうが多いです。(ファミコン時代から、ウィザードリィ1の攻略本でそういわれていました。敵モンスター『ワイバーン』あたりの攻略法として「攻撃は最大の防御」という格言を出しています。表紙の黒かった攻略本なので、たぶんゲームアーツの本。)
 
なぜこうなるかと言うと、なぜなら、もし攻撃力が上がると、敵を倒すのに要するターン数も減少するので、結果的に敵を倒すまでに自キャラの受けるダメージ量も減るからです。(なお、現実の軍事学でも、似たような事が言われており、戦術論ですが、クラウゼヴィッツ(近代ドイツの軍事学者の一人)は防御重視の作戦よりも攻撃重視の作戦のほうが有利だと述べています。防御だけで攻撃しなければ、現実でもゲ-ムでも戦闘では絶対に勝てません。)
 
 
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理由はいろいろとありますが、バランス側の弱くなりやすい理由のひとつとして、
:・ウィザードリィやドラクエなどの古いRPGのアルゴリズムが、特化型に有利になっているという歴史的な経緯。
:・命中率などの確率に関わるパラメータ(「器用さ」)のある場合、パラメータ割り振り前から既にある程度の底上げ補正がされている場合が多いので、わざわざ命中率を上げると割り損になる。
:・「すばやさ」(素早さ)が攻撃の順番にしか影響しない場合、素早さが低くても1ターンに1度は攻撃できるので、素早さを上げると損。
などの理由があります。
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アルテリオス以外のダメージ計算式でも、たとえば
:1.3×攻撃側の攻撃力 - 0.75 × 守備側の守備力 = 守備側のダメージ
というような感じの計算式である作品も多いです。
 
せいぜい、変数の前に定数係数が掛かっている程度です。
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そして、このアルテリオス式を見ると分かるのですが、
:攻撃側の攻撃力 - 守備側の守備力 = 守備側のダメージ
もし自軍の攻撃力が0の場合、敵にダメージを与えられないので(ダメージが0)、絶対に負けてしまいます。つまり、攻撃力が敵の守備力を下回る場合も、絶対に負けるのです。
 
一方、「すばやさ」パラメータが戦闘の先攻/後攻の順番にしか影響しない場合、素早さが0であっても、勝つことは可能です。
 
また、攻撃力が敵の守備力を下回る場合が0であっても、絶対に負けるの勝つことは可能です。
 
一方、守備力が0であっても、勝つことは可能です。
 
 
このように、パラメータの種類ごとに、そのゲームにおいて重視・軽視の差があり、不公平になっている事が多いのです。
 
 
 
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つまり、
自分の攻撃力 > 敵の守備力
でないと、アルテリオス式では必ず負けるのです。
 
 
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のように係数を掛けた計算式の場合、
 
守備力を1ポイント増やしても、その効果は25%減少されます。(たとえばレベルアップの際に上昇パラメータを一種類選べるシステムの場合、守備力を選ぶと損になる場合が多い。)
 
いっぽう、攻撃力を1ポイント増やすと、効果は30%増しです。
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このように、計算式によって、有利/不利なパラメータという格差が生じます。
 
=== では、どう設計するべきか ===
上記の節では、説明の都合上、パラメータを自由に振り分けられるようにシミュレーションしましたが、しかし実際のゲーム設計では、そういうシステムは避けたほうが安全です。
 
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どうしても能力振り分けシステムを採用した場合、「レベルさえ上げれば、とりあえずラスボスも倒せるようになるし、終盤モンスターも倒せるようになる」ように設計するなどするのが安全でしょう。
 
RPGの場合、よくある工夫として、
:・終盤に武器屋などで入手できる武器・防具の影響を強くする、
:・レベルによって攻撃ダメージが増える、
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のような、なんらかの救済措置があります。
 
なぜなら、このような救済措置が無いと、最悪の場合、ゲーム後半でクリア不可能な状態にプレイヤーが追い込まれる場合が発生しかねず、プレイヤーにストレスを大きく与えるからです。もしプレイヤーがゲームを20時間以上もプレイしたのに、ゲーム後半でクリア不能になれば、プレイヤーはもう、そのゲームを嫌いになるだろうし、そのゲーム会社も疑います。
 
 
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(※ ∝ は「比例する」という意味の数学記号です。中学または高校で習っているハズです。)
 
または、難易度を下げることでテストプレイの必要数を減らせます。ここで重要なことは、その場合、ゲームクリアに必要な難易度も必ず下げる事です。つまり、難易度は、ゲーム中盤とゲーム終盤で、必ず(難易度を)ほぼ統一する必要があります。
 
ときどき、
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する必要が生じてしまい、序盤の難易度設計が無駄になってしまいます。
 
どうしても後半の難易度を難しくするなら、それはゲームクリア後シナリオなどに回しましょう。クリア後シナリオ以外で難しいと、苦手なプレイヤ-はそのゲームのストーリーのクライマックスを体験できなくなってしま宇野うので、そのゲームの面白さが大幅に減ってしまいます。