「中学校理科 第1分野/化学変化とイオン」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Ef3 (トーク | 投稿記録)
{{Nav}}
1 行
{{Nav}}
==水溶液とイオン==
=== 水溶液の電気伝導性 ===
=== 電解質 ===
水にとかしたとき、その水溶液に電流が流れるようになる物質を{{ruby|'''電解質'''|でんかいしつ}}(英語: electrolyte)という。
:例) 塩化ナトリウム(食塩)、水酸化ナトリウム、塩化銅、硫酸、塩化水素(塩酸) など、水溶液が電気を流すので、電解質である。
 
水にとかしてもその水溶液に電流が流れない物質を{{ruby|'''非電解質'''|ひでんかいしつ}}という。
:例) エタノール水溶液、砂糖水、メタノール水溶液 などは、電気を流さないので、非電解質である。
 
17 ⟶ 18行目:
 
この塩化銅水溶液に電気を流す実験では、陰極に、銅が付着する。一方、陽極付近には、塩素が気体として発生する。
発生気体が塩素であることは、{{ruby|臭い|におい}}が、プールの消毒液のような臭いであることからも分かる。有毒な気体なので、あまり、かぎすぎないように。においをかぐときは、手であおぐようにして、かぐこと。
 
実験をするときは、換気をして、実験すること。
42 ⟶ 43行目:
=== 銅の精錬 ===
[[File:Electrorefining copper jp.svg|thumb|400px|銅の電気精錬]]
銅の鉱石を、コークスCなどとの加熱反応で還元したものは、純度が約99%であり、{{ruby|粗銅|そどう}}とよばれる。粗銅には、亜鉛や銀などの不純物が含まれるので、純度をあげるためには、これら亜鉛などを分離する必要があり、そのために電解が利用されている。
 
硫酸銅(II)水溶液をもちいる。そのさいの電極(陽極)に、純度をあげたい銅を用いる。つまり、粗銅を陽極に用いる。純度の高い銅を陰極に用いる。電気分解により、次の反応が起こる。
52 ⟶ 53行目:
陽極からは、銅だけが溶け出すのではなく、イオン化傾向の大きい鉄や亜鉛やニッケルなども溶け出す。しかし陰極で析出するのは、ほとんど銅だけなので、よって陰極にて高純度の銅が得られる、という仕組みである。
 
粗銅中に銀や金が含まれていた場合、イオン化傾向が銅よりも小さい銀や金は、陽極の下に沈殿する。これを{{ruby|'''陽極泥'''|ようきょくでい}}(英語: anode slime)という。陽極泥には、金や銀などが含まれているので、ここから金や銀を回収する。
 
陰極には純度の高い純度99.99%程度の銅が析出する。これを{{ruby|純銅|じゅんどう}}という。
 
=== 塩化水素の水溶液に電気を流す場合 ===
68 ⟶ 69行目:
 
そのほかの様々な実験からも、塩酸や塩化銅の水溶液中での塩素は、マイナスの電気を持っていることが確認されている。中学生は、この実験結果を、うのみにして良い。
 
 
 
=== 原子の成り立ちとイオン ===
原子は, {{ruby|'''陽子'''|ようし}}{{ruby|'''中性子'''|ちゅうせいし}}からなる{{ruby|'''原子核'''|げんしかく}}と、原子核のまわりを回る'''電子'''からできている。原子の直径は1億分の1cm程度である。電子は、原子核には含めない。
 
陽子の質量と、中性子の質量は、同じである。厳密にいうと、ほんのわずかに質量が違うのだが、ほとんど同じなので、中学の段階では、陽子の質量と、中性子の質量は同じである、と考えてよい。一方、電子の質量は、陽子と比べて、極めて小さい。電子の質量は、陽子の質量の 約 <math>\frac{1}{1800}</math> 倍 でしかない。
82 ⟶ 81行目:
原子の中心には+の電気をもつ原子核が1つあり、マイナスの電気をもついくつかの電子がそれを取り巻いている。安定している状態の原子や分子では、原子核の持つ陽子の数と、電子の持つ数とは、同じであり、原子核がもつ+の電気の総量と、電子のもつマイナスの電気の総量が等しいので、原子全体は電気を帯びていない。
 
ある原子が、何の'''元素'''であるかは、原子核に含まれる陽子の数で決まる。一方で、原子核の中性子の数は、陽子の数に近いが、必ずしも陽子と中性子の数が同じとは限らない。原子核に含まれる陽子の数が同じで(すなわち、同じ元素で)、中性子の数が異なるものを、{{ruby|'''同位体'''|どういたい}}(英語: isotope)という。
 
 
132 ⟶ 131行目:
 
 
電解質が水にとけて陽イオンと陰イオンとに分かれることを{{ruby|'''電離'''|でんり}}(英語: ionization)またはイオン化という。非電解質は電離しない。
塩化ナトリウムが水に溶けてイオンに分かれることも、電離である。塩化銅が水溶液中で塩化物イオンと銅イオンに分かれることも電離である。
 
164 ⟶ 163行目:
ナトリウムイオンは、人体で、さまざまな働きをしています。汗をかくと、ナトリウムイオンなどのイオンが失われます。もしナトリウムが不足しすぎると、 めまい や けいれん などの危険な症状になります。
 
なので、ナトリウムイオンなどをおぎなうために、食事などでは{{ruby|食塩|しょくえん}}をおぎなう必要があるので、塩分のふくまれたものを食べるのです。
 
学校の給食は、栄養士の人などが、中学生に必要な塩分やカロリーやビタミンなどを計算して、給食を作っています。アレルギーが無い限り、なるべく給食を食べるようにしましょう。
181 ⟶ 180行目:
原子の構造のうち、電子が並んでいる原子核の周りの部分について、より詳しく見ていこう。
; 電子殻(でんしかく、electron shell) : 電子が飛び回っている部分全体を指す。階層構造になっている。
この電子殻は何重かにわかれており、内側から{{ruby|'''K殻'''(|ケーかく}}(英語: K shell)、{{ruby|'''L殻'''(|エルかく}}(英語: L shell)、{{ruby|'''M殻'''(|エムかく}}(英語: M shell)、……と呼ぶ。
 
それぞれの層に入ることのできる電子の数は決まっており、その数以上の電子が一つの層に入ることは無い。たとえば、K殻に入ることのできる電子の数は2つまでである。また、電子は原則的に内側の層から順に入っていく。M殻以降では例外もあるが、中学・高等学校の化学ではこれについては扱わない。
 
また、いちばん外側の電子殻にある電子を{{ruby|'''最外殻電子'''|さいがい でんしかく}}と呼ぶ。最外殻電子は原子の性質に大きな影響を与える。ある原子とある原子との接点が、実際には電子殻であるため、原子の結合の仕方などはこの最外殻電子の個数が重要になってくる。原子の性質を決める最外殻電子を特別に{{ruby|'''価電子'''(|かでんし}}(英語: valence electron)と呼ぶ。
最外殻にそれ以上電子が入ることのできない状態を{{ruby|'''閉殻'''|へいかく}}という。閉殻になっている原子の価電子の個数は'''0'''であると約束する。
 
[[File:Electron shell 002 Helium - no label.svg|thumb|left|200px| ヘリウム原子Heの電子は、K殻に2個の電子を持つ。ヘリウムは閉殻構造である。閉殻なのでヘリウムの価電子は0と数える。]]
 
各々の原子の電子の、電子殻への配列の仕方を{{ruby|'''電子配置''' (|でんしはいち}}(英語: electron configuration)という。K殻に2個の電子が全て収められた場合の電子配置は、希ガスであるヘリウムHeの電子配置と同じである。L殻まで電子が全て収められ、L殻に8個の電子とK殻に2個の電子の合計10個の電子が全て収められた場合の電子配置は、希ガスであるネオンNeの電子配置と同じである。
同様に、M殻の終わりまで全て電子が収められた状態は、希ガスであるアルゴンArの電子配置と同じである。
 
229 ⟶ 228行目:
 
電子殻について、詳しくは高校で習う。
 
{{コラム|電子殻はナゼK殻から始まるか?|電子殻のアルファベットがKから始まるのは、発見当初にはK殻より内側にも殻があることもないことも示す論証も理論もなく、未知の殻は多くても10個を超えないだろうということでK殻から順に名付けることになりました。
 
しかし、K殻よりも小さい殻は発見されませんでした。
}}
 
{{clear}}
237 ⟶ 241行目:
 
ナトリウムやカリウム、カルシウムなどのある種の元素は、炎の中に入れると、元素の種類ごとに特有の色の炎が上がる。
このような現象を{{ruby|'''炎色反応'''|えんしょくはんのう}}(英語: flame test)という。
イオンの検出では、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、もし水溶液中のイオンがリチウムイオンなら赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。
 
254 ⟶ 258行目:
:バリウム: 緑
 
中学の段階では、元素と色の対応を、無理に覚える必要はない。<!--また、色温度と混同しないように-->
 
<gallery>
272 ⟶ 276行目:
 
=== 電池のしくみ ===
化学変化や温度差、光などの作用によって電気エネルギーをつくり出す装置を{{ruby|'''電池'''|でんち}}(英語: battery)という。
電池のうち、化学変化を利用して化学エネルギーを電気エネルギーに変える電池のことを、<big>{{ruby|'''化学電池</big>('''|かがく でんち}}と呼ぶ。
一方、太陽光発電パネルなどのように、化学反応を用いなくても発電できる装置は、化学電池ではない。
 
330 ⟶ 334行目:
電子の流れは「亜鉛板 &rarr; 銅板」なので、電流の向きは、「銅板 &rarr; 亜鉛板」となり、亜鉛板が−極、銅板が+極となる。
 
ボルタの電池の電圧は、最初は常にほぼ一定である。この電池が作る電圧を{{ruby|'''起電力'''|きでんりょく}}(英語: electromotive force, EMF)という。ボルタの電池の起電力は、1.1ボルトである。
電圧や起電力の単位の「ボルト」の由来は、ボルタの電池を発見したボルタが由来である。
 
336 ⟶ 340行目:
 
なお、ボルタの電池は、時間がたつと、起電力が下がっていってしまう。これは反応中に銅板で発生する水素による泡が原因である。
このような電極に発生した泡による起電力の低下を、電池の{{ruby|分極|ぶんきょく}}(英語: polarization)という。分極は高校レベルなので、中学生は、あまり気にしなくて良い。
 
 
369 ⟶ 373行目:
* 鉛電池(なまり でんち)
自動車のバッテリーで用いられている電池である。
電極は、マイナス極に{{ruby||なまり}}を用いている。プラス極には、酸化鉛を用いている。
電解質には、うすい硫酸が用いられている。
 
鉛電池では、外部から逆向きに電流を加えることで、<big>{{ruby|'''充電</big>('''|じゅうでん}}が出来る。このように、充電の出来る電池のことを<big>{{ruby|二次電池</big>(|にじでんち}}と言う。
 
 
一方、充電できない電池を{{ruby|一次電池|いちじ でんち}}という。マンガン乾電池は充電できないので、マンガン乾電池は一次電池である。
 
 
389 ⟶ 393行目:
ボルタ電池のような反応がなぜ起こるかは、この節で説明する、亜鉛板と銅板とのイオン化傾向の差による。
 
金属元素の単体を水または水溶液に入れたときの、陽イオンのなりやすさを{{ruby|'''イオン化傾向'''|イオンか けいこう}}(英語 ionization tendency、イオニゼイション・テンデンシー)という。
例として、亜鉛Znを{{ruby|希塩酸|きえんさん)HCl}}HClの水溶液に入れると、亜鉛Znは溶け、また、亜鉛は電子を失ってZn<sup>2+</sup>になる。
:Zn + 2H<sup>+</sup> → Zn<sup>2+</sup> + H<sub>2</sub>
413 ⟶ 417行目:
:Cu + 2Ag<sup>+</sup> → Cu <sup>2+</sup> + 2Ag
なお、この反応で生じた銀を、生じ方が樹木が伸びるように析出した銀が伸びることから{{ruby|'''銀樹'''|ぎんじゅ}}という。
;硫酸銅溶液と銀の場合
434 ⟶ 438行目:
(中学の段階では、覚える必要はない。)
金属を、イオン化傾向の大きさの順に並べたものを金属の{{ruby|'''イオン化列'''|イオンかれつ}}(英語: ionization series)という。