「高等学校数学II/微分・積分の考え」の版間の差分

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<small>[[高等学校数学II]] &gt; 微分・積分の考え</small>
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=== 平均変化率 ===
本項は[[高等学校数学II]]の"微分・積分の考え"の解説です。
中学校では、一次関数と<math>y=ax^2</math>の'''変化の割合'''を求めただろう。ここでは、同じものを'''平均変化率'''と呼ぶことにする。一般の関数 <math>y=f(x)</math> の平均変化率を考えてみたい。中学校で学習したことと同様に考えると、 <math>y=f(x)</math> において、 <math>x</math> <math>a</math> から <math>b</math> まで変化したときの平均変化率は、「 <math>y</math> の変化量/ <math>x</math> の変化量」で求められる。つまり、 <math>\frac{f(b)-f(a)}{b-a}</math> である。
 
 
== 微分・積分の考え ==
=== 平均変化率 ===
中学校では、一次関数と<math>y=ax^2</math>の'''変化の割合'''を求めただろう。ここでは、同じものを'''平均変化率'''と呼ぶことにする。一般の関数<math>y=f(x)</math>の平均変化率を考えてみたい。中学校で学習したことと同様に考えると、<math>y=f(x)</math>において、<math>x</math>が<math>a</math>から<math>b</math>まで変化したときの平均変化率は、「<math>y</math>の変化量/<math>x</math>の変化量」で求められる。つまり、<math>\frac{f(b)-f(a)}{b-a}</math>である。
 
'''例'''
 
<math>y=x^2 + 2x + 1</math> において、 <math>x</math> が-1から3まで変化したときの平均変化率を求める。
 
<math>\frac{(3^2 + 2\cdot 3+1)-((-1)^2 + 2 \cdot (-1) + 1)}{3-(-1)} </math><math>=4</math>
 
=== 極限 ===
関数 <math>f(x)</math> において、 <math>x</math> <math>a</math> とは異なる値をとりながら限りなく <math>a</math> に近づくとき、 <math>f(x)</math> が限りなく <math>A</math> に近づくことを、 <math>
\lim_{x\rightarrow a} f(x) = A
</math> とかく。
 
==== 例 ====
68 ⟶ 64行目:
 
なので、この本では、イプシロンデルタ論法を使わず、曖昧な方法で極限を定義した。なので、上のような疑問を持った人は、その疑問について深く考えずに先に進むか、[[解析学基礎/極限#極限の形式的な定義|イプシロンデルタ論法]]を学ぶかしてほしい。
[[ファイル:平均変化率.svg|サムネイル|平均変化率]]
 
=== 微分係数と導関数 ===
[[ファイル:Derivative GIF.gif|220x220px|hを0に近づけたときのアニメーション|サムネイル]]
==== 微分係数 ====
関数 <math>y = f(x)</math> の傾きについて考えてみよう。
<math>x</math> が <math>a</math> から <math>a + h</math> まで変化したときの平均変化率は
 
:<math>(\frac{f(a+gh)'=-f'+g'(a)}{h}</math>
==== 微分係数 ====
 
である。このとき、 <math>h</math> を限りなく0に近づければ <math>a</math> での傾きを求めることができる。つまり、関数 <math>y = f(x)</math> の <math>a</math> での傾きは
関数f(x)に対して、
<math>
\lim_{x\rightarrow a} f(x)
</math>
を、f(x)の、x=aにおける極限(きょくげん)とよぶ。
<math>x \rightarrow a </math>の極限とは直観的には、xをaに極めて近い数にすることである。極限はたいていf(a)に一致するが、そうでない場合もある。一致する場合としてはたとえば、
<math>
\lim_{x\rightarrow 1} x = 1 = f(1)
</math>
となる。しかし、グラフがちぎれているような場合、f(x)の、x=aにおける極限とf(a)は必ずしも一致しない。
:[[画像:不連続なグラフ.png|frame|極限が存在しない例]]
 
<math>\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}</math>
 
で与えられる。これを <math>x = a</math> における'''微分係数'''という。
 
また
 
<math>f'(x) = \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}</math>
 
で与えられる関数 <math>f'(x)</math> を関数 <math>f(x)</math> の'''導関数'''という。
 
*関数 <math>f(x) = x</math>  の導関数は <math>f'(x) = 1\frac{df}{dx}</math>と表されることもある。
 
関数f(x)に対して、
:<math>
\lim _{x\rightarrow a} \frac{f(x) - f(a)}{x-a}
</math>
をf(x)のaにおける微分係数(びぶん けいすう)とよぶ。また、導関数f'(x)を、
:<math>
\lim _{h\rightarrow 0} \frac {f(x+h) - f(x)} h
</math>
で定義する。ここで、f'(a)は、aにおけるfの微分係数と等しくなる。これを示すには、微分係数の定義の式で、
<math>x \rightarrow a+h</math>, <math>a \rightarrow x</math>とおけばよい。
 
簡単な場合に導ここで、いくつかの関数の導関数を求めてみよう
*<math>f(x) = 1</math>
{|
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|<math>= 2x </math>
|}
となである。
*<math>f(x) = x^3</math>
 
 
<math>n</math> を自然数とする。関数 <math>f(x) = x^n</math> の導関数は
{|
|-
153 ⟶ 149行目:
|-
|
|<math>= \lim _{h\rightarrow 0} \frac {(x+h)^3n - x^3n} h</math>
|-
|
|<math>= \lim _{h\rightarrow 0} \frac{3hx(x^2n +3h _nC_1x^2x{n-1}h + _nC_2x^{n-2}h^32\cdots + h^n) - x^n} h</math>
|-
|
|<math>= \lim _{h\rightarrow 0} (3x_nC_1x^2{n-1} + 3hx_nC_2x^{n-2}h + h^2{n-1})</math>
|-
|
|<math>= 3 xnx^2{n-1} </math>
|}
である。
 
==== 和の導関数・差の導関数・実及び定数倍の導関数 ====
となる。
関数 <math>f(x), g(x)</math> に対し次が成り立つ。
 
# <math>\{f(x) \pm g(x)\}' = f'(x) \pm g'(x)</math> (複号同順)
{| style="border:2px solid pink;width:80%" cellspacing=0
*# <math>f\{ kf(x) \}' = kf'(x^3)</math>
|style="background:pink"|'''導関数'''
|-
|style="padding:5px"|
*<math>f(x) = x^3</math> の導関数は <math>f'(x) = 3x^2</math>
*<math>f(x) = x^2</math> の導関数は <math>f'(x) = 2x</math>
*<math>f(x) = x</math> の導関数は <math>f'(x) = 1</math>
*<math>f(x) = c</math> (<math>c</math> は定数) の導関数は <math>f'(x) = 0</math>
|}
 
'''証明'''
==== 和の導関数・差の導関数・実数倍の導関数 ====
''a''を実数として、fとgを微分可能な関数とするとき
:<math>(f+g)'=f'+g'</math>
:<math>(f-g)'=f'-g'</math>
:<math>(af)'=af'</math>
 
# <math>\{f(x) \pm g(x)\}' = \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h) \pm g(x+h)-\{f(x) \pm g(x)\}}{h} = \lim_{h\to 0}\{\frac{f(x+h) - f(x)}{h} \pm \frac{g(x+h) - g(x)}{h}\} = f'(x) \pm g'(x)</math>
が成り立つ。
# <math>\{ kf(x) \}' = \lim_{h\to 0}\frac{kf(x+h) - kf(x)}{h} = \lim_{h\to 0}k\frac{f(x+h) - f(x)}{h} = kf'(x)</math>
 
 
*'''演習問題'''
 
次の関数を微分せよ
**問題
 
1. <math>f(x)=2x^3+4x^2-5x-1</math><br>2. <math>f(x)=(2x+3)(3x-5)</math>
 
2. <math>f(x)=(2x+3)(3x-5)</math><br>
 
をそれぞれ微分せよ。
**'''解答'''
 
**解答
1.
:<math>\begin{align}
212 ⟶ 200行目:
</math>
 
=== 導関数の応用 ===
==== 接線 ====
 
 
==== 接線 ====
 
導関数は関数f(x)の接線の傾きに対応する。
230 ⟶ 216行目:
f(x)のx=aにおける接線(せっせん)と呼ぶ。
 
==== 関数値の増減 ====
 
 
237 ⟶ 223行目:
もちろん簡単にf'を求める手段が無ければ、これはほぼ無意味なことであるが、実際には多くの場合少ない手順でf'を求めることが出来るので、この関係は重要になることが多い。
 
==== 三次関数のグラフ ====
三次関数は
 
296 ⟶ 282行目:
 
 
==== 関数の極大・極小 ====
<math>f(x)=x^3 - 3x</math>を微分すると
:<math>f'(x)=3x^2 -3 =3(x+1)(x-1)</math>
308 ⟶ 294行目:
このとき、<math>f(x)</math>は<math>x=-1</math>において'''極大'''(きょくだい)になるといい、そのときの<math>f(x)</math>の値<math>f(-1)=2</math>を'''極大値'''(きょくだいち)という。また、<math>x=1</math>において'''極小'''(きょくしょう)になるといい、そのときの<math>f(x)</math>の値<math>f(1)=-2</math>を'''極小値'''(きょくしょうち)という。極大値と極小値を合わせて'''極値'''(きょくち)という。
 
=== 積分の考え ===
==== 不定積分 ====
 
'''不定積分'''(indefinite integral)とは、微分したらその関数になる関数を求める操作である。
379 ⟶ 365行目:
となる。
 
==== 定積分 ====
関数<math>f(x)</math>の原始関数の一つを<math>F(x)</math>とする。この原始関数に値を代入して、その値の差を求める操作を、'''定積分'''と呼び、<math>\int ^b_a f(x) dx</math>と書く。つまり、
:<math>
421 ⟶ 407行目:
が得られる。これは、それぞれの答えの式を、xで微分すると元の式が得られることからわかる。一般に関数の和の積分はそれぞれの関数を積分したものを足し合わせたものと積分定数の範囲で一致する。詳しくは[[高等学校数学III 積分法]]を参照。
 
==== 定積分と微分 ====
 
aを定数とするとき、定積分<math> \int_a^x f(t)\,dt</math>はxの関数になる。<br>
429 ⟶ 415行目:
:<math>\frac{d}{dx} \int_a^x f(t)\,dt=\frac{d}{dx} F(x) = f(x)</math>
 
{| style="border:2px solid pink;width:80%" cellspacing="0"
| style="background:pink" |'''<math>\int_a^x f(t)\,dt</math>の導関数'''
|-
| style="padding:5px" |
<center><math>\frac{d}{dx} \int_a^x f(t)\,dt= f(x)</math></center>
 
|}
 
==== 定積分と面積 ====
関数<math>f(x)</math>が<math>a \leqq x \leqq b</math>の範囲で常に正であるとする。このとき、定積分<math>\int _a^b f(x) dx</math>によって、関数<math>f(x)</math>のグラフと、直線<math>x=a</math>、直線<math>x=b</math>、<math>x</math>軸で囲まれた部分の面積を求めることができる。