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民事訴訟法』 2021年9月23日 (木) 14:40‎ の弁論主義などをサブページに移動。
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挙証者と文書所持者との間の法律関係について作成された文書を'''法律関係文書'''といい、その所持者は提出義務がある。
 
== 事実の解明 ==
=== 弁論主義 ===
「弁論主義」と言われる原則は、民事訴訟法にもとづく訴訟において裁判官の取るべき原則のひとつであり、その内容は下記のような3原則が一般的である。
 
*(1)裁判所は、当事者のいずれも主張していない事実に基づいて判決してはならない(主張責任<ref>山本</ref><ref>中野、P226</ref>、主張原則<ref>三木</ref>)。
*(2)両当事者間で一致して争いのない事実(すなわち、当事者どちらかの'''自白''')については、そのまま判決として採用しなければならない(自白原則<ref>三木、P204</ref>)。
*(3)当事者間に争いのある事実を認定する際には、当事者の申し出た証拠にもとづかなければならない(「'''職権証拠調べの禁止'''」と言われる)。
 
これに対し、人事訴訟法など一部の法律では裁判所が必要に応じて自発的に証拠をさがす事ができ、この原則を「職権探知主義」という。つまり、若干の例外はあるものの、「弁論主義」と「職権探知主義」はお互いに反対概念である<ref>三木、P215</ref>。
 
 
弁論主義について、それぞれ説明する。
 
;(1)裁判所は、当事者のいずれも主張していない事実に基づいて判決してはならない(主張責任<ref>山本</ref><ref>中野、P226</ref>、主張原則<ref>三木</ref>)。
 
これはつまり、証拠調べで得た証拠資料であっても、当事者が言及していない限り、証拠資料自体の真偽について裁判官は認定できない事を意味する(証拠資料と主張資料の峻別)<ref>三木、P204</ref>。
 
また、裁判官の心証として確信を得ている事であっても、それは判決にはできない<ref>中野、P226</ref>。
 
 
;(2)両当事者間で一致して争いのない事実(すなわち、当事者どちらかの自白)については、そのまま判決として採用しなければならない(自白原則<ref>三木、P204</ref>)。
 
裁判所において、口頭弁論または弁論準備手続きなどでされた自白のことを'''裁判上の自白'''という<ref>安西、P100</ref>。
 
民訴法179条で、裁判上で自白をされた事実は証拠調べを要しない事が定められている(自白の証明不要効)<ref>山本、P185</ref>。
 
また、この理由により、自白された事実については、裁判所は証拠調べをする事ができなくなる<ref>安西、P100</ref><ref>三木、P204</ref><ref>中野、P228</ref>。
 
 
必然的に、裁判官は自白の内容を判決の基礎にすえなければならない(自白の拘束力。「審判排除効」ともいう)<ref>山本、P185</ref>。
 
 
自白はこのように重大なものであるので裁判上の規律として、自白は一度したら、自由には撤回できない(自白の制限撤回効<ref>三木、P232</ref>)。
 
しかし相手方が自白の撤回に同意すれば、この限りではない。
 
 
また刑事上罰するべき他人の行為によって自白に導かれた場合は、再審事由に該当するので、判決が確定する前であれば撤回を許される。
 
 
判例では、ドイツ法に倣って錯誤にもとづく自白を撤回できるとしたものもある(最判昭和25・7・11民集4巻7号316頁)<ref>山本、P188</ref><ref>三木、P245</ref>。
 
 
;(3)当事者間に争いのある事実を認定する際には、当事者の申し出た証拠にもとづかなければならない。
これは大まかに言えば、証拠調べは当事者が申請したものだけを調べられるという原則であり、つまり裁判所みずからが情報収集をする事は原則的には禁止という意味であり<ref>神田 『図解による民事訴訟のしくみ』、自由国民社、2018年5月20日 第2版発行、P14</ref>、「'''職権証拠調べの禁止'''」と言われる。
 
しかし実際には、当事者尋問(207条1項)や調査嘱託(186条)では職権調べが許されている<ref>三木、P205</ref><ref>安西、、P101およびP129</ref>。
 
このように例外もあるので、「職権証拠調べの禁止」を疑問視する学説もあり<ref>山本、P243</ref>、弁論主義の原則のひとつとして「職権証拠調べの禁止」を扱うのを疑問視する学説もある<ref>三木、P205</ref>。
 
一方、証人喚問や書証では職権証拠調べの禁止が貫かれている<ref>三木、P205</ref>。
 
「職権証拠調べの禁止」は、さほど厳格な原則ではない<ref>三木、P205</ref>。
 
:※ なお、弁論主義の考えかたは主に18世紀のドイツに由来するものであり、日本では慣習的に主張責任を「第1テーゼ」、自白原則を「第2テーゼ」のように呼ぶが、しかし当のドイツではそのような番号で呼ぶ呼び方をしない<ref>三木、P205</ref>。
 
=== 職権探知主義 ===
'''職権探知主義'''とは文字通り、裁判所が自発的に証拠収集をできる事であり、人事訴訟法や行政訴訟法で採用されている。
 
なお、人事訴訟法では弁論主義は無効であり(人訴19)、よって裁判所による自発的な証拠調べが可能であり(人訴20)、他には自白の拘束力も無効である(条文で民訴179を否定しており、これが自白の拘束力の否定に該当)<ref>山本、P189</ref>。
 
なお、行政訴訟法は裁判所による職権証拠調べを認めているが、しかし行政訴訟法は主張責任(第1テーゼ)および自白の拘束力(第2テーゼ)を否定していない<ref>山本、P189</ref>。
 
このように一部の訴訟で職権証拠調べを認めている理由は、一般的な説明としては、公益性の高いものや、第三者に影響のあるものは<ref>中野、P179</ref><ref>三木、P25</ref>、当事者だけに証拠調べを任せるわけにはいかないので、裁判所が責任をもって証拠の収集をする必要がある<ref>中野、P179</ref>、などといった説明がされる。身分関係も、公益性が高いという教科書(※山本『民事訴訟法』)もある<ref>山本、P189</ref>。
 
しかし、主張責任が否定されても、不意打ち防止の観点から(※当事者に反論の機会のないまま判決が出るのは不公平であるという事)、裁判所は職権で調べた証拠を当事者に示唆した上で、当事者に防御の機械を与えなければならない(人訴20後段、行訴24条但書<ref>三木、P218</ref>)<ref>山本、P189</ref><ref>三木、P217</ref>。
 
== 口頭弁論 ==
=== 自白 ===
民事訴訟において、相手方の主張を争わずに認めることを'''自白'''という。裁判官は、当事者の自白をそのまま証拠として採用しなければならない。
 
また、特に口頭弁論または弁論準備手続きにおける自白のことを'''裁判上の自白'''という。裁判上の自白をされた内容については他の証拠が不要になる('''証拠不要効'''、179条)。