「有機化学/有機化学の化学結合」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
化学の理論について、東京化学同人『有機反応論』(奥山格 著)より抜粋。
出典の追加。<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>
1 行
{{substub}}
[[File:Resonance CH3COO with valence electron.svg|thumb|600px|left|図1<br>酢酸イオンの共鳴]]
 
{{-}}
酢酸イオンが、なぜ、CH<sub>3</sub>COO で安定になるかというと、上記の図のように'''共鳴'''(きょうめい、resonance)してるから。
 
図の左側の構造か右の構造かのどちらかではなく、どちらでもなく、下図のように、重ね合わせたような構造になっている。
 
なお、説明の都合上、上記の図では、二つの状態のあいだを行ったり来たりしているかのように書いたが、しかし実際には、けっして図の左側の構造か右の構造かのどちらかではなく、どちらでもなく下図のように、重ね合わせたような構造になっている<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>。つまり、けっして上記の図1の左右の状態のあいだを振動しているわけではない<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>。
 
[[File:Resonance CH3COO delocalize.svg|thumb|300px|left|図2<br>酢酸イオンの共鳴<br />非局在]]
 
けっして「図1の右矢印と左矢印の反応が釣り合っている」といった状態ではなく、つまりたとえば当wiki『[[高等学校化学II/化学平衡]]』で習うようないわゆる平衡状態ではなく、そうではなくて、共鳴でとりうる状態とは最初から重ね合わせのような図2の別の状態だと言う意味である。
 
なお高校ではベンゼン環の共鳴を習うが、高校ではベンゼン環の共鳴に限ってだが、ベンゼン環の共鳴では単結合と二重結合のあいだの状態を取っているなどとサラっと説明されている。実は高校でされるこの説明は、かなり高度な考えなのである。
 
ややこしいことに、化学史ではベンゼン環の初期の研究者である化学者ケクレは、平衡状態のように解釈していたことが分かっている<ref>山口達明、『有機化学の理論 <<学生の疑問に答えるノート>>』、三共株式会社、2020年10月10日 第5版 第1刷発行、P33</ref>。だが現在の学会の定説では、平衡状態ではないというのが、共鳴の理論における定説である。
 
 
酢酸が水溶液中では、メチル基(CH<sub>3</sub>)の水素は電離せずに、カルボキシ基COOHのほうの水素が電離するのは、このような理由による。
 
{{-}}
[[File:Resonance CH3COO delocalize.svg|thumb|300px|left|酢酸イオンの共鳴<br />非局在<br>(再掲)]]
つまり、けして、どちらか片方の酸素イオンの周囲にだけに電子は局在していない。つまり、両方の酸素原子の周囲にわたって電子は存在している。このような状態を'''非局在化'''(delocalize)という。