「高等学校政治経済/経済/物価の動き」の版間の差分

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内閣府の統計を見ると、(リーマンショック後の時期である)2008年と2009年は物価指数が100%以上である(つまり、基準年よりもインフレ)。
デフレ・スパイラルの出典を追加。
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{{コラム|「デフレ・スパイラル」の本当の理解には微分積分数学が必要|
そもそも本来、経済学的には「デフレ・スパイラル」という言葉じたいには、不況か好況かは関係なく(どちらでもいい)、現在のデフレによって未来のデフレの程度が強化される現象のことが「デフレ・スパイラル」の本来の意味である可能性すらある。(※ 参考文献: 『小室直樹の経済原論』、初版は1998年11月、)。ただし、『小室直樹の経済原論』が出た当時、日本が不況だったので、小室はその原因をデフレに求めているが。
 
 
実際、小室の書籍で「インフレ・スパイラル」という表現も使われている。経済現象では、しばしば、賃金と物価がともに上昇しつづける現象がよく起こる。小室はそれを、典型的な「インフレ・スパイラル」の例だと述べている。<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P330</ref>。
本来の経済学とは、数式を用いて、具体的な数値や解を求めるものである。そうでないと、経済政策などで財務省や日本銀行などが、さまざまな予算などの具体的な金額を決めるための参考として経済学を参考にする際に、経済学が具体的な数値を出せなければ、なんの役にも立たない。なので、本来の経済学では、数式が必要なのである。
 
物価が上がるから賃金が上がるのか、それとも賃金が上がるから物価が上がるのか、よく分からないが、つまり、どっちが先に上がったのかは不明だが、ともかく、
なにも、決して物理学の公式のような永久不変の通用する方程式でなくてもよく、ここ数十年にしか通用しない近似式でもいいが、ともかく数式を立てないと、実務としては何の役にも立たない。
: ・・・ → 物価上昇 → 賃金上昇 → 物価上昇 → 賃金上昇 → ・・・
というような現象がよくあり、こういうのを小室は「インフレ・スパイラル」の一例とした。
 
デフレ・スパイラルは、上述のようなインフレ・スパイラルを逆にしたものにすぎない。
 
 
デフレ・スパイラルの対義語として「インフレ・スパイラル」という用語も1990年代の過去に小室の書籍などで提唱されており、このインフレ・スパイラルによって、1989年の不動産バブル崩壊までの物価上昇を説明する言説なども1990年代には あった。たとえば、
さて、さきほどの
: ・・・ → 物価上昇 → 賃金上昇 → 物価上昇 → 賃金上昇 → ・・・
を見ても、物価の変動と賃金の変動のどちらが先かが不明である。このため、物価と賃金のどちらが原因なのか、どちらが結果なのか、不明である。
 
つまり、物価と賃金のように相互作用するものは、「→」のような矢印を使って論理関係を記述するのが困難である。
 
 
しかし、数学や経済学は、このような現象であっても、普通に各種の数値を計算することができることが知られている。
 
たとえば経済学の公式
 
:国民所得 Y = 消費 C + 投資 I
 
は単なる一次方程式であるのにかかわらず、この数式を見るだけで、なんと国民所得と消費の関係について、仮に投資Iを一定値だとすれば、
 
「消費が上がると、それから国民所得も上がる」という順序の場合も「国民所得が上がると、消費が上がる」という順序の場合も、どちらも式で説明できる。
 
(証明は、実際に仮の数値を具体的に代入してみて計算すればいい。中学校レベルで証明できる。)
 
このように単純な方程式であっても、数学を使うことで、なんと相互関係も記述できてしまうのである<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P363</ref>。
 
 
国民所得の上昇を好景気だとすれば、
 
「Y=C+I」という式だけで、
 
:・・・国民所得の上昇 → 消費の上昇 → 国民所得の上昇 → 消費の上昇 → ・・・
 
というスパイラルを表せたことになる<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P365</ref>。
 
 
ところで、我々は物価を考察しているのであった。小室は特に物価の公式は例示してはいないが、本wikiで説明のために物価の式を非常に大雑把だが近似式であらわせば、
 
:物価=材料費+賃金
とでもなるだろう(だと仮定する。実際はもっと複雑だが)。
 
すると、これは一次方程式だから、上述の議論と同様に、スパイラルが起きることになる。
小室は物価と賃金のあいだにもスパイラルがあるとして、それを「物価・賃金スパイラル」と呼んでいる<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P369</ref>。
 
 
さきほどの議論では、物価がインフレかデフレかの議論はしていないことに注目せよ。(なお、小室の参考文献の該当ページ P.369 ではインフレを例に説明している。)
 
 
さて、日本の1980年代あたりまでのバブル経済では、
 
物価の上昇と(インフレ)、国民所得の上昇がおおむね連動していた。つまり
:・・・国民所得の上昇 → 物価の上昇 → 国民所得の上昇 → 物価の上昇 → ・・・
というスパイラルである。
 
なので、つまりデフレが起きれば、インフレの場合の逆の結果が起きるだろうという予想が、(バブル崩壊後の1990年代では)自然であろう。
 
すると、つまりバブル崩壊後の経済予想として、
 
:・・・国民所得の下落 → 物価の下落 → 国民所得の下落 → 物価の下落 → ・・・
 
という予想が自然である。これがデフレ・スパイラルの一例である。
 
 
小室は、参考文献として1992年の評論家・宮崎義一(みやざき よしかず)の『複合不況』をあげているが、しかし宮崎は「複合不況」という表現を用いている。(「デフレ・スパイラル」ではない)
 
なお、小室は経済学はフィードバックを伴うから実験できないと述べているが<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P362</ref>、しかし、それは間違いだろう。なぜなら、たとえば工業高校の電気系学科で習うフィードバック回路など、普通に実験ができるので、この理由は間違いだろう。
 
 
ともかく、上述のように、デフレ・スパイラルの対義語として「インフレ・スパイラル」という用語も1990年代の過去に小室の書籍などで提唱されており、このインフレ・スパイラルによって、1989年の不動産バブル崩壊までの物価上昇を説明する言説なども1990年代には あった。たとえば、
:: 地価が上がる → 値上がりを期待して不動産屋が買い占める → ますます地価が上がる → ますます不動産屋が土地を買い占める → ……
とか
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デフレ・スパイラルの本来の意味は、上記の土地と不動産屋の例の逆のような現象が起きるだろうという予想であり、つまり、
::物価が下がる → 投資家になんらかの行動を引き起す → 投資家のその行動の結果、ますます物価が下がる → 投資家にその行動がますます加速する → ますます物価が下がる → ……
というような予想が、本来の「デフレ・スパイラル」の意味であった。
 
数学では、このような2つの要素(たとえば「物価」と「貨幣への期待」)の変化予想のモデルは、微分方程式の変数を2つにすることにより(たとえば「物価」を変数 <math>x</math> と置き、「貨幣への期待」を変数 <math>y</math> として、関数 <math> f(x,y) </math> を微分積分で記述すればいい)、予想を数学的に記述できる可能性があるので、予想をのちに統計などによって検証もできるよう可能性がある。(ただし、そのような数式的にインフレやデフレを予想する方程式を作ろうとする試みは失敗した)
 
 
この本来の「インフレ・スパイラル」や「デフレ・スパイラル」の意味のほうが、経済学的には、不況かどうかの主観的な判断もなく客観的であり、そのため数式にもしやすく、本来の意味のほうが数理的にも経済学的にも望ましいかもしれない。
 
 
しかし、デフレ・スパイラルの用語が流行した1990年代、日本で不況が深刻化したので、当時の経済評論で、不況と本来の意味の「デフレ・スパイラル」を関連させる言説が流行していくうちに、いつしか世間では、「デフレ・スパイラル」の意味が変わり、不況とデフレが同時進行することに意味が変わっていった。
 
なので、検定教科書などにある「デフレ・スパイラル」の意味は、経済数学などでは、あまり意味も無い。
なので、検定教科書などにある「デフレ・スパイラル」の意味は、経済数学などでは、あまり意味も無い。本来の意味は、たとえば物理学では、質量の近い2つの天体の運動では、天体Aの位置によって重力を介して天体Bの運動が影響され、いっぽう天体Bの位置により同様に天体Aの運動も影響されるような現象を、数学の連立の微分方程式などで表せるように、「インフレ・スパイラル」や「デフレ・スパイラル」とは、物価と経済環境との関係を、数学の連立の微分方程式のようにモデル化しようとしたものであった。(ただし、そのような数式的にインフレやデフレを予想する方程式を作ろうとする試みは失敗した)