「高校化学 アルカリ金属」の版間の差分

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== 単体 ==
{{:高等学校化学I/金属元素の単体と化合物/Tab}}
=== 単体 ===
[[File:Lithium paraffin.jpg|right|200px|thumb|リチウムの保存. <br>リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。]]
[[File:Kalium.jpg|right|150px|thumb|切断したカリウム]]
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|Li||Na||K
|}
 
== アルカリ金属の化合物 ==
アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。
 
=== 水酸化物 ===
アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。
 
水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。
 
常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。
[[ファイル:Sodium_hydroxide.jpg|右|サムネイル|200x200ピクセル|水酸化ナトリウム]]
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を'''潮解'''(ちょうかい、deliquescenece)という。
 
水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。
 
また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})を生じる。
 
: 2NaOH + CO{{sub|2}} &#x2192; Na{{sub|2}}CO{{sub|3}} + H{{sub|2}}O
 
この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。
 
水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは化学工業などでは「カセイ ソーダ」(苛性ソーダ)とも呼ばれる。
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=== 炭酸塩・炭酸水素塩 ===
'''炭酸水素ナトリウム'''(NaHCO{{sub|3}})と'''炭酸ナトリウム'''(Na{{sub|2}}CO{{sub|3}})は共に白色の粉末である。工業的には'''アンモニアソーダ法'''('''ソルベー法'''とも呼ばれる)により製造される。アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法であるが、塩化カルシウムも同時に生産される。また、製造の過程で炭酸水素ナトリウムが得られる。
 
; アンモニアソーダ法(ソルベー法)
 
(※ 「アンモニアソーダ法」として多くの検定教科書に書いてある反応は、下記の2式。この2式を優先して覚えよう。)
 
: NaCl + NH{{sub|3}} + CO{{sub|2}} + H{{sub|2}}O &#x2192; NH{{sub|4}}Cl + NaHCO{{sub|3}}
: 2NaHCO{{sub|3}} &#x2192; Na{{sub|2}}CO{{sub|3}} + CO{{sub|2}} + H{{sub|2}}O
 
 
(※ 「アンモニアソーダ法」の詳細は以下のとおり。発展的な検定教科書には下記の詳細も書かれているので、これも高校範囲である。)
[[ファイル:アンモニアソーダ法反応過程.svg|右|サムネイル|550x550ピクセル|アンモニアソーダ法の反応経路図]]
 
; アンモニアソーダ法(ソルベー法)
 
# 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
#: CaCO{{sub|3}} &#x2192; CaO + CO{{sub|2}}
# 塩化ナトリウムの飽和水溶液と、アンモニアおよび1.で得た二酸化炭素を反応させ、塩化アンモニウムと炭酸水素ナトリウムを得る。
#: NaCl + NH{{sub|3}} + CO{{sub|2}} + H{{sub|2}}O &#x2192; NH{{sub|4}}Cl + NaHCO{{sub|3}}
# 炭酸水素ナトリウムを加熱すると炭酸ナトリウムが得られる。ここで発生する二酸化炭素は回収して2.の反応で再利用する。
#: 2NaHCO{{sub|3}} &#x2192; Na{{sub|2}}CO{{sub|3}} + CO{{sub|2}} + H{{sub|2}}O
# 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
#: CaO + H{{sub|2}}O &#x2192; Ca(OH){{sub|2}}
# 4.で得た水酸化カルシウムを2.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して2.の反応で再利用する。
#: 2NH{{sub|4}}Cl + Ca(OH){{sub|2}} &#x2192; CaCl{{sub|2}} + 2NH{{sub|3}} + 2H{{sub|2}}O
 
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==== 炭酸ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。
 
炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。
 
炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。
 
: Na{{sub|2}}CO{{sub|3}} &#x2192; 2Na{{sup|+}} + CO{{sub|3}}{{sup|2-}}
: CO{{sub|3}}{{sup|2-}} + H{{sub|2}}O ⇄ HCO{{sub|3}}{{sup|-}} + OH{{sup|-}}
 
炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 Na{{sub|2}}CO{{sub|3}}・10H{{sub|2}}O の無色透明の結晶が得られる。この Na{{sub|2}}CO{{sub|3}}・10H{{sub|2}}O の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 Na{{sub|2}}CO{{sub|3}}・H{{sub|2}}O となる。この現象は'''風解'''(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。
 
 
炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。
 
: Na{{sub|2}}CO{{sub|3}} + 2H{{sub|2}}SO{{sub|4}} &#x2192; Na{{sub|2}}SO{{sub|4}} + H{{sub|2}}O + CO{{sub|2}}↑
 
炭酸ナトリウムは、ガラスの製造などに用いられる。
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==== 炭酸水素ナトリウム ====
炭酸水素ナトリウム NaHCO<sub>3</sub> は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは'''重曹'''(じゅうそう)ともいう。
 
炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。
 
: 2NaH{{sub|2}}CO{{sub|3}} &#x2192; Na{{sub|2}}CO{{sub|3}} + H{{sub|2}}O + CO{{sub|2}}↑
 
(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)
 
炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。
 
また、強酸で、二酸化炭素を発生する。
 
: NaHCO{{sub|3}} + HCl &#x2192; NaCl + H{{sub|2}}O + CO{{sub|2}}↑
 
=== 塩化物 ===
[[ファイル:NaCl-zoutkristallen_op_Schott_Duran_100_ml.JPG|右|サムネイル|200x200ピクセル|塩化ナトリウムの結晶]]
水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。
 
: NaOH + HCl &#x2192; NaCl + H{{sub|2}}O
 
塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。
 
塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。
 
: 2NaCl &#x2192; 2Na↓ + Cl{{sub|2}}↑
 
塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。
 
: 2H{{sub|2}}O &#x2192; H{{sub|2}} + 2OH{{sup|-}}
 
溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることからイオン交換膜法と呼ばれる。