いっぽう、濃硝酸では、不動態となり、鉄の表面に皮膜ができて、それ以上は反応が進行しない。
=== 鉄(II)イオン水溶液の性質 ===
硫酸鉄(II) FeSO<sub>4</sub> などが、鉄(II)イオン Fe<sup>2+</sup> を含む溶液である。
鉄(II)イオン Fe<sup>2+</sup> を含む溶液に、水酸化ナトリウムなどの塩基を加えると、緑白色の水酸化鉄(II) Fe(OH)<sub>2</sub> が沈殿する。
:Fe<sup>2+</sup> + 2OH<sup>-</sup> → Fe(OH)<sub>2</sub> ↓
なお、この水酸化鉄は空気中で酸化され、赤褐色の水酸化鉄(III) Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> に変化する。
:4Fe(OH)<sub>2</sub> + O<sup>2+</sup> + 2H<sub>2</sub>O → 4Fe(OH)<sub>3</sub>
* ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)<sub>6</sub>] との反応
また、鉄(II)イオン Fe<sup>2+</sup> を含む溶液に、ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)<sub>6</sub>] の水溶液を加えると、濃青色の沈殿が生じる。このときの濃青色の沈殿は、「ターンブル ブルー」(「ターンブル青」ともいう、Turnbull's blue)と呼ばれる。
=== 鉄(III)イオン水溶液の性質 ===
鉄に塩酸を加えると、黄褐色の塩化鉄(II) FeCl<sub>2</sub> の水溶液になる。さらに、この塩化鉄(II)溶液に、塩素を通じて酸化すると塩化鉄(III) FeCl<sub>3</sub> の溶液になる。
この塩化鉄(III)の水溶液が、鉄(III)イオン Fe<sup>3+</sup> を含んでいる。なお、塩化鉄(III) FeCl<sub>3</sub> の水溶液から水を蒸発させて濃縮すると、塩化鉄・六水和物 FeCl<sub>3</sub>・6H<sub>2</sub>O の結晶が得られる。
さて、塩化鉄の水溶液に、塩基を加えると、赤褐色の水酸化鉄(III) Fe(OH)<sub>3</sub> の沈殿が生じる。
:Fe<sup>3+</sup> + 3OH<sup>-</sup> → Fe(OH)<sub>3</sub> ↓
* ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)<sub>6</sub>] との反応
また、鉄(III)イオン Fe<sup>3+</sup> をふくむ溶液に、ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)<sub>6</sub>] の水溶液を加えると、「紺青」(こんじょう)と呼ばれる濃青色の沈殿が生じる。
* チオシアン酸カリウムKSCNとの反応
Fe<sup>3+</sup> をふくむ溶液に、チオシアン酸カリウム KSCN を含む溶液を加えると、血赤色の沈殿を生じる。
== 強磁性体 ==
:(※ 高校の範囲内。チャート式化学の参考書で記述を確認)
鉄 Fe 、ニッケル Ni 、コバルト Co は、単体で磁性を帯びることができる金属である。
一方、銅やアルミニウムは、磁化されない。
鉄、ニッケル、コバルトのように、磁石になることができる物質を'''強磁性体'''(きょう じせいたい)という。
銅の特徴として、銅は電気の伝導性が良く、また熱の伝導性も良い。なお、一般に純金属の熱伝導性と電気伝導性は比例する。このため、金属中の電子(自由電子)が、その金属内で熱を伝える作用があるという説が、定説である。
== 銅 ==
特に、銅への水素の混入は、水素脆性(すいそぜいせい)という金属材料が脆くなる原因になるので、取り除かなければならない。
=== 銅の合金 ===
:(※ 高校の範囲内)
亜鉛との合金である黄銅、スズとの合金である青銅、ニッケルとの合金である白銅など、銅は合金としても、よく用いられる。
なお、一般に、金属は合金化によって硬さを増し、その分展性・延性などは減る。
銅の合金も同様に、単体よりも硬いが、展性・延性などは減っている。
※ くわしくは、合金に関する節で、説明する。
=== 銅の化学的性質 ===
この硫酸銅の粉末は、水を吸収すると、青色の水和物に戻る。なので、水の検出のさい、硫酸銅が活用されることがある。
==== 銅イオンの反応 ====
* 硫酸銅の水溶液
硫酸銅水溶液に、水酸化ナトリウムまたは少量のアンモニア水を加えると、青白色の水酸化銅 Cu(OH)<sub>2</sub> の沈殿が生じる。
:Cu<sup>2+</sup> + 2OH<sup>-</sup> → Cu(OH)<sub>2</sub>
この水酸化銅の沈殿に、アンモニア水を過剰に加えると、沈殿が溶けて、深青色のテトラアンミン銅(II)イオン [Cu(NH<sub>3</sub>)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup> の水溶液になる。
:Cu(OH)<sub>2</sub> + 4NH<sub>3</sub> → [Cu(NH<sub>3</sub>)<sub>4</sub>]<sup>2+</sup> + 2OH<sup>-</sup>
* 水酸化銅の沈殿の水溶液
水酸化銅(II)の沈殿をふくむ水溶液を加熱すると、黒色の酸化銅(II) CuO に変化する。
:Cu(OH)<sub>2</sub> → CuO + H<sub>2</sub>O
* 硫化水素との反応
銅イオンをふくむ溶液に硫化水素を通じると、黒色の硫化銅(II) CuS が沈殿する。
:Cu<sup>2+</sup> + S<sup>2-</sup> → CuS
== アルミニウム ==
2種類以上の金属を溶融して混合したあとに凝固させるなどした金属材料のことを'''合金'''(alloy)という。合金には、元のそれぞれの金属の性質をもつものもある。
一般に合金では、元の金属単体よりも硬さが増す。ここでいう「硬い」とは「やわらかくない」「変形しづらい」というような意味であり、必ずしも割れにくいとは限らないので注意。また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、というのが定説である。
(※ チャート式で昔から記述あり)また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、というのが定説である。
主要な合金の例を示す。
* ステンレス鋼
:組成:Fe=70%,Cr=20%,Ni=10%
:鉄にクロムとニッケルなどを混ぜたもの。
* ジュラルミン
:軽くて強度が大きいので航空機材料や自動車材料などに用いられる。
* 黄銅
:電気抵抗が大きい。電気抵抗材料に用いられる「ニクロム線」とは、この材料である。
== ブリキとトタン ==
鋼板にスズをメッキしたものを'''ブリキ'''、亜鉛をメッキしたものを'''トタン'''という。イオン化傾向が <chem>Zn > Fe > Sn</chem> のため、ブリキはスズが鉄の腐食を防いでいるが、メッキが傷つき鉄が露出した箇所があると鉄が腐食しやすい。トタンは、亜鉛が鉄より錆びやすいが、メッキが傷つき鉄が露出した箇所があっても亜鉛がイオン化するため、鉄の腐食を防いでいる。
ここで取り上げた例の他にも、かなり多くの合金がある。
== その他の合金 ==
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