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→代謝とATP: 代謝(たいしゃ、metabolism)とは、生物が生きていくために必要なエネルギーや栄養素を取り込んで利用する生命活動のことです。 代謝は、二つの主要な過程に分けられます。一つは、栄養素を取り込んでエネルギーを作り出す「異化いか」、もう一つは、生体内での物質の分解や再構築を伴う「同化どうか」です。 異化によって取り込んだ栄養素は、細胞内で分解され、その過程で生じたエネルギーがATPというエネルギー通貨として蓄積されます。 同化では、細胞内で必要なタンパク質や脂質、糖質などが合成されます。 代謝は、酵素というタンパク質の働きによって制御されています。酵素は、代謝に必要な化学反応を触媒して速度を上げたり、反応を特定の方向に促進する役割を持っています。 代謝は、生命活動を維持するために不可欠なプロセスであり、健康維持に重要な役割を果たしています。{{コラム|赤筋と白筋}} タグ: 2017年版ソースエディター |
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== 代謝とATP ==
代謝は、二つの主要な過程に分けられる。一つは、栄養素を取り込んでエネルギーを作り出す「{{Ruby|異化|いか}}」、もう一つは、生体内での物質の分解や再構築を伴う「{{Ruby|同化|どうか}}」である。
異化によって取り込んだ栄養素は、細胞内で分解され、その過程で生じたエネルギーがATPというエネルギー通貨として蓄積される。
同化では、細胞内で必要なタンパク質や脂質、糖質などが合成される。
=== ATP ===
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ADPにリン酸を結合させる際、エネルギーが必要になる。結合によって合成されたATPは安定であり、エネルギーを蓄えることができる。そして異化によってATPのリン酸結合が切れてADPとリン酸に分解される際に、エネルギーを放出する。
呼吸など異化
ATPは、アデノシンという物質に、直列に3つのリン酸がついている。ATPでのリン酸どうしの結合のことを'''高エネルギーリン酸結合'''といい、リン酸間の結合が切れるときにエネルギーを放出する。
しばしば、ATPは「エネルギー
アデノシンの構造は、アデニンという塩基にリボースという糖が結合したものである。
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[[File:Atpadp.jpg|thumb|300px|center]]
=== 異化
[[File:異化と同化.svg|thumb|400px|同化と異化。]]
代謝には異化と同化がある。
'''異化'''(いか、catabolism)は複雑な物質を分解してエネルギーを取り出す反応であり、呼吸もその一つである。
一方、'''同化'''(どうか、anabolism)は物質を合成する反応であり、エネルギーを蓄えたり、体を構成する物質を生産するために行われる。例えば、光合成による糖の合成は同化である。同化では、簡単な構造の物質から複雑な構造の物質が合成されますが、その際にはエネルギーが必要である。反応に用いたエネルギーの一部は、合成した物質に吸収される。しかし、同化によって合成物に吸収されたエネルギーを取り出して使うには、
同化には、炭酸同化と窒素同化がある。
同化のうち、二酸化炭素などの炭素無機物から有機物を合成することを'''炭酸同化'''という。多くの植物は、光合成による炭酸同化によって有機物を合成している。▼
▲'''炭酸同化
一方、'''窒素同化'''(nitrogen assimilation)は、タンパク質などの窒素化合物を合成する反応である。
=== 独立栄養生物と従属栄養生物 ===
独立栄養生物と従属栄養生物は、生物の栄養の取り方に基づく分類の一つである。
'''独立栄養生物'''(どくりつえいようせいぶつ、autotroph)は、異化と同化のプロセスを利用して生存している。
異化は、有機物を無機物に分解することで、エネルギーを取り出すことができる反応である。
一方、同化は、無機物から有機物を合成することで、生物の成長や繁殖に必要なエネルギーを得る反応である。
光合成を行う独立栄養生物は、光エネルギーを利用して、二酸化炭素と水からグルコースなどを合成する。
この反応は同化の過程であり、独立栄養生物が自らの生存に必要なエネルギーを得るために必要な反応である。
'''従属栄養生物'''(じゅうぞくえいようせいぶつ、heterotroph)は、他の生物から有機物を取り込んでエネルギーを得る必要がある。
従属栄養生物には、動物や菌類などが含まれる。
動物は、他の生物を食べることで栄養を取り込みる。
菌類は、他の生物や有機物を分解して栄養を取り込みる。
これらの反応は異化の過程であり、従属栄養生物が生存に必要なエネルギーを得るために必要な反応である。
=== 発展:筋肉とクレアチンリン酸 ===
クレアチンリン酸は、身体の筋肉や神経細胞内で、ATP(アデノシン三リン酸)を再生産するための重要な物質である。
ATPは、筋肉や神経細胞が動いたり、働いたりするために必要なエネルギー源だが、このATPは一度使われるとすぐに分解されてしまいる。
しかし、運動中にはATPを多く使うため、ATPの再合成が必要になる。
ここで、クレアチンリン酸が重要な役割を果たする。
休息中には、ATP濃度が高く、その結果、クレアチンリン酸の合成が進みる。
そして、運動中にATPが分解されADP(アデノシン二リン酸)が生成されると、酵素クレアチンキナーゼが働き、クレアチンリン酸とADPからすばやくATPが再合成される。
これによって、筋肉や神経細胞は再びATPを使ってエネルギーを得ることができ、運動や活動を続けることができるのである。
つまり、クレアチンリン酸は、身体のエネルギー代謝に欠かせない物質であり、特に高強度の運動や活動において重要な役割を果たしている。
{{コラム|赤筋と白筋|2=横紋筋には、異なる2種類の筋肉が含まれており、それぞれ赤筋と白筋と呼ばれています。これらの筋肉は、運動生理学の分野で研究されています。
赤筋と白筋の色の違いは、含まれるミオグロビン(酸素を貯蔵するたんぱく質)の量の違いによるものです。
白筋は、収縮は速いですが、持久力が低く、疲れやすいという性質を持ちます。例えば、カレイのような白身の魚をイメージすると良いでしょう。白身の魚は、海底に潜んでおり、敵に襲われた際には一瞬の筋収縮で逃げる必要があるため、短距離型の無酸素運動に適しています。
一方、赤筋は収縮は遅いですが、持久力が高いという特徴を持っています。遠洋をゆっくり泳ぐマグロの筋肉をイメージすると良いでしょう。赤筋は、長距離型の有酸素運動に適しています。
しかし、マグロの筋肉は赤筋だけではなく、赤筋と白筋が混ざり合っています。混合割合は遺伝的なもので、つまり、生まれつき長距離型の人と短距離型の人が存在するということです。競技者の赤筋と白筋の割合を調べたデータがありますが、これは訓練によって変わったわけではなく、自然に自分の筋肉に合った運動を選んだ結果です。
}}
== 酵素 ==
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