「民法第709条」の版間の差分

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:不法行為から生じた全損害について賠償させるのは、被告にとって過酷であることから、相当因果関係説によって損害賠償の範囲が制限される。
:判例は債務不履行責任における損害賠償の範囲の規定([[民法第416条|416条]])を不法行為に類推適用し、原則として「通常生ずべき損害」の賠償で足り、「当事者がその損害を予見し、または予見することができたとき」は「特別の事情によって生じた損害」まで賠償する必要があると考えている(富貴丸事件:大連判大正15年5月22日)。ただし、学説上は、有力な反対意見があり長年議論されている([[#特別事情|判例;大隈健一郎裁判官反対意見参照]])。
====== 損害賠償の範囲内とされるもの ======
;訴訟に要する弁護士費用:訴訟遂行は一般人には困難であり、不法行為のように被害者に非がない案件について弁護士費用は損害の範囲に入る([[#弁護士費用|判例16]])。
===== 損害賠償額の算定 =====
:物の滅失に関する損害賠償額は、物の交換価格による。交換価格の算定基準時が問題になるが、原則として物の滅失時とする。ただし被害者があらかじめその物の転売を予定していて、滅失後に高騰することを「予見し、又は予見することができたとき」([[民法第416条|416条2項]])のであれば、騰貴時とすることも考えられる(富貴丸事件判決)。
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#;仮処分命令が不当であるとして取り消された場合において仮処分申請人に過失があるとはいえないとされた事例
#:会社を被申請人とする仮処分命令が、同会社に対しては被保全権利が存在しないとして取り消された場合においても、右会社の取締役が会社の営業と競合する事業を個人として営んでいたため、仮処分申請人が被申請人を右取締役個人とすべきであるにもかかわらず、これを右会社と誤認した等判示の事実関係のもとにおいては、右仮処分命令を取り消す判決が確定しても、この一事をもつて、ただちに右申請人に過失があつたものとすることはできない。
# <span id="弁護士費用"></span>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55036 抵当権設定登記抹消登記手続等請求](最高裁判決 昭和44年2月27日)
#;不法行為による損害と弁護士費用
#:不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。
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##予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するための適切な問診を尽くさなかつたためその識別を誤つて実施されたインフルエンザ予防接種により接種対象者が死亡又は罹病した場合と結果の予見可能性の推定
##:インフルエンザ予防接種を実施する医師が、接種対象者につき予防接種実施規則4条の禁忌者を識別するための適切な問診を尽くさなかつたためその識別を誤つて接種をした場合に、その異常な副反応により対象者が死亡又は罹病したときは、右医師はその結果を予見しえたのに過誤により予見しなかつたものと推定すべきである。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53250 損害賠償](最高裁判決 昭和53年10月20日)[[自動車損害賠償保障法第3条]]
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53272 慰藉料](最高裁判決 昭和54年3月30日)
#;妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持ち同棲するに至つた女性の行為と右未成年の子に対する不法行為の成否
#:妻及び未成年の子のある男性が他の女性と肉体関係を持ち、妻子のもとを去つて右女性と同棲するに至つた結果、右未成年の子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなつたとしても、'''右女性の行為'''は、特段の事情のない限り、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53322 損害賠償](最高裁判決 昭和56年7月16日)[[民法第715条]],[[水道法第15条]]1項
#:;違法建築物についての給水装置新設工事申込の受理の事実上の拒絶につき市が不法行為法上の損害賠償責任を負わないとされた事例
#:市の水道局給水課長が給水装置新設工事申込に対し当該建物が建築基準法に違反することを指摘して、その受理を事実上拒絶し申込書をその申込者に返戻した場合であつても、それが、右申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申込をするよう一応の勧告をしたものにすぎず、他方、右申込者はその後一年半余を経過したのち改めて右工事の申込をして受理されるまでの間右申込に関してなんらの措置を講じないままこれを放置していたなど、判示の事実関係の下においては、市は、右申込者に対し右工事申込の受理の拒否を理由とする不法行為法上の損害賠償の責任を負うものではない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52148 損害賠償](最高裁判決 昭和58年9月6日) [[民法第412条]],自動車損害賠償保障法第3条
#;不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務が履行遅滞となる時期
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55192 損害賠償](最高裁判決 昭和62年7月10日)[[労働基準法第84条]]2項,[[労働者災害補償保険法第12条の4]],[[労働者災害補償保険法第14条]],[[労働者災害補償保険法第18条]],[[厚生年金保険法第40条]],厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条,[[民法第710条]]
#:不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償債務は、当該不法行為の時に履行遅滞となるものと解すべきである。
#:*当該不法行為時から法定利率による利息計算が始まる。
# [https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52197 損害賠償](最高裁判決 昭和63年9月6日)
#;訴えの提起が違法な行為となる場合
#:訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52214 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成元年4月11日)[[民法第722条]]2項,[[労働者災害補償保険法第12条の4]]
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56367 損害賠償](最高裁判決 平成5年3月24日)地方公務員等共済組合法(昭和60年法律第108号による改正前のもの)78条,地方公務員等共済組合法(昭和60年法律第108号による改正前のもの)93条
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55846 損害賠償](最高裁判決 平成5年3月25日)
#;危険物であることを知ってこれを運送する海上物品運送業者に対し右危険物の製造業者及び販売業者が危険性の内容等を告知する義務の有無
#:海上物品運送業者が危険物であることを知って運送品を運送する場合において、通常尽くすべき調査により、その危険性の内容、程度及び運搬、保管方法等の取扱上の注意事項を知り得るときは、右危険物の製造業者及び販売業者は、海上物品運送業者に対し、右の危険性の内容等を告知する義務を負わない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63011 損害賠償、同附帯](最高裁判決 平成5年6月11日)[[民法第623条]],[[労働基準法第13条]]
#;管理者に準ずる地位にある職員が組合員バッジの取外し命令に従わないため点呼執行業務から外して営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法とはいえないとされた事例
#:自動車営業所の管理者に準ずる地位にある職員が、取外し命令を無視して組合員バッジの着用をやめないため、同人を通常業務である点呼執行業務から外し、営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令は、右作業が職場環境整備等のために必要な作業であり、従来も職員が必要に応じてこれを行うことがあったなど判示の事情の下においては、違法なものとはいえない。
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52442 慰藉料](最高裁判決  平成6年2月8日)[[民法第710条]]
# [http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52482 損害賠償](最高裁判決 平成7年1月30日)商法第3編第10章保険<!--旧法-->