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[[法学]]>[[民事法]]>[[民法]]>[[コンメンタール民法]]>[[第3編 債権 (コンメンタール民法)]]
 
==条文==
([[w:損害賠償|損害賠償]]の範囲)
;第416条
# 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
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==解説==
*[[w:債務不履行|債務不履行]][[w:責任|責任]]によって賠償されるべき損害の範囲について規定している。一般に、第1項に規定する損害を'''通常損害'''、第2項に規定する損害を'''特別損害'''という。
*416条1項は、[[w:相当因果関係|相当因果関係]]の原則を示したものであり、同条2項は、相当因果関係を判断する際に基礎とすべき特別事情の範囲を示したものである(「刑法の折衷説」参照)。2017年改正で、予見又は予見可能性の事実ではなく、予見に関する法的評価が基準であることが明確化された。
*なお、[[w:不法行為|不法行為]][[w:責任|責任]]の[[w:損害|損害]]の範囲の確定についても[[w:類推適用|類推適用]]されるとするのが判例および通説である。ただし、強い批判がある([[民法第709条#特別事情|第709条の判例参照]])
===通常損害とされる例===
 
===特別損害===
====特別損害と認められるもの====
====特別損害と認められないもの====
#精神的損害([[#精神的損害|最判昭和55年12月18日]])
==参照条文==
 
==判例==
*#[httphttps://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?hanreiid=53751&hanreiKbnid=0257522 抵当権設定登記抹消等建物収去土地明渡請求] (最高裁判決 昭和37321111622日)
##'''土地賃貸人が土地を引き渡さないため右地上に建物を建て新たに営業を始める賃借人の計画が実行できなかつた場合と営業利益の喪失による損害の有無'''
*:債務の目的物の価格が履行不能後値上りをつづけて来た場合において、履行不能となつた際債務者がその事情を知りまたは知りえたときは、債務者が値上りする以前に目的物を他に処分したであろうと予想された場合でないかぎり、値上り時の価格による損害の賠償を請求しうる。
##:土地賃借人がその地上に建物を建て同所で新たに営業を営むことを計画していたにかかわらず、賃貸人が土地を引き渡さないため右計画を実行することができなかつたときは、賃借人には、<u>その営むことによりうべかりし利益の喪失による損害が生じたものと推定すべき</u>であつて、賃借人が未だ現実に営業を開始せず、またたとえ営業を開始しても必ず利益があつたとは限らないからといつて、右損害が生じなかつたものと認めるべきではない。
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54949&hanreiKbn=02 損害賠償請求](最高裁判決 昭和38年09月26日)[[民法第709条]]
##'''土地賃貸人の土地引渡義務の不履行と賃借人の右地上に建物を建て営業を営むことによりうべかりし利益の喪失による損害との間の因果関係'''
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54954&hanreiKbn=02 損害賠償請求、同附帯控訴](最高裁判決 昭和43年06月27日)国家賠償法1条1項,不動産登記法施行細則47条,[[民法第709条]]
##:土地賃貸人が土地を引き渡さないため、賃借人がその地上に建物を建て同所で営業を営むことによりうべかりし利益を喪失したときは、右損害は、賃貸人の債務不履行による特別事情による損害となりえないものではない。
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=51910&hanreiKbn=02 損害賠償請求](最高裁判決 昭和48年06月07日)[[民法第709条]],[[民事訴訟法第746条|民訴法第746条]],[[民事訴訟法第755条|民訴法第755条]],[[民事訴訟法第756条|民訴法第756条]]
##'''営業利益の喪失による損害の賠償請求訴訟と損害額算定の基礎たる事実の主張の程度'''
*[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57036&hanreiKbn=02 損害賠償請求事件](最高裁判決 平成11年12月20日)[[民法第709条]]
##:営業利益の喪失にいよる損害の賠償請求訴訟において、原告が、その営業とは、本件土地に店舗を建設して、そこで「北海道産の海産物を同地の生産者から直接に仕入れ、内地産の海産物はD魚市場で仕入れ、従業員は壮年の男一人女二人および老年の女一人の家族四人がこれにあたり、小僧等は必要があれば雇い入れる」という程度の規模による海産物商を営むにあつた旨を主張したときは、その主張の事実を基礎として通常の場合に予想される営業利益を算定することは不可能ではないから、損害額算定の基礎たる事実についての具体的主張を欠くものとはいえない。
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53583 損害賠償請求] (最高裁判決 昭和36年4月28日)
#;売買契約の価格と履行期における市価との差額は通常生ずべき損害といえるか。
#:売買の目的物の価格が謄貴した場合に、契約価格と履行期における市価との差額は、<u>債務不履行により通常生ずべき損害</u>と解すべきである。
*#[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=5494953751&hanreiKbn=02 損害賠償抵当権設定登記抹消等請求](最高裁判決  昭和383709112616)[[民法第709条]]
#;債務の履行不能後目的物の価格が値上りした場合に請求しうる損害賠償額。
*#:債務の目的物の価格が履行不能後値上りをつづけて来た場合において、履行不能となつた際債務者がその事情を知りまたは知りえたときは、債務者が口頭弁論終結時の価格まで値上りする以前に目的物を他に処分したであろうと予想された場合でないかぎり、値上り右終結時において処分するであろうと予想された場合でなくても、債権者は、右終結時の価格による損害の賠償を請求しうる。
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53701 占有回収請求](最高裁判決 昭和38年1月25日)地代家賃統制令3条、12条の2
#;統制違反の権利金および家賃の支出が債務不履行に基づく損害とされた事例。
#:賃貸人の債務不履行となる家屋明渡の強制執行により住居を失つた賃借人が、これを他に入手するため、地代家賃統制令に違反する権利金および家賃を支出した場合、その支出が当時の社会情勢からすれば一家の住居を入手するため真にやむをえないものと認められるときは、右支出は賃貸人の債務不履行に基づく損害というべきである。
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51957 土地建物所有権移転登記等請求、建物明渡等請求、土地建物所有権移転登記等ならびに建物明渡請求に対する反訴請求各事件、同附帯上告事件] (最高裁判決 昭和47年4月20日)
#;買主が自己の使用に供するために買い受けた不動産の価格が売主の所有権移転義務の履行不能後も騰貴を続けている場合と右義務の履行不能による損害賠償額の算定の基準時
#:売買契約の目的物である不動産の価格が売主の所有権移転義務の履行不能後も騰貴を続けているという特別の事情があり、かつ、履行不能の際に売主がそのような特別の事情の存在することを知つていたかまたはこれを知りえた場合には、買主が右不動産を転売して利益を得るためではなくこれを<u>自己の使用に供するために買い受けたものであるときでも</u>、買主は、売主に対し、右不動産の<u>騰貴した現在の価格を基準として算定した損害額の賠償を請求することができる</u>。
#<span id="精神的損害"></span>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53262 鹿島建設損害賠償請求] (最高裁判決 昭和55年12月18日)
#;安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族と固有の慰藉料請求権の有無
#:安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない。
*#[httphttps://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?hanreiidid=57036&hanreiKbn=0252587 損害賠償請求事件] (最高裁判決 平成11年1222025日)[[民法第709条]]
##'''医師の不作為と患者の死亡との間の因果関係の存否の判断と患者が適切な診療行為を受けていたとした場合の生存可能期間の認定'''
##:医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の死亡との間の因果関係は、医師が右診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度のがい然性が証明されれば肯定され、患者が右診療行為を受けていたならば生存し得たであろう期間を認定するのが困難であることをもって、直ちには否定されない。
##'''医師が肝硬変の患者につき肝細胞がんを早期に発見するための検査を実施しなかった注意義務違反と患者の右がんによる死亡との間の因果関係を否定した原審の判断に違法があるとされた事例'''
##:肝硬変の患者が後に発生した肝細胞がんにより死亡した場合において、医師が、右患者につき当時の医療水準に応じた注意義務に従って肝細胞がんを早期に発見すべく適切な検査を行っていたならば、遅くとも死亡の約六箇月前の時点で外科的切除術の実施も可能な程度の大きさの肝細胞がんを発見し得たと見られ、右治療法が実施されていたならば長期にわたる延命につながる可能性が高く、他の治療法が実施されていたとしてもやはり延命は可能であったと見られるとしながら、仮に適切な診療行為が行われていたとしてもどの程度の延命が期待できたかは確認できないとして、医師の検査に関する注意義務違反と患者の死亡との間の因果関係を否定した原審の判断には、違法がある。
#[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37200 損害賠償請求本訴,建物明渡等請求反訴事件] (最高裁判決 平成21年1月19日)
#; 店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例 - 【通常損害の範囲】
#:ビルの店舗部分を賃借してカラオケ店を営業していた賃借人が,同店舗部分に発生した浸水事故に係る賃貸人の修繕義務の不履行により,同店舗部分で営業することができず,営業利益相当の損害を被った場合において,次の1〜3などの判示の事情の下では,遅くとも賃貸人に対し損害賠償を求める本件訴えが提起された時点においては,賃借人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を執ることなく発生する損害のすべてについての賠償を賃貸人に請求することは条理上認められず,賃借人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない。
#:#賃貸人が上記修繕義務を履行したとしても,上記ビルは,上記浸水事故時において建築から約30年が経過し,老朽化して大規模な改修を必要としており,賃借人が賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。
#:#賃貸人は,上記浸水事故の直後に上記ビルの老朽化を理由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしており,同事故から約1年7か月が経過して本件訴えが提起された時点では,上記店舗部分における営業の再開は,実現可能性の乏しいものとなっていた。
#:#賃借人が上記店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,それ以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,上記浸水事故によるカラオケセット等の損傷に対しては保険金が支払われていた。
 
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|[[民法第417条]]<br>(損害賠償の方法)
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[[category:民法|416]]
[[category:民法 2017年改正|416]]