「高等学校物理/力学」の版間の差分

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M wikipediaへのリンクなどを追加しました。
wikipediaへのリンクを追加しました。種々の発展項目(特に微積分)を追加しました。
317 行
 
ここでは、初等的な平面上の運動の1つとして、円運動を扱う。
円運動は[[w:単振り子]]の運動の類似物としても重要である。それとともに、
ここでは[[w:万有引力]]による運動も扱う。万有引力はいわゆる[[w:重力]]と同じ力であり、
物体と物体の間に必ず生じる力である。一方これらの力は通常非常に弱いため、
惑星のように大きな質量を持った物体の運動にしか関わらない。
ここでは、太陽のまわりを回転する惑星のような大きなスケールの運動も
扱う。このような運動は通常円に近い軌道となることがある。このため、惑星の運動を理解する上で、円運動を理解することが重要である。
そのような惑星の運動を理解する上でも、円運動を理解することが重要である。
 
====円運動と単振動====
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x(t),y(t)
</math>
で表わされる。特に円軌道を表わす関数は[[高等学校数学II いろいろな関数]]で扱った[[w:三角関数]]に対応している。
 
扱った三角関数に対応している。
*発展 三角関数を用いた円の表示
ここで、円運動が三角関数を用いて表されることを述べたが、このことは[[高等学校数学C]]の'''媒介変数表示'''を用いている。媒介変数表示について詳しくは、対応する項を参照してほしい。
 
半径r[m]の円上を等しい速度で、円運動する物体の運動を記述することを考える。
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</math>
によって書かれる。ただし、このとき<math>\omega</math>は角速度と呼ばれ単位は[rad/s]で
与えられる。ただし、ここで[rad]は[[w:ラジアン]]であり、[[w:弧度法]]によって
角度を表わしたときの単位である。弧度法については
[[高等学校数学II いろいろな関数]]を参照。角速度は円運動をしている物体が
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T = \frac {2\pi} \omega
</math>
で与えられる量を[[w:周期]]といい、周期の単位は[s]である。周期は物体が何秒間ごとに
円状を1周するかを表わす量である。この場合には物体はT[s]ごとに円状を1周する。更に、
1周する。
更に、
:<math>
f = \frac \omega {2\pi}
</math>
[[w:振動数]]と呼ぶ。振動数は周期とは逆に、単位時間当たりに物体が円状を何周するかを
数える量である。振動数の単位には通常[Hz]を用いる。これは、[1/s]に等しい単位である。
ある。
また、周期Tと、振動数fは、関係式
:<math>
381 ⟶ 379行目:
</math>
を満たす。この式はある円運動をしている物体について、その物体の円運動の
周期に対応する時間の間には、物体は円状を1周だけするということに対応する。
対応する。
 
 
392 ⟶ 389行目:
y = r \sin (\omega t +\delta)
</math>
の式で<math>\delta</math>は物体の位置の[[w:位相]]と呼ばれ、物体が円状のどの点にいるかを示す
値である。
 
402 ⟶ 399行目:
v _ y = r \omega \cos \omega t
</math>
かか与えられる。この式と、後の円運動の加速度の導出については、後の発展を参照。ここで、物体の速さをvとすると、
:<math>
v = \sqrt {v _x ^2 +v _x ^2}
</math>
:<math>
= \sqrt {r^2 \omega^2 (\sin^2 \omega t +\cos^2 \omega t) }
</math>
:<math>
= r \omega
</math>
431 ⟶ 424行目:
= 0
</math>
となり、円運動をしている物体の速度と円運動の中心を原点としたときの座標は直交していることが分かる。更に、円運動をしている物体の加速度は、
直交していることが分かる。
更に、円運動をしている物体の加速度は、
:<math>
a _x = -r \omega^2 \cos \omega t
446 ⟶ 437行目:
に対応しており、円運動をおこなう物体の加速度は、円運動をする物体の座標と
ちょうど反対向きになることが分かる。
 
*発展 円運動の速度と加速度
ここでは、円運動の速度と加速度を与えたが、この値は物体の運動が決まれば決まる値なので、円運動の式から計算できる。ただ、実際にこれらの式を得るためには、円運動の式の'''微分'''を行う必要があるため、ここでは詳しく扱わない。導出については、[[古典力学]]を参照。
 
*問題例
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*TODO
[[w:向心力]][[w:遠心力]]
 
===== 単振動=====
 
円運動と関係の深い物体の運動として、[[w:単振動]]があげられる。単振動は
あらゆる振動現象の基本になっており、応用範囲が広い運動である。
円運動と同様、単振動も三角関数を用いて運動が記述される。
また、周期や位相がある点も円運動と同じである。また、
単振動は波動に関わる現象とも関係が深く、位相、振幅などの量を共有している。
享有している。
 
ここからは、単振動をする物体の性質をより詳しく見て行く。
単振動は様々な情况であらわれるが、もっとも単純なのは[[w:フックの法則]]
支配されるバネに接続された物体の運動である。
ここでは、バネ定数kのバネに質量mの物体を接続するとする。
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a = - \frac k m x
</math>
で与えられる。このように、加速度と物体の座標が負の比例係数を持って比例関係にある式が、単振動の運動方程式である。
比例関係にある式が、単振動の運動方程式である。
このとき、物体の運動を座標で表わすと、
:<math>
x = A \sin (\omega t +\delta)
</math>
で表わされる。
で表わされる。<math>\sin</math>関数は関数の値の増加に伴って周期的な振動を行なう関数なので、
 
*発展 単振動の運動方程式
ここで、単振動の運動方程式と、単振動の運動の式を与えたが、実際には単振動の運動の式は運動方程式から導出できる。ただし、これについては[[w:微分方程式]]を扱う必要があるので、ここでは詳しく扱わない。導出については、[[古典力学]]を参照。
 
で表わされる。<math>\sin</math>関数は関数の値の増加に伴って周期的な振動を行なう関数なので、
物体は、x=0のまわりで周期的な振動をすることが分かる。
ただし、上の式の中でAは[[w:振幅]]と呼ばれ、物体の振動の範囲を表わす量である。
また、<math>\omega</math>,<math>\delta</math>は円運動のときと同様単振動の場合でも角振動数、位相と呼ばれる。
ただし、この場合においてはこれらの量は物体の円運動ではなく、物体の振動に
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**解答
 
もが固定されている位置から鉛直に下ろした直線と、物体がつながれている
ひもがなす角度を
:<math>
609 ⟶ 606行目:
となることが分かる。
 
これらの結果から割合初等的な観察[[小学校理科]]の結果である
:単振り子について
::物体の重さは振り子の周期と関係しない。
::振り子のひもの長さが長くなるにつれて、振り子の周期は長くなる。
の実験事実が運動方程式の結果と一致することが確かめられる。
 
 
620 ⟶ 617行目:
この章では、万有引力による運動を扱う。万有引力は全ての物体の間に存在しているが
その力が媒介する運動として有名なものは、太陽の回りを回転する地球の運動や、
地球自身の回りを回転する月の運動である。実際にはこのようななにかの回りを
回転するような構造は宇宙全体に広く見られる。
 
例えば、空に見られる星は[[w:恒星]]と呼ばれるが、これらの星の回りにも太陽に対する地球と同じように、
惑星が回りを回っていると考えられ、実際にそのような惑星が確認された恒星もある。([[w:系外惑星]]参照。)
恒星と呼ばれるが、これらの星の回りにも太陽に対する地球と同じように、
惑星が回りを回っていると考えられ、実際にそのような惑星が確認された恒星も
ある。([[w:系外惑星]]参照。)
 
このように宇宙の中で万有引力による回転運動は広く観測される。ここではこのような
運動は物体間に働くどのような力によって記述されるかを見ていく。
 
*発展 万有引力発見の歴史
歴史的には、逆にこのような物体の間の運動を説明するような力を考えることで
物体間に働く力が発見された。歴史について詳しくは[[w:ニュートン]]などを参照
 
 
=====万有引力の法則 =====
まずは、物体間に働く[[w:万有引力]]の法則を述べる。種々の観測の結果によると、質量<math>m_1</math>を持つ物体と質量<math>m_2</math>を持つ物体の間には
:<math>
f = -G \frac{m _1 m _2}{r^2}
</math>
で表わされる力が働く。(ここでGは[[w:重力定数]]であり、値は?である。)この力は物体間の距離の2乗に逆比例する力である。また、力にかかる係数Gは非常に小さいため、恒星のように極めて大きいスケールの物体の間にしか観測できるほどの力は生じない。
<!--
また、重力はこのあとに続く電磁気力と比べて理論的に取扱うのが難しく、
また、重力定数の小ささのために実験的な検証も進めづらいため、今にいたっても
重力の逆2乗則を説明する実験的に検証された完全な理論は知られていない。
-->
 
このような力を仮定したとき、この力を向心力として、物体はより大きい質量の物体のまわりを回転することが出来る。ただし、実際には事実として物体は2物体の重心のまわりを回転しているのだが、そのことは指導要領の範囲外である。(詳しくは、[[古典力学]]参照。)また、万有引力は円運動だけではなく、実際には軽い物体が重い物体のまわりを[[w:楕円]]運動することも許すことが知られている。(詳しくは、[[古典力学]]参照。)観測事実として実際に、太陽の回りの地球の運動は円運動に近い楕円運動であることが知られている。
675 ⟶ 667行目:
 
地球表面での重力と同様、万有引力についてもこの力によって生じる
[[w:位置エネルギー]]を考えることができる。位置エネルギーについては、既に[[高等学校理科 物理I]]で扱った。ここで現われる位置エネルギーは逆2乗力に共通なものであり、次の[[w:電磁気力]]でも現われる。
逆2乗力に共通なものであり、次の電磁気力でも現われる。
 
質量Mの物体からrの距離に質量mの物体が存在するとする。ただし、Mはmよりはるかに
おおきいとする。このとき、質量mの物体の位置エネルギーは
:<math>
U(r) = -G \frac {mM} r
697 ⟶ 688行目:
**問題
 
ある惑星上にある物体を宇宙の無限遠まで到達させるために宇宙船に地球惑星上で
与えなくてはいけない速度はどのように表わされるか。ただし、計算については
最初に宇宙船が出発した惑星以外の天体からの影響は無視するとする。
また、地球の惑星の半径はR、 惑星の質量はMとする。
 
**解答