「教唆犯」の版間の差分

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[[法学]]>[[刑事法]]>[[刑法]]>[[刑法総論]]>[[修正された構成要件:共犯(その2)]]>[[教唆犯]]
== 条文 ==
 
第61条
第61条  '''#人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。'''
 
   2  '''#教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。'''
 
== 要件 ==
 
=== 故意 ===
*教唆の故意につき、通説では、自己の教唆行為により、被教唆者が特定の犯罪を犯すことを決意し、かつその実行に出ることを表象認容することとされる。なお、少数説として教唆の故意とは、「犯罪を惹起させる意思」かつ「[[構成要件的故意]]」とするものがある(木村)
 
なお少数説として、教唆の故意とは、「犯罪を惹起させる意思」かつ「[[構成要件的故意]]」とするものがある(木村)。
==== 設例 ====
 
==== 「未遂の教唆」の設例 ====
#甲は乙に、金庫の中が無一物であることを知りながら、現金が入っていると偽り窃盗を教唆した。
#現実に現金が入っていたが、甲は乙の着手後、直ちにその犯行を阻止する意図であった。
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##[[主観的危険犯]]、[[抽象的危険犯]]の立場からは未遂犯が成立。しかしながら、教唆者によって形成された意思の形成時点において、そもそも危険はなかったのだから、[[不能犯]]となり不可罰。したがって、甲の行為は(窃盗において)可罰性がない。
##具体的な危険が発生している。<br>(教唆犯成立)この場合の「結果」とは、正犯に未遂行為を行わせることにより結果発生の具体的危険を生ぜしめたことであり、このことについては教唆者も認識しており、主観的要件に欠くところはない。従って、教唆犯が成立する。<br>(教唆犯不成立)教唆者は、「結果」を認識しているが、同時に「結果阻止」を企図しているので「結果不発生」をも認識している。正犯による結果発生につき、未必の故意すらなければ、教唆犯として罪を問い得ない。(cf.「[[アジャン・プロヴォカトゥール]]」)
 
===教唆行為===
 
===被教唆者の実行行為===
被教唆者が犯罪の実行に着手しなければ、教唆者は処罰されない。共犯従属性説の帰結である。
 
===因果関係===
教唆行為と被教唆者の実行行為との間には因果関係が必要とされる。
 
==共犯の従属性==
===実行従属性===
'''共犯独立性説'''は、実行従属性を不要とする。すなわち、教唆犯が処罰されるためには、正犯が犯罪の実行に着手する必要はない。
 
'''共犯従属性説'''は、実行従属性を必要とする。すなわち、正犯が犯罪の実行に着手するまで、教唆犯の処罰はできないとする('''教唆の未遂''')。
 
===要素従属性===
共犯従属性説を前提として、次に、教唆者が処罰されるためには、正犯の行為が犯罪の処罰要件をどれだけ備えている必要があるかを検討する。以下の説の対立がある。
 
* '''最小従属性説'''は、正犯の行為が構成要件に該当すれば足りるとする。
* '''制限従属性説'''は、正犯の行為が構成要件に該当し、かつ、違法であれば足りるとする。
* '''極端従属性説'''は、正犯の行為が構成要件に該当し、違法、かつ、有責であることを必要とする。
 
いずれの説に従うにせよ、上記基準に従って教唆犯として処罰されない場合は、間接正犯の成立を検討するのが判例の立場である。たとえば、責任無能力者に教唆して犯罪を実行させた場合、極端従属性説に従えば、教唆犯は成立しない。しかしその場合は、実行行為者を道具的に利用しているとして、間接正犯が成立する可能性が高い。
 
==共犯と実行の着手時期==
 
[[category:刑法総論|きようさはん]]