「高等学校化学I/物質と原子」の版間の差分

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=== イオン ===
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原子は電気的に中性であるが、物質を形成する際に電子を受け取ったり失ったりして電荷をもつことがある。
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このように、電荷をもつ粒子のことを'''イオン'''という。特に正の電荷を持つ粒子を'''陽イオン'''、負の電荷を持つ粒子を'''陰イオン'''という。
! style="text-align: center;" | 様々なイオンのモデル
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| [[Image:Ammonium-3D-vdW.png|thumb|center|160px|アンモニウムイオン(NH<sub>4</sub><sup>+</sup>)のモデル]]
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| [[Image:Sulfate-3D-vdW.png|thumb|center|160px|硫酸イオン(SO<sub>4</sub><sup>-</sup>)のモデル]]
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| [[Image:Hydronium-3D-vdW.png|thumb|center|160px|オキソニウムイオン(OH<sub>3</sub><sup>+</sup>)のモデル]]
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| [[Image:Sodium-chloride-unit-cell-3D-ionic.png|thumb|center|right|160px|塩化ナトリウム(NaCl)のモデル。ナトリウムイオン(Na<sup>+</sup>)と塩化物イオン(Cl<sup>-</sup>)が交互に並んでいる。]]
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最外殻電子に含まれる電子の数が8個(K殻のみ2個)である状態を'''閉殻構造'''と呼ぶ。原子は、電子を受け取ったり、他の原子に電子を渡したりして、閉殻構造を作ろうとする。これは、閉殻構造が非常に安定した形であるためだと考えられている。原子は通常の状態であれば電荷的に中性だが、このように電子を渡したり受け取ったりして粒子全体として電荷をもつことがある。このように、電荷を持った粒子のことを'''イオン'''という。特に正の電荷を持つ粒子を'''陽イオン'''、負の電荷を持つ粒子を'''陰イオン'''という。
; 陽イオン : 正の電荷を持ったイオン。
; 陰イオン : 負の電荷を持ったイオン。
価電子の少ない原子は、電子を失って陽イオンになりやすい。逆に価電子の多い原子は、電子を受け取って陰イオンになりやすい。このように失ったり受け取ったりした電子の数を、そのイオンの'''価数'''という。価数が1のときそのイオンは'''1価'''であるといい、以下2価、3価と数える。電子の電荷は-eであるが、ここでは、電子一つを基準にしていることに注意。
 
[[Image:Electron shell 011 Sodium.svg|180px]]
価電子の少ない原子は、電子を失って陽イオンになりやすい。
[[Image:Electron shell 017 Chlorine.svg|180px]]
逆に価電子の多い原子は、電子を受け取って陰イオンになりやすい。
このように失ったり受け取ったりした電子の数を、そのイオンの'''価数'''という。
価数が1のときそのイオンは'''1価'''であるといい、以下2価、3価と数える。
 
左の図はナトリウム原子(Na)のボーアモデルである。ナトリウムの原子番号は11であるため、K殻に2個、L殻に8個、M殻に1個の電子が含まれる。電子が11個あり、この時点では原子核の電荷+11eと電子の電荷-11eが相殺し合って、原子全体としては電荷的に中性である。しかし、価電子数が1で、閉殻構造を取れていない。右の図は塩素(Cl)のボーアモデルである。塩素の原子番号は17であるため、K殻に2個、L殻に8個、M殻に7個の電子が含まれる。これもやはり電荷的に中性であるが、閉殻構造を取れていない。最外殻電子の数、すなわち価電子数は7である。
イオンとなった原子は、その元素記号の右上に価数と符号をつけることで表現する。
このような表現法を'''イオン式'''という。
 
[[Image:Legame ionico fra sodio e cloro.svg|400px]]
例:Mg<sup>2+</sup>……2価の陽イオンとなったマグネシウム
 
そこで、この二つの原子がある条件下でお互いに電子を受け渡すことが起こる。上の図は、最外殻電子のみを描いたボーアモデルで、電子の受け渡しを表現したものである。ナトリウム原子は原子核の+11eと、ひとつ数の少なくなった電子による-10eで、全体として+eの電荷をもっていることになる。塩素は、ナトリウムから電子を一つ受け取って、全体で電子が一つ多いので、-eの電荷をもっていることになる。イオンは普通、このようにして作られると考えられている。また、NaCl全体で見れば電荷的に中性であり、ナトリウムイオンも、塩化物イオンも、ともに閉殻構造を取っている。
 
イオンとなった原子は、その元素記号の右上に価数と符号をつけることで表現する。このような表現法を'''イオン式'''という
 
例:Mg: Mg<sup>2+</sup>……2:<small>2価の陽イオンとなったマグネシウム</small>
 
これは、2価の陽イオンとなったマグネシウムをイオン式で表現したものである。数字が先に来ることにも注意したい。また、+1や-1のときには、数字は書かずに符号のみを付けることになっている。
 
: H<sup>+</sup>:<small>水素イオン</small>
 
イオンは必ずしも一つの原子からなるわけではない。原子がいくつか集まった原子団<small>( もしくは、分子 )</small>でも、様々な理由からイオンになる。
; 単原子イオン
逆に価電子の多い: 原子は、一粒が電子を受け取ったり渡したりしイオンになりやすいったもの
; 多原子イオン
: 二個以上の原子が結合した原子団に、電子が結合したり、取れたりしてできたもの。
 
: NH<sub>4</sub><sup>+</sup>:<small>アンモニウムイオン</small>
: OH<sup>-</sup>:<small>水酸化物イオン</small>
 
<small>一般的に、陽イオンは「~イオン」、陰イオンは「~化物イオン」と呼ばれる。また、多原子イオンであれば、それがイオンになる前の分子の名前に「~イオン」や「~化物イオン」と付けて呼ばれることが多い。上述の例で言うなら、アンモニアのイオンはアンモニウムイオンである。</small>
 
=== 分子からなる物質 ===