「高等学校化学I/物質と原子」の版間の差分

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; 元素 : '''元素'''は、物質の構成成分である。
この元素は、現在で百種類以上見つかっており、それぞれに名前と、番号、略記号が割り当てられている。略記号は'''元素記号'''と呼ぶ。元素記号はラテン語、英語、ドイツ語の元素名から1文字または2文字を取って表される。一文字目は必ず大文字であり、二文字目は必ず小文字である。後で詳しく述べるが、物質を表す際に、2つ以上の元素記号を並べて書くことがあるので、大文字・小文字を正しく使い分けなければ混乱してしまう。以下に、代表的な元素の元素記号を右の表に記したので、参考にしてほしい。詳しい元素記号の表は、[[#関連項目|関連項目]]に掲載しておいた。
 
== 物質の分類 ==
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純物質は、物理的操作(叩く、引っ張る、ろ過する、といった操作)によってそれよりも小さい構成パターンに分けることができないようなパターンの集まりだと考えられる。ここで言うパターンとは、元素の組み合わせのことである。単体や化合物は、物理的な操作だけではその構成を変えることができない。例えば、水は蒸発させても凍らせても叩いてもろ過しても、水のままである。しかし、電気分解を行うことで水素と酸素に分解できることは、中学校で学習した通りだ。具体的には、前者を物理的操作、後者を化学的操作と呼ぶ。
; 混合物 : 純物質に対して、物理的操作によって分類できる可能性がある物質を、'''混合物'''と言う。
混合物は、単体や化合物が混ざり合っている物質である。液体や気体が容易に想像できるが、固体にも混合物は多く存在する。多くの岩石は混合物である。火成岩にさまざまな鉱石が含まれていることは中学校で学習したことであろう。鉱石ひとつひとつは、一部には不純物が含まれることはあるものの基本的には純物質であり、それらが集まってできている火成岩は混合物である。ほかにも、塩酸は塩化水素(HClHCl)と水(H<sub>2</sub>O)の混合物であるなど、化合物は非常に多い。
 
<small>純物質と混合物の分類の定義自体に対しては、直観的な理解をしていればかまわない。しかし、ある物質が純物質か混合物かということはしっかりと把握する必要がある。</small>
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原子が物質を構成する粒子であるのに対し、元素は物質がどんな性質のものの集まりであるかを示す。「水は水素元素と酸素元素からできている」というのは「水が水素という基本要素と酸素という基本要素から成り立っている」という意味である。この、基本要素とは原子の集合のことでもあるため、元素と原子は非常に意味が似ている。
 
意味が似ている上に、日本語では音が似ていることもあり、しばしば混同されるが、両者はまったく別の概念であり、英語にすると元素は「element」、原子は「atom」と、まったく異なる単語である。元素は世界を形作る要素のことであり、原子はそれ以上分割できない最小の単位である。元素が最小の粒のことを言っているのに対し、元素は構成しているものの種類のような意味ものを指すのとどまっている。また対し、原子の意味はそれ自体には分類の意味を含まれていない。ず、単に最小の粒であの意味にとどまっている。これが、元素と原子の意味の違いである。
 
実際には、元素は原子の種類をす語であるという認識が普通である。また、発見当初は最小単位だと思われていた原子は、素粒子と呼ばれるさらに小さな粒から出来上がっていて、最小の単位ではないことがわかっている。しかし、通常の化学反応や物質の性質を見ていく中で、素粒子のことまで考える必要はないので、ここでは扱わない。原子がどのような構造をしているかということについては、次のセクションで解説していく。
 
<small>高等学校では、素粒子については[[高等学校理科 物理II]]で扱う。</small>
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<small>この、原子と元素の言葉の違いについては、できるだけしっかりと理解しておくことができれば、後々の内容で混乱しないと思われる。どうしてもイメージがつかめないのなら、読み飛ばしてもかまわない。</small>
 
基本的に<!--単原子分子の存在を加味して-->、原子がいくつか結びつきあったり、電荷をもつことで'''分子'''が生じ、原子分子が電荷をもつことで'''イオン'''が生まれる。これらの語について簡単に説明しておく。この、分子やイオンも、物質を構成する単位であるが、詳しくは後述する。
; 分子 : 分子は種類の原子が結びついた、原子と比較して大きな粒。
; イオン : イオンは、原子や分子がある条件のもとで電荷を持った粒。
 
== 原子の構造 ==
原子とは、物質を構成する粒子一粒の呼び名である。膨大な数の原子が相互に結び付きあって、私たちの体や、他の様々なものは形作られている。原子そのものも、素粒子と呼ばれる粒が構造的に結びついて構成されているが、化学では、原子を基本単位としてその性質を分析していく。
 
<small>元素と原子の違いについては[[#物質を構成する実体|物質を構成する実体]]を参照。</small>
 
原子はあまりに小さいため、特殊な電子顕微鏡などを用いなければ観察することができない。その直径は約100億分の1メートル<small>( 1&times;10<sup>-10</sup>m = 0.1nm )</small>である。つまり、原子をだいたい101億個くらい並べればやっと1cmである。原子がどれほど小さいか、想像することができるだろうか?
 
=== 原子の基本構造 ===
[[Image:Atom.svg|frame|right|He原子のボーアモデル]]
原子は、中心にある'''原子核'''と、その周り(電子殻)を飛び回るいくつかの'''電子'''(黄色)の構造である。原子の構造は簡単には説明できないほど複雑だが、高等学校の化学においては一般的に、ボーアの原子模型と呼ばれるモデルを使って理解する。右に示した図は、ヘリウム原子(He)のボーアモデルである。ボーアモデルでは、原子の化学的な性質を全て説明することはできない。その意味でこのモデルは不十分ではあるが、高等学校の化学の範囲ではこのモデルでも十分にイメージをつかめる内容を扱っているため、紹介した。原子の構造について記述するときは、基本的にこのモデルを用いて行う。
 
まず、原子の構造の要素である原子核と、陽子・中性子・電子について知ろう。これらは高等学校化学で扱う最も小さな粒である。
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原子の構造のうち、電子が並んでいる原子核の周りの部分について、より詳しく見ていこう。
; 電子殻 : 電子が飛び回っている部分全体を指す。'''階層構造'''になっている。
この電子殻は何重かにわかれており、内側から'''K殻'''、'''L殻'''、'''M殻'''、……と呼ぶ。それぞれの層に入ることのできる電子の数は決まっており、その数以上の電子が一つの層に入ることは無い。たとえば、K殻に入ることのできる電子の数は2つまでである。また、電子は原則的に内側の層から順に入っていく。M殻以降では例外もあるが、高等学校の化学ではこれについては扱わない。興味のある人は、[[w:電子殻]]などを参考にしてほしい。<!--電子殻それぞれを電子軌道と呼ぶ。<!--誤り。意図した事際にある電子殻に入ることが不明確できる電子の数は、その電子殻がため保留-->-->内側から数えてn番目の電子殻であに入のでる電子の数は、2n<sup>2</sup>と表される。
 
また、いちばん外側の電子殻にある電子を'''最外殻電子'''と呼ぶ。最外殻電子は原子の性質に大きな影響を与える。ある原子とある原子との接点が、実際には電子殻であるため、原子の結合の仕方などはこの最外殻電子の個数が重要になってくる。原子の性質を決める最外殻電子を特別に'''価電子'''と呼ぶ。
最外殻にそれ以上電子が入ることのできない状態を'''閉殻'''という。閉殻になっている原子の価電子の個数は'''0'''であると約束する。
 
=== 電荷 ===
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=== 原子の分類 ===
原子の性質は、その原子の原子核に含まれる陽子の数で決まる。これは、原子の性質そのものが、電子や周囲の原子に対してどのように結びつきあうか、ということと同じであるからだ。プラスの電荷は離れしりぞけあうため、原子核同士は容易に衝突はしない。しかし、電子は原子核に引きっていくせられる。電荷が0の原子と電荷が+eの原子があれば、電子は-eの電荷を持っているので、+eの電荷を持つ原子に引き寄せられる。といった具合である。
 
実は、元素の分類、つまり原子がどの元素に属するかという判断は、その原子の原子核に含まれる陽子の数によって行われている。例えば、水素(H)に属する原子の場合、それに含まれる陽子の数は必ず1個である。同じように、炭素(C)に属する原子の原子核には、必ず6個の陽子が含まれている。逆に、ある原子の原子核に陽子が6個含まれるなら、その原子は炭素である。
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より、8個の陽子が含まれていることが分かる。8個の陽子が含まれている原子は、酸素(O)である。
 
ある二つの原子について、原子番号が同じでも質量数が異なることがある。えると、原子番号は陽子の数であるため、陽子の数が同じ二つの原子であっても、その原子核に含まれる中性子の数が違うということがある、ということであり、このような原子を互いに'''同位体'''<small>(アイソトープ)</small>と呼ぶ。炭素には二つの代表的な同位体がありには、<sup>12</sup>C と<sup>1313</sup>C がある。同位体であっても、化学的な性質は変わらない。なぜなら、原子核に含まれる陽子の数が同じだからである。
 
=== 周期表と周期律 ===
元素を原子番号の順に並べると、性質のよく似た元素が周期的に現れることがある(例:1価の陽イオン<small>(→[[化学結合]])</small>になりやすい物質……<sub>3</sub>Li、<sub>11</sub>Na、<sub>19</sub>K、など。ここまでは8個間隔で現れている)。このことを元素の'''周期律'''という。
 
元素を原子番号の順に並べて、かつ周期律に併せて配列した表を'''[[元素記号|周期表]]'''という。周期表の縦の列を'''族'''といい、同族内では性質のよく似た元素が並ぶ。周期表の横の列を'''周期'''と呼び、周期の番号は電子殻の数と一致する。
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|}
; 分子 : 分子とは、物質としての性質を持った最小単位の一つである。
; 分子 : 電荷が0の粒子。
: 1つ以上の原子から成り立っている。
分子は電気的に中性であるため、これらが物理的に運動する限りにおいては、電磁気の問題は基本的に発生しない。一粒が独立しているので、エネルギーの大きい分子同士は反発する。しかし、エネルギーの小さ分子同士はお互いに引き合う。これによって、たとえば水は気体・液体・固体の三態を持つことになる。
一般に分子は原子が複数個集まってできていることが多いが、ただ一つの原子だけで独立して分子となるものもいる。希ガスと呼ばれる種類の原子は、他の原子と結びつかないず、独立した粒子になり、かつ電荷が0あるため、分子であを構成する。
; 単原子分子 : 一個の原子から構成されている分子。
; 多原子分子 : 二個以上の原子から構成されている分子。
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| [[w:水素|水素]] || H<sub>2</sub> || 多原子分子 || 常温で気体。
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| [[w:酸素|酸素]] || O<sub>2</sub> || 多原子分子 || 常温で気体。物を燃やす働きがある。大気の約21%がこの分子である。
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| [[w:窒素|窒素]] || N<sub>2</sub> || 多原子分子 || 常温で気体。気の70約78%がこの分子である。
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| [[w:水|水]] || H<sub>2</sub>O || 多原子分子 || 常温で液体だが、固体や気体の姿もおなじみだろう。
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| [[w:ネオン|ネオン]] || N || 単原子分子 || 希ガスの一種。ネオンサインなどに利用される。
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| [[w:アルゴン|アルゴン]] || Ar || 単原子分子 || 希ガスの一種。大気の約1%がこの分子である
 
|}
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| [[w:水|水]] || 化合物 || H<sub>2</sub>O || イオンからなる物質を溶かす。氷は分子結晶である。
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| [[w:ブドウ糖|ブドウ糖]] || 化合物 || C<sub>6</sub>H<sub>12</sub>O<sub>6</sub>|| ショ糖(いわゆる砂糖)簡単な姿成分
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| [[w:二酸化炭素|ドライアイス]] || 化合物 || CO<sub>2</sub> || 二酸化炭素の固体。温度があがると、液体にならずに一気に気体になる。
|}
<small>水は、実際には不純物を含んでいることが多い。純粋な水はあまり天然には存在しない。</small>
 
=== イオンからなる物質 ===
NaCl(塩化ナトリウム)という化合物は、ナトリウムイオンNa<sup>+</sup>と塩化物イオンCl<sup>-</sup>がお互いに偏った電荷を補い合おうとして結合する。このようにイオン同士がひきつけあってできた結合を'''イオン結合'''という。また、イオン結合によってできた固体を'''イオン結晶'''という。イオン結晶は融点・沸点が高く、硬いがもろい。これらは基本的にイオンが並びあってんで出来ており、水に解ければ簡単にそれぞれのイオンに分かれる。そのため、固体のときは電気を通さないが、液体あるいは水液に電解した状態では電気をよく通すという性質を持っている。
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