「発生学」の版間の差分

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== 生殖細胞の起源 ==
生殖(せいしょく, Reproduction)とは生物が子孫をつくる過程のこと。大きく分けて[[w:無性生殖|無性生殖 (Asexual reproduction) ]][[w:有性生殖|有性生殖 (Sexual reproduction) ]]がある。
 
wikipedia[http[w://ja.生殖|wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E6%AE%96]]から引用した上記の説明に付け加えるなら、有性生殖は新しい遺伝子の組み合わせを持つ新個体を作り、無性生殖は遺伝的に均一な新個体を作る。言うまでもなく、ヒトは前者に属する。
 
従って、ヒトの発生は、男性と女性の[[w:配偶子|生殖子]][[w:精子|精子]][[w:卵子|卵子]])が結合することによってはじまる。この生殖子のもととなるのは'''原始生殖細胞:PGC'''だが、これは、その発生第2週より形成が開始される。つまり、生殖子が受精した2週間後には、既に次の世代に受け渡すための生殖子の形成がはじまっているのだ。
 
生殖細胞は生殖のために特別に分化した細胞だが、そもそも生殖細胞はどのようにして体細胞に分化するのであろうか? 少なくとも大部分の生物においては、あらかじめ生殖細胞への分化を決定付けるような因子があらかじめ受精卵の中にあり、これを'''生殖細胞質'''あるいは'''生殖質'''と呼ぶ。例えば、線虫においてはP顆粒がそれである。しかし哺乳類においてはそのようなものは発見されておらず、おそらく'''外部の環境の影響によって生殖細胞か体細胞かに分化する'''ものと見られている。
 
原始生殖細胞は胚盤葉上層で形成されたのち、[[w:卵黄嚢|卵黄嚢]]の壁に出現する。そしてアメーバ様運動により移動し、'''生殖堤'''(生殖隆起)に進入する。
 
もしその胚子(まだ胎児とは言いにくい)が男性であるなら、その[[w:Y染色体|Y染色体]]上にあるSRY遺伝子により活性化されるタンパク質であるSox9の影響のもと、原始生殖細胞の周囲の細胞はセルトリ細胞に分化する。セルトリ細胞はミュラー管の退化に重要な役割を果たすほか、原始生殖細胞を精子に分化させる。これに続いて、Sox9は'''[[w:ライディッヒ細胞|ライディッヒ細胞]]'''を分化させる。ライディッヒ細胞は、'''[[w:テストステロン|テストステロン]]'''を分泌するという点で重要である。
 
== 精子と卵子の形成 ==
男性においては、思春期の少し前、原始生殖細胞(2n)から'''[[w:精祖細胞|精祖細胞]]'''(2n)が分化する。これが体細胞分裂を行なって増え、成長すると'''[[w:一次精母細胞|一次精母細胞]]'''(2n)となる。ついで第一減数分裂に入り、これにより生じた'''[[w:二次精母細胞|二次精母細胞]]'''(n)が第二減数分裂を行なうことで減数分裂を完了し、[[w:精子細胞|精子細胞]](n)が生じる。
 
女性においては、出生前(生殖堤に進入した直後)に原始生殖細胞(2n)から'''[[w:卵祖細胞|卵祖細胞]]'''(2n)が分化する。大多数の卵祖細胞は体細胞分裂を続けて増えるが、一部は'''第一減数分裂の前期で停止'''し、'''[[w:一次卵母細胞|一次卵母細胞]]'''(2n)となる。思春期に到るまでの間、一次卵母細胞は第一減数分裂の前期のままで留めおかれ、成熟する。ついで第一減数分裂を完了し、'''[[w:二次卵母細胞|二次卵母細胞]]'''(2n)と極体が形成される。そして二次卵母細胞は第二減数分裂に入るが、これは中期で停止して'''卵子'''(n)となり、受精まで減数分裂は完成しない。卵子に特有のこの長い停止期は、卵細胞に栄養やRNAを蓄えるための待機期間と見られている。
 
== 受精のしくみ ==
受精においては重要な要素が3つある: すなわち、タイミング,多精防止,種特異性である。タイミングの問題を解決するため、卵子周辺の細胞は時機において精子誘引物質を生産し、精子を卵子に誘導する。多精防止のため、ウニの受精においては、卵膜に精子が達するとチャネルが開いてカルシウムイオンが流入し、これとともに脱分極が起きて膜電位が上昇する。続いて卵膜の直下にある表層顆粒から酵素が放出され、卵膜を強化して受精膜を形成し、他の精子の進入を阻む。
 
ヒト(哺乳類)の精子は、女性の生殖路へ到達した時点では卵子を受精させる能力がない。というのも、ヒトの卵子は、放線冠と呼ばれる細胞に囲まれており、しかも表面を透明帯により覆われているためである。精子はまず'''受精能獲得'''という過程を経ることで放線冠細胞の間を通り抜けられるようになり、これと同時に、透明帯を通過するための先体反応が可能になる。透明帯はZP1~3と呼ばれる糖タンパク質によって構成されているが、このうちZP3が精子受容体として種特異的な結合を示し、'''先体反応'''を誘導する。先体反応とは、精子が透明帯に結合すると同時に先体(精子の先端部)から酵素が放出され、精子が透明帯を通過できるようにするものである。その精子が通過しきって卵子の細胞膜に接するとともに、表層顆粒から酵素が放出され、卵細胞膜が強化されるとともに、透明帯の性質を変えてZP3が破壊され(透明帯反応)、他の精子の通過が妨げられる。また、ヒトの精子はヒトの透明帯とだけ結合できるため、これによって種特異性も維持される。
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精子が進入した直後に卵子はその第二減数分裂を完了し、これに続いて卵割を開始する。卵割は、次の2点において特殊である:1.細胞周期が短く、2.体積変化が少ない。
 
卵割は大きく“全割”と“部分割”の2つに分けられる。哺乳類や両生類,ウニなどは全割を行なうが、昆虫や鳥類は部分割を行なう。また、哺乳類の卵割においては、'''コンパクション'''という特徴的な過程がある。これは8細胞期から16細胞期の間に起きるもので、それまでは互いに緩やかな結合をしていた割球が、外側で密着結合するものである。胚はこの後1回分裂して16細胞の桑実胚となるが、そのときには、内部にある細胞は内細胞塊を、その周囲を取り巻く細胞は外細胞塊を構成するようになる。コンパクションはこのような分化に重要であると考えられる。外細胞塊からは、のちに胎盤を形成する'''栄養膜'''が生じる。
 
なお哺乳類は調節的に発生するとされているが、これは、2つの8細胞期のマウス胚を処理し、融合させても正常に発生することから確かめられる。
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# 八杉龍一ほか 『岩波生物学辞典 第4版 CD-ROM版』 岩波書店、1998年
 
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