「線型代数学/ベクトル」の版間の差分

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内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。
 
*('''a''','''a''')=||a||^2
*'''a'''と'''b'''が直交する⇔('''a''','''b''')=0<ref>なす角について上で述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。</ref>
*c('''a''','''b''')=(c'''a''','''b''')=('''a''',c'''b''')
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成分を用いた式を見れば、この表示によって直線が表されることの妥当性が理解しやすいだろう。
 
上に挙げた式を直線の助変数表示またはベクトル表示という。また、'''a'''をこの直線の方向ベクトルという。
方向ベクトルはこの直線と平行なベクトルである。
もちろん助変数表示の仕方は一つではないが、'''a'''方向ベクトルはノルム1のものを選ぶと便利な事も多い。
 
'''例題'''
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==法線ベクトル==
平面上の直線
 
:ax+by=c
さて、平面上の平行二直線ax+by=c,ax+by=0は、
を考える。この直線の方向ベクトルは
 
:<math>\mathbf{av}\begin{pmatrix}=
xb \\
-a \\
\beginend{pmatrix}
</math>
である。ここで、
:<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
a\\
b\\
\end{pmatrix}</math> <math>\mathbf{x}=
というベクトルを考えると、
\begin{pmatrix}
:<math>(\mathbf{a},\mathbf{xv})=0</math>           (5.1)'
x\\
なので、'''a'''とこの直線(5.1)'直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このとき'''a'''をこの直線(5.1)の''法線ベクトル''とう。
y\\
\end{pmatrix}</math>とすれば、
 
<math>(\mathbf{a},\mathbf{x})=c</math>           (5.1)
 
<math>(\mathbf{a},\mathbf{x})=0</math>           (5.1)'
 
なので、'''a'''と直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このとき'''a'''を直線(5.1)の''法線ベクトル''と言う。
 
 
 Oでない点A,Xがある。いま、半直線OAに向かって線分OXから垂線を引く。交点をX'とする。A,X,X'の位置ベクトルをそれぞれ、'''a''','''x''','''x''''とするとき、'''x''''を'''x'''の'''a'''への''正射影''と言う。
 
'''例5.1'''
 
l:'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>       (5.3)
点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。
 
という直線を考える。平面内の1点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。この垂線の長さを求めよう
l:'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>       (5.3)
 
'''xp'''<sub>0</sub>:Pの位置ベクトル,'''x''''<sub>0</sub>:P'の位置ベクトルとすると、垂線の長さは
:||'''p'''-'''x'''<sub>0</sub>||
で与えられる。
 
と定義しまずは'''x'''_0を他のベクトルを用い表そう。P'はl上の点なので||'''x'''<sub>0</sub>-='''x''''<sub>0</sub>||求めよう。lの式に代入すると
:'''x_0'''='''a'''t+'''x'''<sub>1</sub>
 
(5.3)について、:'''xp'''-'''x_0'''='''xp'''-'''a'''t-'''x'''<sub>01</sub>を代入し、変形すると、
となる。このベクトルが'''a'''と直交するので
 
:('''a''','''p'''-'''x_0''')=('''a''','''p''')-|'''a'''|<sup>2</sup>t-('''a''','''x'''<sub>1</sub>)=0
<math>\mathbf{x'}_0=\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)\over
:<math>t=\frac{(\mathbf{a},\mathbf{ap})-(\mathbf{a}+,\mathbf{x}_1)}{|\mathbf{a}|^2}</math>       (5.4)
これを代入して
 
:<math>\mathbf{x'}_0=\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{xp}_0-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}+\mathbf{x}_1</math>
ここは躓きやすいところなので解説を加える。aと'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>の交角をθとする。
||:<math>p-\mathbf{x}_0=p-\mathbf{xa}_1||^2-{(\mathbf{a},\mathbf{xp}_0-\mathbf{x}_1)^2}}\over (\mathbf{||a},\mathbf{a}||)}-\mathbf{x}_1</math>
 
をえる。
<math>
{(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}
={{||\mathbf{a}||||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||\cos \theta}\over {||\mathbf{a}||^2}}
</math>
 
<math>={{||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||\cos \theta}\over {||\mathbf{a}||}}</math>        (5.5)
 
(5.5)右辺の分母は、'''a'''の長さ、分子は、'''x'''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>の'''a'''への正射影('''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>)の長さである。すると、(5.4)右辺第一項は'''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>となる。'''x'''<sub>0</sub>は'''x''''<sub>0</sub>-'''x'''<sub>1</sub>と,'''x'''<sub>1</sub>との和であることは自明の理である。
 
ゆえに求める最短距離||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||は、
 
:<math>||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}'_0||={{\sqrt{||\mathbf{a}||^2
||\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1||^2-(\mathbf{a},\mathbf{x}_0-\mathbf{x}_1)^2}}\over {||\mathbf{a}||}}</math>
 
あとは自分自身との内積を計算するだけである。落ち着いて計算すれば
:<math>||\mathbf{p}-\mathbf{x}_0||={{\sqrt{||\mathbf{a}||^2 ||\mathbf{xp}_0-\mathbf{x}_1||^2-(\cos mathbf{a},\thetamathbf{p}-\mathbf{x}_1)^2}}\over {||\mathbf{a}||^2}}</math>
と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。
 
 
'''演習'''
31.
 
1.例5.1で||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を実際に計算せよ。
 
2.例5.1でl:('''b''','''x''')=cとして||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。
 
3.
:空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
 
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:とするとき、||'''x'''<sub>0</sub>-'''x''''<sub>0</sub>||を求めよ。
 
42.
 
:平面Fの法線ベクトル'''a'''と平面F'の法線ベクトル'''a''''の交角を平面Fと平面F'の交角と言う