「分子生物学」の版間の差分

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このようにしてできた染色体は細胞分裂のたびに複製され、そのコピーは2個の娘細胞に受け継がれる。この過程で、染色体は[[w:細胞周期|細胞周期]]に応じて異なった形で存在する。細胞周期の間期はG1期,S期,G2期に分けられるが、そのうちのS期においてDNAとクロマチンの複製が行われる。そして、M期に染色体が形成され、細胞が分裂する。
 
間期には、染色体は核内で長く伸びて絡まった細長い糸状のDNAとして存在し、これを間期染色体と呼ぶ。間期染色体が効率的に複製できるように、あらゆる真核生物のDNAには複数の特殊な塩基配列が存在している。1ひとつは'''[[w:複製起点|複製起点]]'''で、この部分でDNAの複製が開始される。2は次に'''[[w:テロメア|テロメア]]'''で、これは末端の複製と保護に関与している。またそして、複製されて2倍になった染色体を娘細胞に分配する際には、第3の配列である'''[[w:セントロメア|セントロメア]]'''という配列が使われる。
 
さて、分裂期にはDNAは高度に凝縮され、整然と配置されるのに対して、間期にはその凝縮度は小さくなる。しかし、間期染色体のすべてが同じような凝縮度ではない。そこには凝縮度の高いクロマチンと低いクロマチンが共存していて、その凝縮度の高い“きつい”ものを'''[[w:ヘテロクロマチン|ヘテロクロマチン]]'''と呼ぶ。ヘテロクロマチンの部分で転写は不活発で、この部分にある遺伝子は少なく、またあっても発現されず、遺伝子のサイレンシングに関係して。間期クロマチンの残りの部分は、これより凝縮度の低い“ゆるい”状態にあり、[[w:ユークロマチン|ユークロマチン]]と呼ばれ、活発に転写が行われる。
 
このように、DNAは極めて緻密にたたまれてクロマチンとして収納されているが、その一方で、DNAは必要に応じて読み出されなければならない。このため、真核細胞には、クロマチンの局所構造を調節して、必要な部分を取り出すしくみがいくつかある。その1つがヌクレオソームの構造を変化させる'''クロマチン再構成複合体''' (Chromatin Structure Remodeling; RSC) を利用する方法で、また'''ヒストン尾部の可逆的な修飾(アセチル化・メチル化)'''による方法もある。
今日では、ヒストン修飾によるクロマチン構造の変化の重要性が注目されており(epigenetics)、また、DNA修復に関わるタンパク質も、損傷によるクロマチン構造の変化を認識して機能しているようであることが報告されている。このように、染色体の構造や機能についてはまだ未解明の部分がある。
 
==DNAの複製==