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生物がこれほど多様で、あらゆる環境で繁栄しているのは、遺伝子配列の変化が蓄積することによって進化が行なわれ、環境条件の変化に適応してきたためである。しかし一方で、ごく短期的に、個々の生物のレベルで見れば、遺伝子の変化はまったく望ましいものではない。特に多細胞生物においては、多くのメカニズムがあまりにも精妙に動いているため、わずかな変異でもそれらを決定的に狂わせかねない;従って、遺伝子はできる限り安定でなければならない。前章で見たように、DNAの複製においては常に校正が行なわれているが、それでも複製装置がミスを犯すことはありうるし、また化学物質や放射線によってDNAに偶発的な損傷が生じることもある。これらによって生じた突然変異をすぐに修復する'''修復機構'''の存在も、遺伝子の安定性に大いに寄与している。
修復機構にはいろいろあり、歴史的には細菌に見られる光回復(フォトリアーゼという酵素が、可視光のエネルギーを利用してDNA鎖上に生じた塩基二量体の開裂を触媒する)が最初期に発見された修復機構であるが、高等動物では光回復機構が見出せず、その代わりに歴史的には暗回復と呼ばれていた機構がDNA損傷の修復を担っている。暗回復には複数の機構が存在し、ヌクレオチド除去修復(NER:nuculeotide excision repair)、塩基除去修復(BER:base excision repair)、相同組換え(HR:Homologues Recombination)、
# XPA(高等動物における出芽酵母Rad14のホモログ)が損傷した一本鎖DNA(ssDNA:single-stranded DNA)を識別し結合する。
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