「旧課程(-2012年度)高等学校数学C/行列」の版間の差分

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== 行列とその応用 ==
=== 行列 ===
 
 
==== 行列とその演算 ====
数値を縦横に並べたものを行列と呼ぶ。行列の一部の、横に並んだ数値のかたまりを行、縦に並んだ数値のかたまりを列と呼ぶ。例えば、
 
:<math>
数値を縦横に組み合わせたものを行列と呼ぶ。
ここで、横に並んだ数値のかたまりを行、
縦に並んだ数値のかたまりを列と呼ぶ。
例えば、
 
 
<math>
\begin{pmatrix}
1&2&3\\
21 ⟶ 13行目:
\end{pmatrix}
</math>
は2行、3列からなる行列である。
 
は2行、3列からなる行列である。
 
 
 
===== 和,差,実数倍 =====
行列の和は各要素ごとに足し合わせれば良い。差は各要素ごとに引けば良い。実数倍は、各要素に実数を掛けることによって定義する。
 
'''例題'''
行列の和は各要素ごとに足し合わせれば良い。
*問
差は各要素ごとに引けば良い。
実数倍は、各要素に実数を掛けることによって
定義する。
 
 
*問題例
 
**問題
 
行列A,B,Cを
:<math>
A= \begin{pmatrix}2&4\\ 3&3 \end{pmatrix}
48 ⟶ 31行目:
C= \begin{pmatrix}8&2\\ 13&15 \end{pmatrix}
</math>
定義するとき、
:<math>
A + B
60 ⟶ 43行目:
を計算せよ。
 
*解答
 
**解答
 
それぞれ、
:<math>
76 ⟶ 57行目:
 
===== 行列の積と逆行列=====
 
 
 
行列の積
<math>
85 ⟶ 63行目:
c& d
\end{pmatrix}
\times
\begin{pmatrix}
e& f\\
98 ⟶ 75行目:
\end{pmatrix}
</math>
で定める。たとえば積の第1行第1列の値は、左側の行列の第1行のベクトルと右側の行列の第1列のベクトルの内積であると思えばよい。
で与えられる。たとえば、
第1行第1列の値は左側の行列の第1行を選び、
右側の行列の第1列と、ベクトルの内積の
演算をすれば良い。
 
'''例題'''
*問
 
上で用いた行列<math>A</math>,<math>B</math>,<math>C</math>について、
*問題例
 
**問題
 
上で用いた行列<math>A</math>,<math>B</math>,<math>C</math>があるとき、
:<math>
AB
126 ⟶ 98行目:
を計算せよ。
 
*解答
 
**解答
 
それぞれ、
146 ⟶ 117行目:
CA=\begin{pmatrix}22&38\\ 71&97 \end{pmatrix}
</math>
が得られである。
 
この結果から分かる通り、一般に行列の積は
154 ⟶ 125行目:
となる。
 
'''単位行列'''
 
 
単位行列
<math>
E =
165 ⟶ 135行目:
</math>
 
を、2×2の単位行列と呼ぶ。対角成分だけが1であり、その他の成分がすべて0に等しい行列である。任意の2×2行列Aに対して、Eは
を、2 <math> \times </math> 2の単位行列と呼ぶ。
:EA = AE = A
対角成分だけが1であり、その他の成分がすべて0に等しい行列である。
ある行列Aに対して、Eは、
EA = AE = A
を満たす。
 
'''逆行列'''
 
行列Aに対してその行列との積が単位行列となる行列を、その行列の逆行列と呼ぶ。そのような行列はもし存在すれば各Aに対してただひとつなので、これを <math> A^{-1} </math> と書く。もちろん一般にはAに対して右側からかけるか左側からかけるかによって積は異なるのだが、この場合はAに対して右からかけて単位行列になるのならば左からかけても単位行列になるし、逆もまたしかりであることに注意しておく。
 
逆行列
 
ある行列Aに対してその行列と積を取って
単位行列をかえす行列を、その行列の逆行列と呼ぶ。
これを <math> A^{-1} </math> と書く。
 
2行2列の行列
 
<math>
A =
197 ⟶ 160行目:
\end{pmatrix}
</math>
となる。ただし、 ad - bc = 0 のとき、逆行列は存在しない。
存在しない。
実際行列の積を取ることで、これが正しいことが示される。
 
 
実際行列<math>D</math>を、
:<math>
\begin{pmatrix}
e&f\\
g&h
\end{pmatrix}
</math>
とすると、上の表式を用いて
:<math>
D^{-1}=\begin{pmatrix}{{h}\over{e\,h-f\,g}}&-{{f}\over{e\,h-f\,g}}\\ -{{g }\over{e\,h-f\,g}}&{{e}\over{e\,h-f\,g}} \end{pmatrix}
</math>
更に、
:<math>
D D^{-1}
</math>
を計算すると、
:<math>
=\begin{pmatrix}{{e\,h}\over{e\,h-f\,g}}-{{f\,g}\over{e\,h-f\,g}}&0\\ 0& {{e\,h}\over{e\,h-f\,g}}-{{f\,g}\over{e\,h-f\,g}} \end{pmatrix}
</math>
:<math>
=
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&1
\end{pmatrix}
</math>
が得られ、確かに逆行列になっていることが分かる。
 
 
 
 
*問題例
 
実際に行列の積を取ることで、これが正しいことが容易にわかる。
**問題
上で定めた行列<math>A</math>,<math>B</math>,<math>C</math>についてそれぞれの逆行列を計算せよ。
 
'''例題'''
**解答
*問題
上で定めた行列<math>A</math>,<math>B</math>,<math>C</math>の逆行列を計算せよ。
 
*解答
それぞれ、
:<math>
250 ⟶ 179行目:
C^{-1}=\begin{pmatrix}{{15}\over{94}}&-{{1}\over{47}}\\ -{{13}\over{94}}&{{4 }\over{47}} \end{pmatrix}
</math>
が得られである。
 
=== 行列の応用===
 
==== 連立一次方程式====
 
276 ⟶ 204行目:
\end{pmatrix}
</math>
と書ける。両辺に左辺の行列の逆行列を掛けると、
ここで、両辺に
左辺の行列の逆行列を掛けると、
 
<math>
\begin{pmatrix}
315 ⟶ 240行目:
x = 1, y = 0
が得られ、始めの連立1次方程式が解けたことになる。
ただし、このように、連立1次程式を解くこと簡単に逆行列求められことと同じである。
特に、2×2行列の逆行列は既に公式が得られているので、2元1次方程式は簡単に解くことができる。
状況でしか有効ではない。
 
==== 点の移動====
平面上のベクトル<math>\vec a</math>に対して回転行列
 
 
ある平面上のベクトルa(a,b)を取るとき、
回転行列
<math>
R =
330 ⟶ 252行目:
\end{pmatrix}
</math>
をかけた積<math>R \vec a </math>は、<math>\vec a</math>を原点を中心にして角度cだけ回転させたベクトルになっている。
を考える。
:(証明)
ここで、
:ベクトルaを極座標を用いて<math>a=(r \cos \theta,r \sin \theta)</math>と書く。すると積<math>R \vec a</math>は
<math>R \vec a </math> を考えると、
::<math>R \vec a =
その積は、aを原点を中心にして角度cだけ回転させたものに対応する。
\begin{pmatrix}
<!-- 導出? どうやって書くのだろうか...。 -->
\cos c& -\sin c\\
\sin c & \cos c
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
r \cos \theta \\
r \sin \theta
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
r (\cos c \cos \theta - \sin c \sin \theta) \\
r (\sin c \cos \theta + \cos c \sin \theta)
\end{pmatrix}=r
\begin{pmatrix}
\cos (c+\theta) \\
\sin (c+\theta)
\end{pmatrix}</math>
:であり、これは確かに<math>\vec a</math>を角度cだけ回転させたベクトルである。