「高等学校古文/漢文とは何か、漢文をどうして学ぶのか」の版間の差分

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この転換期の混乱を[[w:秦|秦]]の[[w:始皇帝|始皇帝]]が収め、その業績を漢が継ぎ、実に数百年ぶりに、国土の安定を得る。中国には歴史を重んずるという伝統があるが([[高等学校古文/歴史書]]参照)、この国家の安定において、過去の各地の歴史書を大成した作品が生まれる。[[w:司馬遷|司馬遷]]による「[[高等学校古文/歴史書/史記|史記]]」である。これは、それ以前の歴史を大成するのと同時に、その後の中国の[[w:正史|正史]]の形を決め、論語同様、東アジア全体に大きな影響を与えた。勿論、高校漢文においても、最も重要なテキストである。極論を言うなら、「論語」と「史記」が、ある程度読みこなせれば、その水準の3/4程度は達したものと考えても良いくらいである(あと、1/4は後述する漢詩である)。
 
漢文による散文は、漢代を以って完成する。これを狭義の「漢文(漢代の文章)」という。これ以降の漢文は、当時の中国語特有の音律を意識した文章であったりして、語彙が難解になったりして、初学者には難しいので、高校漢文で体系的に取り上げられることは少ない。「[[世説新語]]」等のように教科書でよく取り上げられる古典もあるが、「史記」を読めれば、多くは苦労することなく読むことができる部分が取り上げられている。入門編と割り切るなら、教科書と入試の過去問に取り上げられているものを読むのに終始すればよい。例外的に体系的に取り上げられるものに、史記以降の歴史のダイジェストとして[[w:元|元]]代に編纂された「[[十八史略]]」がある。このため、「[[w:漢書|漢書]]」「[[w:三国志|三国志]](有名な[[w:諸葛孔明|諸葛孔明]]の[[w:出師表|出師表]]や[[w:魏志倭人伝|魏志倭人伝]]が含まれる)」「[[w:貞観政要|貞観政要]]」といった、本当の意味での古典はあまり取り上げられない傾向にある。
 
一方で、時代は漢から[[w:三国時代 (中国)|三国時代]]、[[w:晋|晋]]、[[w:南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]、[[w:隋|隋]]をへて、[[w:唐|唐]]にいたる。この時代に発展した表現形式が、我々が「[[高等学校古文/漢詩|漢詩]]」と呼ぶ'''詩'''である。これらについては、日本が体系的に初めて出会ったカルチャーショックからか、日本文化に深い影響を与える(それ以降に中国で流行した宋詞や元曲がほとんど影響を与えなかったのとは対照的である)。その影響であるかは断言できないが、漢詩は高校漢文において重要な位置を占めており、「[[杜甫]]」「[[李白]]」の有名な作品や、「[[唐詩選]]」からも多く教科書に取り上げられている。ただし、その中心は'''[[盛唐]]'''期であり、それ以降は、入門の域を超えるため参考の位置づけに近くなる。。
 
これ以降も、漢文による重要な古典は、数多く出する。例えば、「[[源氏物語]]」をはじめとする日本の古典文学に大きな影響を与えた「[[長恨歌]]」の作者である[[w:白居易|白居易]]や[[w:唐宋八大家|唐宋八大家]]といわれる大文学者は唐末期から[[w:宋|宋]]代になって現れるし、近世儒学は[[w:南宋|南宋]]において[[w:朱熹|朱熹]]が完成させる。また、フィクションの分野においては、[[w:明|明]]代から清の初期にわたって「[[w:三国志演義|三国志演義]]」「[[w:水滸伝|水滸伝]]」「[[w:西遊記|西遊記]]」「[[w:紅楼夢|紅楼夢]]」といった現代において古典とされるものが、ようやく見られるようになるが、このあたりになると、語彙が特殊であったり、口語が含まれていたりするので、高校の漢文で取り上げられることは、非常にまれとなる。
 
結論として、高校の漢文では、時代としては「論語」成立の諸子百家の時代から、「史記」成立の前漢までの文書が中心であり、それに、盛唐期の漢詩が加わえれば、その90%以上はフォローできているものと考える。