「解析学基礎/常微分方程式」の版間の差分

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変数分離形について加筆
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<!-- まえがき -->
== はじめに ==
==一階線型微分方程式とは何か ==
微分方程式とは、関数とその何階かの導関数との方程式のことである。この方程式を満たすような関数を求める操作を、微分方程式を解く、という。
微分方程式とは、独立変数''x''と、''x''の関数''y(x)''、およびその何階かの導関数を含む方程式である。一般化すれば、微分方程式は
:<math>f(x, y, y', \cdots, y^{(n)}) = 0</math>
微分の形に書くことのできる方程式とはである。そしてこの方程式に含まれる導関数とそうちもっとも高の導関数が<math>y^{(n)}</math>であるき、これを''n''階微分方程式のこである。呼び、この方程式を満たすような関数を求める操作を、微分方程式を解く、という。
 
微分方程式は、大きく分けて常微分方程式と偏微分方程式に分かれる。常微分方程式とは、一変数関数とその導関数とのからなる方程式のことである。一方、偏微分方程式とは、多変数関数とその偏導関数との方程式のことである。ここでは、常微分方程式の解き方について記述することにし、本書では特に断りのない場合「微分方程式」は常微分方程式をさしているものとする。
 
=== 解の種類 ===
==一階線型微分方程式==
微分方程式は微分された関数が含まれた方程式であるから、その解を求めるためには多くの場合積分操作が必要であり、解には積分定数が含まれる。''n''階微分方程式であれば''n''個の任意の積分定数が含まれる。このような積分定数を含む形の解を'''一般解'''と呼ぶ。
 
一般解のうち、積分定数にある値を与えた解を'''特殊解'''と呼ぶ。
 
さらに、微分方程式の解のなかには、方程式の解であるにもかかわらず、積分定数にどのような値を代入しても表すことのできない解も存在する。このような解を'''特異解'''と呼ぶ。
 
== 初等解法 ==
微分方程式を、有限回の式変形や変数変換や積分によって解く方法を初等解法と呼ぶ。はじめに、微分方程式の初等解法について解説する。なお、どのような微分方程式であっても初等解法によって解くことができるとは限らず、この手法が適用できる場合は限られてくることに注意されたい。
 
まずは、1階の微分方程式について考えることにする。
 
=== 変数分離形 ===
一般に、''n''階微分方程式が
:<math>y^{(n)} = f(x, y, y', \cdots, y^{(n-1)})</math>
の形で書き表されるとき、これを正規形と呼ぶ。
1階微分方程式の正規形
:<math>y' = f(x, y)</math>
において、右辺の式が
:<math>f(x, y) = X(x)Y(y)</math>
のように''x''のみの関数と''y''のみの関数との積の形に変形できるとき、これを'''変数分離形'''の微分方程式と呼ぶ。この場合、微分方程式は
:<math>y' = X(x)Y(y)</math>
の形になっているから、<math>Y(y) \neq 0</math>と仮定して両辺を<math>Y(y)</math>で割ることにより
:<math>\frac{y'}{Y(y)} = X(x)</math>
と変形して、左辺が''y''とその導関数のみの式、右辺は''x''のみの式となるように分離することができる。
 
もし<math>Y(y) = 0</math>を満たす''y''の値が存在すれば、その値を<math>y=a</math>とすると、もとの微分方程式に代入して
:<math>y'(x) = 0</math>
を得る。一方、いま置いた<math>y=a</math>も<math>y'=0</math>を満たす関数である。すなわち、微分方程式の解は
:<math>y(x) = a</math>
と簡単に求めることができる。これは微分方程式の特殊解である。
 
では、<math>Y(y) \neq 0</math>として変数を分離した式に戻ろう。左辺は
:<math>\frac{y'}{Y(y)} = \frac{1}{Y(y)}\frac{dy}{dx}</math>
であるから、分離した式の両辺を''x''で積分して、
:<math>\int\frac{1}{Y(y)}dy = \int X(x)dx + C</math>(Cは積分定数)
を得る。これで両辺の不定積分が計算できれば、微分方程式の解が求まることになる。これは微分方程式の一般解である。
 
==== 例題 ====
微分方程式<math>y' = xy</math>を解く。
 
これは変数分離形の1階微分方程式である。<math>y=0</math>のとき<math>y'=0</math>となって、これは微分方程式を満たす。
 
<math>y \neq 0</math>と仮定して両辺を''y''で割ると、
:<math>\frac{y'}{y} = x</math>
であるから、両辺を''x''で積分して、
:<math>\int\frac{1}{y}dy = \int x dx + C</math>
となる。両辺の不定積分を計算すれば、
:<math>\log y = \frac{1}{2}x^2 + C</math>
となるから、これより
:<math>y = e^{\frac{1}{2}x^2 + C} = Ae^{\frac{1}{2}x^2}</math>(Aは任意の定数)
とすることができる。これは微分方程式の一般解である。
 
先に求めた<math>y=0</math>は、一般解で<math>A=0</math>とした場合であるから、微分方程式の特殊解である。したがって、微分方程式の解は
:<math>y(x) = Ae^{\frac{1}{2}x^2}</math>
である。
 
==一階線型微分方程式==
常微分方程式はさらに、方程式が含む導関数が最大で何階なのかということによって分類される。
しばらくはまず、一階微分方程式について見てみよう。