「解析学基礎/常微分方程式」の版間の差分

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変数分離形について加筆
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→‎初等解法: 同次形とその応用を途中まで
55 行
:<math>\int\frac{1}{y}dy = \int x dx + C</math>
となる。両辺の不定積分を計算すれば、
:<math>\log |y| = \frac{1}{2}x^2 + C</math>
となるから、これより
:<math>y = e^{\frac{1}{2}x^2 + C} = Ae^{\frac{1}{2}x^2}</math>(Aは任意の定数)
63 行
:<math>y(x) = Ae^{\frac{1}{2}x^2}</math>
である。
 
=== 同次形 ===
一見変数分離形でないように見える微分方程式であっても、適切な変数変換によって変数分離形へ持ち込むことのできる微分方程式が存在する。
 
1階微分方程式の正規形
:<math>y' = f(x, y)</math>
において、右辺の式が
:<math>f(x, y) = g\left(\frac{y}{x}\right)</math>
のように<math>\frac{y}{x}</math>の関数として記述できるとき、これを'''同次形'''の微分方程式と呼ぶ。このとき微分方程式は
:<math>y' = g\left(\frac{y}{x}\right)</math>
の形をしている。
 
<math>z(x) = \frac{y(x)}{x}</math>とおく。このとき<math>y = xz</math>であるから、
:<math>y' = (xz)' = z + xz'</math>
が成り立つ。これを元の微分方程式に代入すると、
:<math>z + xz' = g(z)</math>
となる。これを<math>z'</math>について解くと、
:<math>z' = \frac{g(z) - z}{x}</math>
となって、[[#変数分離形|変数分離形]]の微分方程式となる。
 
変数分離形の方程式の解き方にしたがってこれを解くと、
:<math>\begin{align}
\frac{z'}{g(z)-z} &= \frac{1}{x} \\
\int\frac{1}{g(z)-z}dz &= \int\frac{1}{x}dx + C \\
\int\frac{1}{g(z)-z}dz &= \log|x| + C
\end{align}</math>
となる。これで左辺の不定積分を計算し、<math>z = \frac{y}{x}</math>を代入し直せば微分方程式の解が得られる。
 
==== 例題 ====
微分方程式<math>y' = \frac{y}{x} + \frac{x}{y}</math>を解く。
 
これは同次形の1階微分方程式である。<math>z = \frac{y}{x}</math>とおくと、<math>y = xz</math>であるからこの微分方程式は
:<math>\begin{align}
z + xz' &= z + \frac{1}{z} \\
xz' &= \frac{1}{z}
\end{align}</math>
と書き直すことができる。これは変数分離形の微分方程式である。<math>z \neq 0</math>に注意して変数分離を行うと
:<math>zz' = \frac{1}{x}</math>
であるから、両辺を''x''で積分して式変形を行うと、
:<math>\begin{align}
\int z dz &= \int\frac{1}{x} dx \\
\frac{1}{2}z^2 &= \log |x| + C \\
\log|x| &= \frac{1}{2}z^2 + C \\
x &= e^{\frac{1}{2}z^2+C} = Ae^{\frac{1}{2}z^2}
\end{align}</math>
となる。ここで<math>z = \frac{y}{x}</math>を代入しなおすと、
:<math>x = Ae^{\frac{y^2}{2x^2}}</math>
となる。これが求める微分方程式の一般解である。
 
=== 同次形の応用 ===
正規形の1階微分方程式
:<math>y' = f(x, y)</math>
について、右辺が''x''と''y''の有理関数になっている場合、すなわち
:<math>f(x, y) = \frac{h(x, y)}{g(x, y)}</math>
の場合を考える。このとき、<math>g(x,y)</math>および<math>h(x,y)</math>が特定の形をしている場合は、上手な式変形や変数変換によって同次形の解法を適用することができることが知られている。ここでは、いくつかの例題を用いてそれらの解法を紹介することにする。
 
==== 例題1 ====
微分方程式<math>y' = \frac{2x^2 + 3xy + y^2}{x^2 - 4xy + 2y^2}</math>を解く。
 
これは、<math>g(x,y)</math>と<math>h(x,y)</math>がともにすべての項で''x'',''y''について同次であるような場合である。例えばこのような場合には、右辺の分子と分母を<math>x^2</math>で割ることで
:<math>y' = \frac{2 + 3(y/x) + (y/x)^2}{1 - 4(y/x) + 2(y/x)^2}</math>
となって、容易に同次形の微分方程式へ持ち込むことができる。あとは同次形の解法に従って解けばよい。
 
==== 例題2 ====
微分方程式<math>y' = \frac{2x + 3y -8}{x - y + 1}</math>を解く。
 
これは、<math>g(x,y)</math>と<math>h(x,y)</math>がともに''x'',''y''の1次式になっている場合である。例えばこのような場合は、次の手順で解くことができることが知られている。
 
はじめに、連立方程式
:<math>\begin{cases}
2x + 3y - 8 = 0 \\
x - y + 1 = 0
\end{cases}</math>
を解く。これを解くと、解は<math>(x,y) = (1, 2)</math>である。この解を用いて、
:<math>\begin{cases}
x = u + 1 \\
y = v + 2
\end{cases}</math>
とおく。これをもとの微分方程式へ代入すると、
:<math>\begin{align}
\frac{dy}{dx} &= \frac{2(u+1) + 3(v+2) - 8}{(u+1) - (v+2) + 1} \\
\frac{dv}{du} &= \frac{2u + 3v}{u - v}
\end{align}</math>
となる。ここで、
:<math>\frac{dy}{dx} = \frac{d}{dx}(v+2) = \frac{dv}{dx} = \frac{dv}{du}\frac{du}{dx} = \frac{dv}{du}\frac{d}{dx}(x-1) = \frac{dv}{du}</math>
を用いた。
 
このように''x'',''y''から''u'',''v''への変数変換を施すと、例題1で見た形の方程式となり、右辺の分母分子を''u''で割ることによって同次形の微分方程式として扱うことができる。そして''u'',''v''の式として同次形の微分方程式を解いた後、変数を''u'',''v''から''x'',''y''に戻せば、求めるべき微分方程式の解が得られる。
 
==一階線型微分方程式==